季節特別編『アユルのクリスマス』

とある冬の一日


「私とした事が…剣を刃こぼれさせてしまいました…」


なので本日の仕事はお休みです。流石に身を守る物が無いのは危険極まりないですからね。


このレベルだと私個人で直すのは少々骨が折れます。こればかりは本職に任せるのが一番ですね。


とりあえずいつもの鍜冶屋さんに行って…


『本日臨時休業』


あれ?珍しいですね。


これは仕方ないです。別のお店に行きましょう。




変ですね…どこもここも閉まってます…


そもそも装備街に人がほとんど居ません。しかも仕事街や娯楽街にも人が少ないです。


反対に商店街には大量の人で溢れています。


何かあったんですかね?


考えてると、商店街の方から声をかけられました。


「どうだい?お姉さんはクリスマスってのに興味はあるかい?安くしとくぞ?」


クリスマス…ですか?


聞いたことないですね…


「あの…クリスマスってなんですか?」


「あぁ、そうか。クリスマスってのは大切な人とかと一緒に過ごす別地方由来の特別な日らしい。あとは…」


大事な人と…



『俺はヴィラの事が…』


『今夜は寝かせな…』



な、何を考えてるんですか私は!仲間でそんな不埒な妄想なんて!


とにかく!催し自体は中々面白そうですね。ヤマさん達にも相談してみます!






「クリスマス?」


「はい。別地方由来の催しらしいです。大事な人と一緒に居たり、ケーキを食べたり、プレゼントを交換しあうらしいんですよ」


「へぇ、面白そうな催しだな」


「面白そうにゃ!ネネ達もやるにゃ!」


「よし、そうと決まれば手分けして準備するか。じゃあ場所は…」




流石にこの寒空の中、外でやるのは大変ですのでクリスマスは私の家で行う事にしました。ヤマさんは最後まで渋ってましたが…何でですかね?


とにかく準備です!私はケーキ担当で、終わったら二人の手伝いです。恐らく私が一番早く終わりますしね。


ちなみにヤマさんは料理担当、ネネさんは飾り付け担当です。ちなみにプレゼントは各自準備なので担当とかはありません。


さ、準備開始です!




sideヤマ


どうやらクリスマスには鳥類の肉を買うとの事だ。


鳥類ねぇ…普段あんまり食べないけど、そこらの店に売ってるのか?


アユルはブームにかなり敏感だ。鶏肉も売ってない可能性が高い。


だから案の定と言うべきか、鶏肉店は軒並み全滅だ。さて、どうした物か…


「お?そこに居るのはヤマかの?」


「あ、シャンティさん。セレナは一緒じゃないんですか?」


「妾は顔が割れてるからの。一緒に居たらセレナに迷惑がかかってしまうのじゃ」


シャンティさんレベルになると隠しても無駄になるのか。


セレナの事を考えると別行動になるのは仕方ないな。


「シャンティさんも鶏肉を買いに?」


「うむ。『くりすます』には鶏肉を食べるらしいからの。妾も狩りに来たんじゃ」


…ん?何かアクセントが違ったような?


「えっと、どこにありました?この辺りの店は全滅で買いたくても買えなくて…」


「別にその辺に飛んでるぞ?これもさっきその辺飛んでたのを撃ち落としただけじゃ」


「…ちょっと待って下さい。話が噛み合ってません」


よし、一旦整理しよう。


「シャンティさん、その鶏肉は買いました?」


「うむ、狩ったぞ」


「ちなみにどうやって?」


「魔力の塊を作ってそのまま射ったのじゃ。当たれば一撃じゃぞ」


うん、絶望的に話が噛み合ってない。


「変かの?人間達を見習って金をかけない為に自然から捻出したのじゃが…」


「シャンティさん…そういうのは普通買うと思います」


「のじゃ!?」


飛んでる鳥をあっさり撃ち落とすとか、かなりレベルの高い魔法使いとか弓使いじゃないと結構難しいぞ…


遠くでランダムに動く的に正確に当てるとかかなりの精度が必要だし…


「危なかったのじゃ…またセレナにドン引きされる所だったのじゃ…」


シャンティさんは魔法に長けてるから、こう言った事が普通だと思ってたんだろう。


まあこればかりは仕方ないか。


「教えてくれて助かったぞ。それと鶏肉を売ってる良い所なら知っておる。案内しよう」


「その鳥はどうするんですか?」


「里の者にでもあげようと思う。妾からの『くりすますぷれぜんと』じゃ」


喜ぶか?これ…





「邪魔するぞ」


「はーい…あ、ロリババアじゃん」


いや、どんな呼ばれ方されてんだよ…


「じゃからせめてエルフは付けとくれ」


「問題点そこ!?」


「一番良い鶏肉をくれ。二つじゃ」


「はいはーい」


よし俺も…


「ちょっと待つのじゃ。ここは妾の顔を立てて欲しいのじゃ…すまん、一つは包んでくれ」


「…ふーん。ついに物で媚び始めたんだ」


店員さんはシャンティさんの事を少しバカにした様な目をしている。


「別にそんなつもりは無い。純粋な好意じゃ」


「ま、そういう事にしといてあげる。ほら、出来たわよ」


代金を払って鶏肉を二つ受け取り…


「ヤマ、『めりーくりすます』じゃ」


シャンティさんは俺に包んだ鶏肉を一つ渡してきた。


「良いのか?こんな高級品…」


「教えてくれたお礼じゃ。そもそもヤマにはまだ償いしても足りないくらいじゃしの。是非受け取ってくれ」


「じゃあ遠慮なく」


よし!高級鶏肉、ゲットだぜ!




sideネネ


流れで飾り付け担当になったけど、ネネはクリスマスとか全然知らないにゃ。


ヴィラにモミノキだけは買ってこいって言われたけど、あんな木に何の意味があるにゃ…


テキトーにうろうろしてれば何かしら分かるはずだにゃ。


あ、プレゼントも買わなきゃにゃ。やることは山積みだにゃ。


「あー!」


「にゃ?…げ…犬獣人…」


面倒な奴に捕まったにゃ…


「また会えて嬉しいわん!くりすますの準備ですわん?」


「まあそんな所にゃ。じゃあネネは行くにゃ」


ここは颯爽と去るにゃ。こんな犬っコロに時間は取りたくないにゃ。


「あ!ちょっと待ってわん!」


「ふにゃ!?」


この駄犬…ネネの尻尾を握りやがったにゃ!ヤマにだって触らせた事にゃいのに!


仮にも同じ獣人なのに、これがどれだけ嫌なのか分からないのかにゃ!?


「今度はなんにゃ!それに尻尾に触るにゃ!!」


「お近づきの印だわん!これどうぞだわん!」


大きい袋を渡されて、中を見ると『クリスマス用、飾りセット』って書いてあるにゃ。


こ、これは…ネネが探してた物だにゃ!


「良いのかにゃ?」


「わん!だんちょーに飾り付けは要らないって言われて困ってたんだわん。くりすますの飾りに困ってたみたいだからぷれぜんとだわん!」


「…今回は素直に受け取ってやるにゃ」


ほんとーーーに癪だけど、今回ばかりは犬獣人のお陰で助かったにゃ。


まあ…ほんの少しだけ犬っコロも認めてやっても良いにゃ。


もう面倒事はゴメンだにゃ。さっさとモミノキ買って飾り付けを始めるにゃ。


「それと、さっきは尻尾握ってご免なさいわん」


「分かれば良いにゃ」


「お詫びにわんの尻尾も握ってわん!にぎにぎして下さいわん!」


「にゃああああ!!!鬱陶しいにゃああああ!!!早く帰らせろにゃああああ!!!」






sideヴィラ


『ケーキか…俺はそう言うの詳しくないから、ヴィラのオススメを頼んでも良いか?』


『ネネは旨ければ何でも良いにゃ』


これは地味に困りましたね…私も好みを完璧に把握してる訳では無いですし。


オススメと書いてありますし、イチゴ系がベターですかね?


いえ、果物をふんだんに使ったタルトとかも悪くないです。


ここはアイスケーキにしてみますかね?ですがネネさんは冷たいの苦手そうですし…


悩みますね…


「迷ってるのですか?」


「え?」


顔を上げると修道服を来た若い女性が立ってました。教会の方ですかね?


「は、はい。クリスマス用のケーキを買いに来たのですが、種類が多くて…」


「やはり悩みますよね…私は数が必要なので大きさを取るか量を取るか…」


「私は三人分ですが種類をおまかせされまして…」


「「うーん…」」


悩みは皆同じですね。しかしどうしますか…


すると私達の目にとある物が目に映りました。


そこには少し小さめなイチゴケーキの詰め合わせが売ってました。そしてその数は…


「に、二十人分…」


「とんでもない量ですね。私も流石にこれは多いです」


単価的にはかなりお得ですが、この量は消費しきれませんね。


これは置いといて別のケーキを…


「あの、良ければこれ分けませんか?私は十五人分あれば足りますので、残り五人分を渡すという形で…」


五人分ですか。確かにヤマさんとネネさんは二人分食べても可笑しくないので、この量はベストかもしれません。


「それでお願いします!えっと五人分では…」


「いえ、お金は結構ですよ」


「え…それは流石に…」


「大丈夫ですよ。良い収穫もありましたので、そのお礼です」


し、収穫?何の話ですか?あ、ち、ちょっと…レジ行くの早いです…


「すみません。こちらの詰め合わせをお願い出来ますか?それと五人分は…はい、こちら代金です」


お財布すら出させてくれませんでした…




「何から何までありがとうございました」


「ふふっ、良いクリスマスを。ヤマ様にもよろしくと伝えといて下さいね」


「は、はい!本当にありがとうございました!」


ちょっと申し訳ないですが…シスターさんのお陰でケーキはバッチリです!あとはプレゼントですね!


…あれ?


私、ヤマさんとクリスマスをするって言いましたっけ?


「あ、あの!もしかしてヤマさんの知り合…」


もう居ません…




***



ヤマ様のお友達が本当に良い人なのか気になってましたが…杞憂でしたね。



もし、彼女が録でもない人でしたら…





ふふっ、どうなってましたかね?



***






と、とにかくケーキは買えましたので残すはプレゼントです!


と、言いましてもどれもありきたりと言いますか…パンチに欠けますね。


こう言った催しでプレゼントにアイテムとか武具とかは流石に無いですし…


…!そうです!これなら…!


あまり時間はありませんが、まだ間に合います!


私はとある店に向かいました。






三人称視点


「ヤマーそこのリース取ってにゃー」


「ちょっと待て。鶏肉を火にかけたら行くから」


「はいにゃー」


場所はヴィラの家、二人はクリスマスに向けて準備をしていた。


「全く…ケーキ買うだけにどんだけ時間かかってるにゃ」


「大方ケーキかプレゼントに拘りがあって決めかねてるんだろ。ヴィラはそう言うの妥協したくないだろうし」


「クソ真面目だからありえる話だにゃ」


ネネはヴィラが何時までも帰ってこない事が不満足な様だが、小言を言いつつも作業を進めた。


何だかんだで信頼してるからだろう。


「そういえばよ、こんな話知ってるか?」


「なんにゃ?」


「サンタクロース」


「知らないにゃ。どんな話にゃ?」


「これはな…」





『その昔、子供達が畑作業や家事を一切手伝わなくての、困った親達はある神に相談したのじゃ』


『その神、ニコラスはとある魔法を世界中にかけたのじゃ。それは『一定量の作業をした若者に特別報酬を与える』との事じゃ』


『結果としては大成功での、子供達は積極的に手伝いをしてくれる様になったのじゃ』


『別の問題も沢山出たのじゃが…まあ今はその話はしなくとも良かろう』


『そこから長い時間の間に紆余曲折あっての、ニコラスは『さんたくろーす』特別報酬は『ぷれぜんと』と呼ばれる様になったのじゃ』


『それ以来、良い子にしてる人には『さんたくろーす』から『ぷれぜんと』が貰えると言われているのじゃ』


『セレナはこの話を聞いてから、『さんたくろーす』が来ることを信じていての。どうしたものか』





「こんな話だ」


「嘘臭いにゃ。どうせ子供に手伝いをさせる為の作り話にゃ」


「ネネだってどっちかと言えば子供だろ」


「自立してるから関係無いにゃ」


サンタクロースの話はどうも信憑性が低い様で、ネネは全く信じてないようだ。


「ま、サンタクロースは置いといてさっさと飾り付けとか終わらせちまうか」


「そうだにゃ。多分戻ってくるのは期待するだけ無駄にゃ」


こうして二人は黙々と作業を続けていく…





sideヴィラ


そしてクリスマス開始数分前…


私は大急ぎで家まで走っていました。


ま、まずいです…!もう五分もありません!プレゼントに時間かけすぎました!


結局料理も飾り付けも手伝ってませんし、二人にはとんだご迷惑を…


考えるのは後です!せめて遅刻だけは避けなくては!


「すみません!遅くなりました!」


「おー、ようやく来たか。もう準備終わったぞ」


家の前には飾り付けされたモミノキが置いてありましたし、家の中も沢山の飾りがされてます。


テーブルには鶏肉も出来てますし、本当に二人に丸投げしてしまいました…


「何してたんだにゃ?」


「プレゼントに少し時間がかかってしまいまして…」


「ヤマの予想通りだったにゃ」


うぅ、やっぱりヤマさんにはお見通しでしたか。


「てかその手はどうしたんだ?ズタズタじゃねえか」


「ケーキとプレゼント買っただけで何で怪我するんだにゃ」


「こ、これは何でもないです!」







「じゃあ進行役は任せるにゃ」


「え?俺?」


「こう言うのはリーダーがやるんだにゃ」


「…まあ構わんが。えー…では三人でクリスマスを始めたいたと思います。流れとしましてはプレゼント交換をして、その後から鶏肉とケーキを食べたいと思います」


何と言いますか…凄く硬いです。緊張してるのですかね?


「カチカチにゃ」


「こう言うの慣れてねえんだよ!とにかく最初はネネだ!早くプレゼント持ってこい!」


「分かったにゃ~」





「じゃあまずはネネからのプレゼントだにゃ!」


ネネさんは両手で大きな箱を持ってきました。


どこから持ってきた?と、聞くのは野暮ですよ。


「大きくないか?」


「物が物だから仕方ないにゃ。早速開けてみてにゃ!」


ではお言葉に甘えて…


おや、これは


「ネネのイチオシ防寒グッズにゃ!これで寒い冬もへっちゃらにゃ!」


ホットジュースや上着、あとは手袋ですね。


これは暖かそうです!


「おお、こいつは暖かそうだな」


「こんなに沢山良いんですか?ネネさんも使いたいんじゃ…」


「自分のはちゃんと確保してあるにゃ」


そう言うと『ネネ専用』と書かれた箱に同じものが入ってました。流石ネネさん、抜かりないですね。


「俺はてっきり魚セットでも持ってくるかと思ってたわ」


「そんな雰囲気ぶち壊す物は流石に持ってこないにゃ」


それはそれでネネさんらしくて良いと思いますけどね。







「じゃあ次はネネ達が貰う番だにゃ!ヤマのプレゼント楽しみだにゃ~」


「ちょっと緊張しますね…」


「俺からはこれな」


そう言うとヤマさんは小さな長方形の箱を持ってきました。


開けてみるとそこには…


「ネックレスだにゃ!」


「凄い綺麗…高くなかったですか?」


「まあ…多少はしたけど今日くらいな。金ならまた稼げば良いし」


ヤマさんらしいですね…あれ、これ値札ですか?ネネさんのには付いてないから取り忘れですかね。


「そういえばこれいくらにゃ?」


ヤマさんは多少するとは言ってましたが、まあそんな高くはないですよね。


少し値札を拝見しますよ。


『¥79800』


「「高っ!?!?!?」」


え、ちょ、何ですこれ!?


「こ、こんなの流石に受け取れないにゃ!」


「え?特別な日だからちょっとは高くても…」


「いくらなんでも高過ぎです!それにこんな高級品、恐れ多くて使えません!」


「な、なんかすまん」


「ヤマって変な所で金銭感覚バグってるにゃ…」


「ほっとけ」







「あとはヴィラのだな」


遂に来ちゃいました。用意はしましたが…いえ、これは用意出来たとは言えませんね。


ですが渡さない訳にはいきませんので、とりあえず正方形の箱を二人に渡しました。


「これなんにゃ?」


「毛糸の服か?いや、流石に長すぎるよな」


「ぁ…ま、マフラー…です…」


市販品より手作りした方が特別な感じがして良いと思ったのですが、慌てる余り失敗の連続でマフラーとは言えない何かが出来上がりました…


一応風だけは通しにくくはしましたが、不格好な物には変わらないです。


「あ、あの…そんな不格好な物より、もっと良いのを買いますので…それは捨てて…」


「あったかいにゃー!」


「え!?」


嘘ですよね!?そんな布切れで…


「贔屓抜きで今までの中で一番あったかいにゃ。不格好とか関係無いにゃ」


「こりゃすげぇ。下手な防寒グッズ買うより良いかもな」


思ったより好評で良かったです。ですが、今度はちゃんと完成させてきます…


「次も期待してるにゃ」


「プレッシャーかけないで下さい…」






「よし、プレゼント交換は終わったな。じゃあ次は鶏肉とケーキだ」


「待ってたにゃー!お腹空いたにゃ…にゃふし!…急に冷えるにゃあ」


確かに肌寒いですね…


「ちょっと暖房付けますね。暑くなったら言って下さい」


えっと…暖房のリモコンは…


「にしてもどうなってるんだにゃ?こんな急に冷えるとか変にゃ」


「確かに急に冷えたよな…」


あ、あれ?確かここにしまったはず…


「ちょっと外見てみるにゃ」


「ちゃんとマフラー着けろよー」


な、無いです!そんな!確かにここに…!


「二人ともー!外に来るにゃ!」


「何だ何だ」


「どうしました?」


外に出てみると…


「わあ…!」


雪です!


「ネネ、寒くないか?」


「重ね着して防寒グッズもアイテムも使ったから大丈夫にゃ。それにヴィラのマフラーで何時もよりあったかいにゃ!」


ネネさん、本当に寒いのはダメなんですね…


「てか本当にクリスマス一色だな。もう夜だけどめっちゃ明るいし」


確かに電飾や光魔法の影響で街全体がかなり明るくなってます。


「こんなに明るい夜は初めてですね」





『シスター!はやくはやくー!』


『このケーキ美味しいよー!』


『すごーい!雪も降ってきた!』


『ふふっ、慌てなくてもクリスマスは逃げませんよ』





『お、雪じゃねえか』


『これは…ほわいとくりすます!ですわ!』


『だんちょー!くりすます料理、たくさん作ってきたわん!』


『今夜は騒がしくなるな。…ま、たまにはこんな日も悪くないか』





『雪かよ…今夜は冷えそうだな』


『今日くらい出してくれないかしらぁ?私も『くりすます』に興味あるのよぉ』


『馬鹿な事言うな。お前は死刑になるまで一生檻の中だ』


『…あぁもう!すきま風で寒いし、とんだ『くりすます』ね…!』





『あ!雪だ!クリスマスの雰囲気になんか合う!』


『別に雪なら妾が何時でも降らせるぞ?』


『お母さん…夢壊さないでよ…』


『ご、ごめんなのじゃ…』





『ごめんね…急に参加しちゃって』


『いいっていいって!多い方が楽しいし!』


『そういえばキャラ作りもうやめたの?イケメン女子になって逆ハー作るー!とか言ってたじゃん』


『い、言わないでぇ…』





『…』


『…』


『…ヤマ』


『…メリークリスマス』





「そろそろお腹空いたにゃ~…」


「んじゃ、今度こそケーキとか食うか」


「ですね!」


「じゃあ俺達も…」


せーの!


「「「メリークリスマス!!!」」」






おまけ


「くぁ…もう朝か…ん?何だこれ」


「プレゼント?もしかして…サンタクロース?いや、まさかな…中身はっと」


『家のカタログ』


「…まあ嬉しいっちゃ嬉しいか」




「ん…寝てしまいましたか…これは?」


「プレゼント?もしかしてヤマさんかネネさんのサプライズですかね…」


『砥石』


「砥石ですか…一応ストックはしておきましょう」




「んにゃー…よく寝たにゃ…なんにゃこれ?」


「プレゼントかにゃ?きっとヤマからのサプライズだにゃ!」


『信じてない悪い子にプレゼントはありません』


「タチの悪いイタズラにゃ…」




「…はっ!寝てた!?サンタクロースは…」


「あ!来てた!中身は何だろ!」


『ボードゲーム』


「これ面白いって噂のゲームだ!今度お兄さん達とやろっと!」




「ん…朝か。…のじゃ?」


「なんじゃ?この箱は。…もしかして妾の所にも『さんたくろーす』が!」


『エルフのコスプレ衣装』


「ほ、ほお…『さんたくろーす』はジョークが上手いのぉ…」




「…おや、いつの間にか寝てしましたね。…あら、これは?」


「プレゼント?子供達の忘れ物…ですかね?でも宛先は私ですし…」


『撮影機械(カメラ)』


「…ふふっ、これで沢山思い出を残せますね」




「これはどういう事だ…」


「ほんの少し仮眠を取ったら目の前に俺宛のプレゼント…?何が目的だ?」


『アイマスク』


「…まあ使ってやるか」




「お、朝か。よし、今日も…ん?」


「何だこれ?プレゼント?イタズラか?」


『手袋』


「こ、これは俺愛用の!分かってるじゃねえか!」




「元気!!ハツラツ!!ですわ!!」


「しかも枕元には『ぷれぜんと』!!おったまげー!!ですわ!!


『マイク』


「あらあらこれは!!でも私には不要ですわ~っっ!!」




「よく寝たわん…」


「これ何だわん?あ!もしかしてだんちょーの『さぷらいず』だわん?」


『猫獣人写真集』


「あ!これ見たかったのだわん!だんちょーにお礼言わないとだわん!」






「ヤマさん何読んでるんですか?」


「これか?家のカタログだよ」


「そういえばずっと欲しいって言ってたにゃ。買ったのかにゃ?」


「いや、朝起きたら枕元にあった」


「え?ヤマさんもですか?」


「ヴィラもか?」


「はい、私は砥石でしたが…」


「ネネは空箱だったにゃ…」


「格差がすげぇな」




「よし!ゲームも持ったし、フードも被った!お母さーん!お兄さん達の所に…」


「セ、セレナ!?今入っちゃダメ…じゃ…」


「…お母さん何してるの」


「『ぷれぜんと』で服が入ってたから試しに着てみようと思ったのじゃが…」


「年考えてよ…」


「妾に言われても困るのじゃ…」




「はーい、撮りますよー!」


「どう?ちゃんと撮れた?」


「見せて見せてー!」


「ええ、綺麗に撮れてますよ。現物はまた出来たら渡しますね」


「はーい!」


「…本当に良いプレゼントでしたね。子供達の喜ぶ顔は見れますし…」


「証拠を写すのにも使えますしね」


「ふふっ」




「なんだ、手袋新調したのか?」


「これか?朝置いてあってよ、この銘柄の良さが分かるとはセンスあるよな!」


「…まあ、良かったな。それと犬獣人を見なかったか?」


「彼女なら部屋から出てきませんわ~っ!!」


「風邪か?」


「違いますわ~っ!!でも一人にしてくれって言われましたわ!!」


「分かった。とりあえず昼までは様子を見よう。それでも出なければ強行突破だ」


「了解しましたわ~っ!!」



「でへへ…猫獣人がいっぱいだわん…夢みたいだわん…」






「「「「「「「「「「で、結局」」」」」」」」」」



「「「「「「「「「「誰が置いたんだろう?」」」」」」」」」」




『ほっほっほっ、メリークリスマス!』


『これからも良い子で居るんじゃぞー』

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