悟り
日本語破綻者
第1話 悟り
バスケットボールでプロを目指していた怪奇 英彦は中学時代に膝に怪我をしてしまった。
彼はシューターにあこがれていて、どんな精神状態でもゴールを決められることを頭の中に常に描いて練習をしていたが、けがのせいでそのイメージが浮かばなくなって引退した。しかし大人になってそれを振り返ると自分ではどっち道プロにはなれなかった。才能がなかったと客観的にそう思うようになっていた。
弱小校であり、レギュラーではありつつも目立つ存在ではなかったからだ。
大人になった怪奇はやがて結婚をして、子供が生まれた。もの心つく前からバスケボールを触らせていたら自然と子はバスケをすることになった。
子供が成長するにつれて自分も昔の熱い気持ちを思い出した。
それとともにどんな時でもシュートを決められるシューターを思い出し、それを子供に託したい気持ちが芽生えてきた。それは親のエゴ、それはわかっている。しかし、子供も親の気持ちを感じてか、自らシューターになりたいとそう口にするようになっていた。
だから気持ちを鬼にして、怪我にだけは気を付けて練習をさせることにした。精神状態を常に一定に保つそれは練習でいくらシュートが決まったとしても本番で決まらなければ意味がないのと同じである。だから精神状態をぶれないように訓練することにした。
幸いなことに会社を立ち上げ成功を収めていた怪奇英彦だったので、自宅にバスケットコートを作ることはたやすかった。フィギュアスケートの選手になるにはお金がかかる。それは知られていることだが、バスケで自宅にコートを作るエリート環境、それはずるには当たらないのだろうか。いな、当たらない。良い大学に行っている子供は親の年収が高い場合が多い、それは他から見たら不公平かもしれない。それと英彦は同じ事を子にしようとしている、しかしそれも運の内。なにより英彦は最高のシューターを作り出したかった。この目で見たかったのだ。そして子供の時はお菓子を横に置き、あるいは英彦が食べながら子供の精神力を揺さぶる。
「そうだ。その誘惑に耐えてこそ悟りが開ける」
むしゃむしゃ英彦がお菓子を食べるのを横目に子供はシュートを打つ。やはり精神力が乱されるのか外すことが多い。
中高生になった子供の練習時にはアダルトなビデオの音声を流しながら練習をした。
大人になってからは裸の女を周りに配置し、ダンスやいろいろな誘惑の中でシュート練習をさせた。
ドリブルやフェイントなどのテクニックは並みだったが子はシューターとしていよいよ開花した。
どんな距離からでもシュートが決まるようになったのである。途中でおならを英彦がしてもそれがシュートフォームに入った時でも微動だにせずシュートを決めたのである。英彦の芸術作品が完成した瞬間である。
英彦の子供はプロになった。シューターとしてただそれだけでなれたのである。
ようはぽつんと誰もいないところに立ってボールを渡されてシュートを打つだけである。百発百中で、もはや敵なしである。年俸は10億円に達し、アメリカからもスカウトされ、大成功を収めた。
やがてかれも年を取り、ボールが届かなくなった。加齢による筋力不足である。引退した彼は自分が感情を感じなくなった男なのだとようやく気付いた。
彼は生涯をかけて有り余った金を使い、自分探しの旅に出るのであった。
悟り 日本語破綻者 @mojiuchisyuukann
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