ifストーリー 『弱き者の末路』
14話より分岐します
「後は任せたぞ…」
そう言うとヤマさんは再び倒れてしまいました。
出血が酷い…!これでは傷薬を使っても焼け石に水です!
もう時間がありません!
「ネネさん!まだ動けますか…!」
「ごめんにゃ…ネネはもう限界だにゃ…」
ネネさんはその言葉を最後に倒れてしまいました。
残りの力を振り絞り、私はヤマさんを右腕で、ネネさんを左腕で持ち、エミリーはロープで腰にくくりつけました。
こんな所で死なせはしません…!私が頑張らないと…!
私が…頑張ら…ない……と………
「…あれ…ここ…」
「気が付いたか」
「団…長…?」
あの後…みんなを担いで…意識が遠くなって…
「そうです…!みんなは!みんなはどうなったんですか…!」
「いいか…落ち着いて聞け…」
どうしたんでしょう…?随分怖い顔をしてます…
「まずエミリーだが、即座に地下牢に入れた。…まあこれは良い。次に猫獣人だが、怪我こそ酷いが命に危険は無い。コーデリアが居るから直に回復するだろう」
とにかく何事も無くて良かったです。ネネさんもコーデリアさんが居るなら大丈夫ですね。
「後はヤマ君だが…」
もしかしてかなり怪我が酷いとかですか…?それなら完治するまでずっと付き添いますが…
「死亡が確認された」
「え…」
時が止まった感じがした。
死んだ…?ヤマさんが…?
そんな訳無いですよね…?
「嘘ですよね!?そうですよね!?いくら団長でも許しませんよ!?」
「…なら着いてこい」
私はコロン団長に連れてかれ、とある場所に向かった。
「ここは…?」
「…霊安室だ」
そんな所あったんですね…
「残酷かもしれないが…しっかりその目で確かめろ」
そう言うとコロン団長は部屋から出ていきました。
私はヤマさんが保管されてる元まで行きました。
ほんの少し前まで、動いて、生きてたのに…
こんなに綺麗な顔して…
「ヤマが死んだって本当かにゃ!?」
勢いよく扉が開かれ、ネネさんが入って来ました。
「嘘だにゃ…寝てるだけにゃ…?実は起きてるんじゃにゃいか…?」
少しずつですが、声に涙が含まれてくのが分かります。
一度流れてしまうと、もう、止まらない。
「起きてにゃあ!!一緒にイチホシサカナ食べるって約束したにゃあ!!何してるんだにゃあ!!!」
大粒の涙を流しながら必死にヤマさんを揺すってます…
「私の…私のせいで…ヤマさんは…」
「…その通りだにゃ」
ネネさんは今までとは違う、恐ろしく低い声で言ってきました。
「お前が余計な事したから!だからヤマは死んだんだにゃ!ヤマはあんたに殺されたも同然だにゃ!!」
「ごめんなさい…ごめんなさい…!」
そんなネネさんに、私は謝り続ける事しか出来ませんでした…
「ヤマが居ないならもうお前に用は無いにゃ。後これは貰ってくにゃ」
そう言うと、唯一の遺品であるナイフを持っていこうとしました…!
「ま、待って…待って下さい!せめて…せめてそれだけは…!」
お願いします…!それだけは…やめて…
それすらも無くなったら…もう私には何も残らない…
「そもそもお前が厄介事を持ってこなければこんな事にはならなかったにゃ!」
「きゃっ…」
ネネさんは、必死にすがり付く私を強く突飛ばしました。
「ヴィラ、良く聞けにゃ」
そう言うと私の耳元まで近付いて…
「一生怨んでやる」
「…ぁ」
そう言うとネネさんは出ていってしまいました。
あの誰よりも明るいネネさんがあんな表情に…
私は…ネネさんの心まで殺したんだ…
あはは…私って何なんだろう…
私のせいだ…私がダメダメだから…みんな死んじゃって…
何時までも弱いままだから…誰も守れなくて…
私は…
それから数日後
肉体的な怪我は完治してますが、精神の療養が必要との事で、集中治療室に入ることになりました。
基本はコーデリアさんのカウンセリングですが、ギルドのみんなもちょくちょく顔を出してくれます。
そんな中、貰った新聞を読んでたら気になる記事がありました。
『猫獣人、川に転落し死亡。ポケットには小型ナイフが入っており、外傷の様子から事件性は無いと見ている』
これ…もしかして…
「ヴィラさ~んっっ!!本日の診察ですわよ~っっ!!!」
「コーデリアさん…この記事なんですが…」
すると急に表情が変わりました。
「…!…実はその事でも話がありますわ」
やめて…お願いだから…違うと言って…!
「その猫獣人ですが…」
お願い…します…!
「名前は『ネネ』と仰ってましたわ」
私の希望は無惨にも砕かれました。
そん…な…ネネさんまで…
「うげぇぇ…」
「ヴィラさん!?しっかりなさい!!気を確かに!!」
精神が限界を迎えた私は耐えられなくなり、貯まったストレスを吐き出す様に、何度も何度も吐き続けました…
「そうか…故郷に帰るんだな…」
「はい…」
もう…私には耐えられません…
逃げと思われても…軟弱者と言われても構いません…
誰にも迷惑かけずに…一人で残りの余生は過ごします…
「ならこれは持ってけ」
「それは…」
コロン団長からは、私が愛用していた剣を渡されました。
そういえば療養期間に入ってからは、使うことが無かったですね…
「それなりに遠いなら身を守るのも必要だろう。…元気でな」
「はい…今までお世話になりました…」
私はアユルを出発し、足を進めました。
故郷までそれなりに距離はありますが、今日中には着くでしょう。
…それにしても随分静かですね。
聞こえるのは風の音くらいです。
まあモンスターが居ないに越したことは無いのですが…
…何でしょう。この胸騒ぎは…
少し急ぎましょう…
もうそろそろですね。
私はもう一人で生きてくと決めたのですが…
遠くで少し見るのは…良い…ですよね…?
私は出発した場所と反対側からこっそりと覗いてみました。
…ですが私を待ってたのは
「え…?」
かつて私が住んでた所とはかけ離れた
「何…これ…」
悲惨な末路だった。
「…」
至るところに血や大きな爪の跡。
焦げて真っ黒になった家、そして人。
食い荒らされた様な残骸。
瞬時にして理解した。
モンスターの襲撃にあったんだと。
「みんな…どこ…どこなの…?」
もはや生存者を見つけるのは絶望的な状況。
それでも私は、僅かな希望にすがり付く様に足を進めた。
「あ…ここ…」
漸くして見つけた、かつて私が住んでたらしき所は、見るも無惨な瓦礫の山となっていた。
最後の可能性に賭けて、重い手を動かしながら、瓦礫を退かしていく。
…そして見てしまった。
眠るようにして、冷たくなった、みんなが。
…そっかぁ…みんな…死んじゃった…
はは…
あははは……
あはははははは!!へへ、へへへへへ!!
ふっ……ひっ、はーははははは!!!
あれから私は瓦礫に寄りかかり、何日も座り続けてます。
故郷も、友達も、仲間も、希望も、将来も、全てを失った私は、もう、ただの抜け殻。
二度と剣を持つことも無い。誰も守れない剣なんかとっくに捨てた。
誰も居ない、瓦礫の側で何もせず、ただ地獄に呼ばれるのを待ってるだけの存在。それが今の私。
これからも、永遠に。
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