第9話 不穏

「釣れねえなぁ」


「釣りは待つのが基本にゃ。気長に待つにゃ」


今回受けたのはコバクハツサカナ20匹の生け捕り依頼。どうやら炸裂弾に使うらしい。


死んだ時に小さく爆発する性質を利用して作ってるとの事だ。因みにどうやって作ってるのかは俺もネネも知らん。


報酬金はかなり良いが、生け捕りかつ量が多いから一人では厳しかったらしい。


「来たにゃー!」


さっそくネネが釣竿を上げると小さな魚が食い付いてた。


間違いない。コバクハツサカナだ。


「お、こっちも釣れたぞ」


おっと、そう言ってたらこっちの釣竿にも食い付いてた。


このペースだとそんなにかからんかもな。





暫く釣竿を垂らし、コバクハツサカナ19匹にアジサカナ4匹が釣れた。中々の量だ。


今日の夕飯の魚も釣れて、成果も上々だな。


「掛かったにゃ!」


「こっちも掛かったぞ!」


「うー…にゃあ!釣れたにゃ~!これで集まったにゃ!」


ネネの釣竿にはコバクハツサカナが食い付いてた。これで目標数は達成だ。


よし、俺も!


「ん?何か重いぞ…?」


「底にでも引っ掛かったかにゃ?」


そう思ってたら、急に引きが強くなった。


「ぬお!?お、重い…」


「これは大物にゃ!手伝うから絶対に逃がしちゃダメにゃ!」


そうは言っても結構抵抗してくるので、思うように行かない。


「力入れろにゃー!うにゃあ!!」


数分の格闘の末、何とか釣り上げる事に成功した。


食い付いてたのは、アジサカナを一回りほど大きくした黒い魚だ。


「これ何の魚だ?」


「にゃ、にゃにゃ!?こ、これイチホシサカナだにゃ!高級魚だにゃ!!」


「マジか…」


そんな凄い魚なのか…


「でも変だにゃ…この魚はもっと上流じゃにゃいと居ない筈だにゃ」


「そうなのか?」


「でもどうでも良いにゃ~!どうせ偶然下って来ただけにゃ~!」


まあ気にすることは無い…かな?






帰還後、依頼者に魚を渡しとりあえず依頼は解決した。


「にゃはは~!がっぽがぽだにゃ!しかも今夜はごちそうだにゃ!」


「そんなに美味いのか?」


「美味しいにゃ!身は白く引き締まって…頭は良い出汁が出て…食が進むんだにゃ~!」


あ、やべえ。普通に美味そう。


そんなご馳走は一度も食べたこと無いし、これは期待出来そうだ。


「教えてやるにゃ!このイチホシサカナを更に美味しく食べる方法を!」


今度は何をしてくれるんですかねぇ…?






「じゃあネネが落とすからヤマは拾ってにゃー!」


「あいよー!」


どうやらこのキレモンって言う果実が隠し味に最適らしい。


高い所に生息してるが、木が入り組んでて空が飛べない為に、木登りが得意な人でないと駄目だとか。


食に対して本気になりすぎだろ…


暫くして3つ程落ちてきて、俺はそれを回収した。


「これで完璧にゃ!」


「じゃあ今夜は期待してるぞ」


「任せるにゃ!…にゃ?」


しかし帰ろうとすると、急に変な臭いが漂って来た。


「にゃ…何にゃこの臭い…」


生臭いと言うか…何とも言えない異臭が漂ってた。


マジで何だこの臭い…


「こっちからするにゃ…」


俺も念のためナイフを持ち、ネネの後に付いていく。進む度に臭いは段々とキツくなってきた。


「この辺…にゃ?にゃにか蹴った…にゃああああああ!?!?」


「どうした!何かあったか!」


ネネが急に悲鳴を上げながら腰を抜かした。


「て、手にゃ!」


「手?」


「人の手が落ちてるにゃ!!」


「何だと!?」


指差した方を見ると、そこには血が付いた左手が落ちていた。


「な、何が起こって…にゃああああああ!?!?こっちには足があるにゃあ!?!?」


「どうなってんだ…ん?…っ!!」


足元を見ると…恐らくこのパーツの持ち主だろう物が転がってた。


これはもう…


そしてこれはネネには見せられんな…


「血が乾いてない…殺った奴がまだ近くに居るぞ!」


「は、早く逃げるにゃ!」


解体されると俺も生き返るか分からねえから、とにかく逃げるしかねえ!


クソッ!この森で何が起きてんだよ!


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