09話
「晴樹ー、約束をしていたとかじゃないけどナイスサポートだったでしょ?」
「でも、解散後にもできたことだからな、最後までちゃんと早穂とも見て回りたかったよ」
「そ、そうなの? うーん、ちゃんと断っておくべきだったか……?」
「ただ、あんまり説得力がないのも事実だからな」
大丈夫なら来年にまた付き合ってくれと言っておいた。
ここはまだ俺の家と彼女の家の中間地点でしかなかったから俺の家に向かって歩き始める。
「こんにちは」
「こんにちはー」
「こういうところでよく会うがこっち寄りなのか?」
「うん、そういうことになるね」
そうか、仲が良ければ一緒に帰るなんてこともできたのか。
だが、もうやめているとはいえ彼の目的は真乃や早穂だったということになるから仲良くなることはなかっただろうな、と。
残念ながらほとんどの相手とは喋ることもなく終わるし、喋ることができても必要最低限のことだけで時間が経過すればそこまで意味がないものとなることからは避けられないな。
「犬丸さんと東方君って仲がいいよね」
「そうだよ、これからも余程のことがない限りは変わらないよ」
「そっか、長く続くといいね」
「うん、ありがとう」
少し離れてから「逃げる必要はなかったよね」と早穂が呟いたが、特に返事をしたりはしなかった。
本人にその気がなければ結果は分からない、相手のことを考えすぎて行動をするのも危険だから今回に限って言えば特にトラブル的なことが起きていないことからそれが正解だったのだ。
「ぶいぶいー」
「どうした?」
「踏み込んではいけないラインを見極めて控えめに甘えているんだよ」
「そういうことか」
女子だからこそできることだ、男の俺が同じようなことをしたら一発で世話になることになる。
親しい相手でも同じ、いや、親しい相手だからこそ気をつけておかないとやばいことになる。
「あの――」
「ぎゃあ!? って、ま、真乃じゃなかったか、ふぅ」
見極めて控えめであれば真乃が急に来たって気にならないはずだが……。
「ついに付き合い始めたんですか?」
「違うよ、晴樹君は真乃ちゃんを選びました」
「え、それじゃあ犬丸先輩はどうするんですか?」
「私はこのまま二人の側で見ていくよ、ね、晴樹?」
「なんかそうするみたいだ」
何故か飽きずにずっと続けそうだという考えが強くあった、まあ、これまでも結局近くにいてくれたわけだからただの妄想ではない。
「犬丸先輩を選ぶと思っていたけど、なにがあるのかなんて分からないものだね」
「って、俺のことを全然知らないだろ」
「知っているよ、だって毎週過ごしていたんだから」
「あら、中学生の女の子と毎週過ごす晴樹君か、真乃にちゃんと言っておいた方がいいよ?」
「もう知っているだろそれは……」
ゆっくり好きな時間まで会話をしていたというだけだ。
聞きたいということなら覚えている範囲で説明をするが、真乃が聞いてくるとも思えなかった。
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