魔胞侵食

空気中の含有魔力が一定値に達すると、植物を繁殖させる現象が起こる。ラストリゾートの開発が進んだ都心部は緑とは無縁だが、魔力の影響で雑草や野花が生えることがままある。舗装された道路や建築物の壁などを割って生えるほどの生命力を持ち、ラストリゾートでは大きな環境問題となっている。超常現象対策機関DSRはこの魔胞侵食に対して、魔力由来の植物だけを焼き払う『滅菌』を行なっている。

基本的に魔力をライフラインとして利用するラストリゾートでは、いつどこで発生してもおかしくない。また、魔胞侵食が発生した場所には高確率で魔法生命体レリーフが出現するため、単なる環境問題として片付けられない、最も身近で極めて危険な超常現象である。

E3セクターに存在するラストリゾート記念公園は、唯一この魔胞侵食が野放しにされている。厳密には超常現象対策機関DSRによる定期的な滅菌が行われているが、それも規定の範囲を超えた部分が対象であり、内部は魔法生命体の温床となっている。月城財閥が楽園政府ネクサスの造園理事会に特別な認可を得てのことであり、その目的はラストリゾートに自然の緑を残すため。一部ではそれは表向きであり何か隠しているという噂が流れている。実際のところ、公園内部に生息する珍しい魔法植物や生物を売買する業者の出入りや、管理の行き届かない環境を利用したテロリストたちの隠れ蓑になるなど、様々な問題を孕んでいる。最も問題視すべきは、管理者である月城財閥の会長が失踪したことで、公園の管理責任が誰にも追及されず有耶無耶になっていることだろう。

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