(14)まだ続く初日
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中央の学校の授業は、一コマ五十分でその後十分の休憩があって一サイクルとなっている。
四サイクル終わったあとは一時間の休憩時間を挟んで午後からは二サイクル分の授業枠が用意されている。
午後の二サイクルは全てが選択科目になっているので、午前だけで授業を終える生徒も珍しくはない。
ただしクラブ活動のようなものやお茶会をはじめとした社交を行うための時間になっているので、学校の外に出て行く生徒は一部を除いてほとんどいない。
その一部の生徒も大抵は学校のある王都周辺で冒険者活動をするのが普通なので、遊びまくる学生というのはほとんどいなかったりする。
入学初日のコマは、最初が担任教諭からの学校の軽い説明で二コマ目は自由時間だった。
そして三コマ目と四コマ目は、体育館のような舞踏会場に集まって新入生歓迎会のようなものが行われた。
この辺の流れはルーカスにとっては懐かしさを感じるもので、恐らく初代校長でもあった初代国王の意向が大きく反映されていると思われる。
余談ではあるが舞踏会場はこうした学校の催し物などに使われていて、ダンスパーティなんかも開かれたりしている。
歓迎会では初めにお偉いさん方の挨拶があって、その後は各教科の代表的な教師の紹介があった。
その後は、入学者たちが待ち望んでいた先輩たちによる各クラブの紹介が行われた。
それを全て見終わると歓迎会が終わりとなり、それと同時に新入生はこの日の講義は全て終わりとなった。
もっとも講義自体は終わったとしても、昼食時間が終われば個人個人でクラブ見学をしたり学校内にある購買で必要なものを買ったりする生徒がほとんどだったりする。
そして歓迎会を終えたルーカスは、アルフやエルッキと共に食堂で昼食を取っていた。
「二人はこれからどうするか決めているのか? 俺は今後のことを考えて、伝手を使ってスキップ用のテストの情報を集めるつもりだ」
「ルーカスは真面目だなー。俺は正直、まだ何も決めていなかったな」
「ワイもまだ決めていない……と言いたいところだが、実は約束があってな。昔からの付き合いがある奴らとお茶会だ」
「ああ~。お貴族様は大変だなあ」
「そんなことを言っているが、ルーカスも他人事では無くなるんじゃないか?」
諦めと共にため息を吐いたエルッキだったが、その視線は意味ありげにツクヨミへと向けられた。
王種を持っているルーカスの動向は色々な意味で注目の的となっているので、入学初日は放置されていてもその内色々なところから勧誘合戦が始まるだろう。
ルーカスとしてはご遠慮願いたいところではあるが、止めようと思っても止められるものではないので甘んじて受け入れるしかない。
折角学校という特殊な場所に通うことになったので、全てをシャットアウトするのはもったいない。
ただその特殊な事情があるためにクラブや組織に縛られた行動はできないしするつもりもないので、比較的自由に動ける緩さが必要になる。
「俺もスキップ制度には興味があるんだけれどなあ。ルーカスは調べる伝手でもあるのか? 俺は兄がいるからそこを頼ってみるつもりだけれど、一緒に来るかい?」
「それは魅力的だな。ただちょっと思い当ることがあるので、まずはそこに行ってみる。一応生徒として挨拶もしないといけないだろうし」
「挨拶……? ルーカスに兄弟はいないと言っていたが、誰か知り合いでも入っているのか?」
「知り合いといえば知り合いなのか? どうせ繋がりがあることはすぐにばれるだろうから言ってしまうが、フェデーレ王子に会いに行くつもりだ。以前からそれとなく言われていたからな」
ルーカスがあっさりと王子の名前を出したことで、他の二人は若干引き気味になっていた。
カロリーナ王女の件があったので予想はできていただろうが、学校に入ったばかりの平民が王族と繋がりがあるという時点で普通ではない。
その普通ではない状況を作り出している原因は、今もルーカスの頭の上で休んでいる。
「ルーカスの繋がりについてはもう何も言わんが、本当に大丈夫なのか? いきなり会いに行って会えるお方ではないと思うぞ?」
「俺もそう思うんだけれどなあ……。当人が良いと言っていたからいいんじゃないか? 言われた場所に行っていなかったら図書館にでも行ってみるつもりだ」
「王族だからな。急な予定変更はあるだろうしな。いる場所に着いてはワイも予想ができるが、むしろ気楽に行ける方が信じられんぞ?」
「そこはほら。褒章持ちだからということで」
「そういえば、そんなものもあったな」
ルーカスが王花褒章を得ていることは既に貴族たちには広まっているので、エルッキは納得した様子で頷いていた。
その一方で平民には広まっているとはいいがたいのだが、実家が王国内でトップクラスの商会を運営しているアルフも同じように納得顔になっていたので、褒章のことは知っているようだった。
なんとなくこれまでの流れで一緒にいる二人だが、ルーカスとしては今のところ悪い点は見当たらないのでこのままいい関係で居続けたいと考えている。
それぞれに実家の関係があるので裏が全くないとは考えていないが、そこを気にしていたらいつまで経っても友人など作れないだろう。
「――ということで、今日はここでお別れか」
それぞれの午後からの予定も決まったことで、食事休憩が終わったあとは分かれて行動することになった。
初日ということもあって何となく一緒に行動してきたが、今後も友人として行動を共になるかは分からない。
とはいえルーカスとしては、今の時点で何となく波長が合うのではないかと考えていたりもする。
そして昼食を取り終えて二人と別れたルーカスは、先ほど話したようにフェデーレ王子がいるはずの場所へと向かった。
王族が学校に通う場合、周囲にいる学生たちへの影響力が大きくなりすぎるので、それぞれの名前を関した『会』を作ることになっている。
フェデーレ王子の場合はフェデーレ会であり、王族が作る○○会には一つ一つ部屋が与えられることになっている。
フェデーレ会にも部屋が与えられているので、ルーカスはその部屋に向かっているわけだ。
フェデーレから話に聞いていた部屋の入口に着くと、ルーカスは少し緊張しながらノックをした。
フェデーレ会の部屋――サロンには、王子だけではなくメンバーの誰かしらがいるはずで、門前払いを喰らう可能性がある。
それはそれで仕方ないので、その場合は図書館へと向かうつもりではある。
ただ折角来たので、恐らくスキップ制度を利用しているであろう人物から直接話を聞いてみたかった。
ルーカスがノックをするとすぐに扉が開いて、中から一人の美丈夫が出て来た。
「――おや。この時期だから新入生の誰かと思ったらルーカス殿か。入会希望……ではなさそうだけれど、何かあったのかい?」
「ロイトン先輩。お久しぶりです。考えてみれば、先輩がこちらにいらっしゃるのは当たり前でしたね」
部屋から出て来た美丈夫はブリス・ロイトンで、ロイトン伯爵の次男になる。
百八十を超える長身と鍛えられた肉体を生かした剣技で若いながらも周囲から注目を浴びていて、フェデーレ王子の護衛役になる。
ルーカスは、王城でフェデーレ王子と話をするときに彼が護衛についているところを何度も見ていた。
顔見知りが出て来たところでホッとしたルーカスは、すぐにこの部屋に来た目的を話した。
するとブリスも勝手知ったる様子で、ルーカスを部屋の中へ通した。
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