第3話 告白さえもNTRフラグに感じます

 初めて凛から好意を示されたのは小二の時だ。公園で凛と遊んでいると出し抜けに「リクちゃんのことが好きだから、ずっと一緒にいたい」と言われた。普通、女の子から告白されるのは嬉しいものだが、その時の俺は自分でも驚くくらい嫌な気分になった。


 幼馴染というやつは本当に怖い生き物だと心底思ったからだ。ワインを何年も熟成させるかのように、幼馴染は長い時間をかけて相手を洗脳していく。幼馴染だけは絶対に自分だけを想ってくれていると勘違いさせておき、性的に成熟した途端、相手を奈落の底に突き落とすのだ。本当に幼馴染は恐ろしい。

 

 俺は震える声で「二度とそんなこと言うな」と凛に言って、幼馴染を泣かせてしまった。


 凛との時間は、心を許してしまえば将来毒となりうるものばかりだった。地域の夏祭り、俺と凛は同じ法被を着て山車だしをひき、夏の夜空を彩る花火を見た。遠足の前は二人でおやつを買いに行き、遠足が終わると二人とも泥だらけになっていた。流星群が見える夜などは凛は俺をこっそり家から連れ出し、ほとんど流れ星なんて見えないのに空を延々と眺めた。凛はいつも楽しそうにしていたが、俺は結衣との時間をもう一度繰り返してるようで、複雑な気分だった。


 そう。あの時、俺が身を投げるなんて衝動に駆られたのもただ単に恋心が傷ついただけじゃないのだ。結衣と一緒にいた時間がそうさせたのだ。幼馴染と過ごした濃密な時間はそのまま毒となって、俺の心を殺したのだ。


 同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。俺は幾度となく凛にもう会わないと告げて、彼女を泣かせた。その度に凛は「私はリクちゃんだけのもの。一生一緒にいる」とありもしないことを言った。結局、根負けした俺は凛と一緒に過ごすことになったが、幼馴染のことは決して信用してはいなかった。



 こうして転生してから十五年が経ち、俺はまた高校生になっていた。そういえば、今まで考えなかったのが不思議なくらいだが、前世の知人が今何しているのかをふと知りたくなった。俺が死んでから十六年しか経っていないのだ、ほとんどの知人が健在だろう。


 SNSなどを通じて多くの情報が手に入った。一番仲良かった男友達は立派な会社に勤務する一児のパパになっていた。高校の頃一番イケメンと称されていた友達は今ではでっぷり太ってしまい、SNSで年端もいかないアイドルのことばかり発信している。いや本当に、将来ってわからないものだ。


 そして、多少ためらいはあったが、俺は白石結衣、そしてその幼馴染を寝取った高槻について調べることにした。

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