第7話 猫獣人ネネ

「お、ここに2本生えてるな。じゃあ摘んで…よし、これで30本だ」


とりあえずノルマは達成だな。思ったよりも早く見付かって助かったわ。


でも数で報酬上乗せだし、今後を考えてもっと採ってくか。金はいくらあっても困らんしな。


お、こっちには五本集まってる。これも採ってくか。




「と、採りすぎたか…?」


袋の中にはかなりの毒草が貯まっていた。正直ちょっと重い。


流石にこれだけあれば数日の食料にはまず困らんだろう。何なら幾らかは日用品に回しても良いし。


モンスターも出る気配が無いし、あんまり採ったら重くて帰れなくなる。今日は帰って換金するとしよう。




依頼所、受付


「わあ!随分採ってきましたね!」


採ってきた毒草の数を見て、受付嬢さんはびっくりしていた。


「では危険物が紛れ込んでないか確認しますね」


「お願いします」


そして、そのまま確認を待つこと数分。


「…はい。全て問題無いので、依頼達成ですね。おめでとうございます」


良し、これで結構稼げた筈だ。


「では依頼者を呼んできます。…じゃあパピヨンちゃん、お願いね」


「はーい!」


そう言うと両腕が羽になってる子が窓から飛んで行った。


どうやら依頼主がここに居ない時は、飛行魔法持ちや羽のあるハーピーみたいな飛べる子が直接呼んでくる様だ。




「毒草集まったってホントかにゃ!」


そう言って入ってきたのは、頭の上に耳を持ち、尻尾が生えた女の子だ。


名前は…確かネネだったか?


「スッゴい沢山あるにゃ!ありがとにゃ!」


毒草の山を見て喜んでいた。


「ネネさんすいません…そろそろ報酬の方を…」


「あ、そうだったにゃ。これ何本あるにゃ?」


「105本ですね」


「分かったにゃ」


ネネはお金を払おうと、持ってきた小さい袋を確認した。


が、暫くするとネネは青い顔をした。


「お金足りないにゃ…」


「えぇ…」


「だ、だって!こんな採ってくるとか思わなかったんだにゃ!」


そんな事言われても…こっちも生活が掛かってるし、貰えないのは困るなぁ。


「あのーちょっとだけオマケしてくれるにゃんて事は…」


「それは無理」


「そんにゃあ…」


更に追い討ちをかける様に受付嬢から一言。


「支払いが出来ないなら契約違反で出入禁止、最悪逮捕と言う形に…」


「そ、それだけは勘弁してほしいにゃ!!」


流石に助け船を出してやるか。


ちょっと哀れに思えたきたし。


「なあ、金の代わりになるので良いから何か持ってないのか?」


「代わり…今日釣った魚なら家にあるにゃ…」


魚か…まあ食料だし、代わりに貰っても良いかな?


「すいません、魚で代わりってのは駄目ですか?」


「双方の同意があれば問題無いですね。ちなみに今回の不足分を魚で補うなら…種類にも依りますが4~5匹が妥当ですね」


「そんなに持ってかれるのかにゃ!?」


「規則です」


「うにゃあ…仕方ないにゃー…約束は約束だにゃ。持ってくるにゃ」


ネネは項垂れながら外に出て行った。




10分程して、ネネは大きめの網に5匹の魚を入れて戻ってきた。


「持ってきたにゃ」


「えーっと、アジサカナ5匹ですね。これなら…5匹で丁度不足分を補えますよ」


「じゃあそれでお願いするにゃ」


俺はネネからルピと魚を受け取った。


「にゃあ~…お金も食料もすっからかんだにゃあ…」


毒草の袋を持ってトボトボとネネは帰って行った。


「何か悪いことしちゃったかな…」


「気にする事無いですよ。払えない方が悪いんです」


この受付嬢さん、割りと毒舌だな…






時は移り深夜


「…よし、誰も居ないな」


今回来たのは商店街から少し離れた橋の下。川も流れていて、致した時に出てくる血を洗い流すのにも便利だ。


ここは日中でもかなり人が少なかった。てかほぼ居ない。精々、子供がたまに遊んでる程度だ。


こんな時間ならまず間違いなく誰も来ないだろう。


と、その前に腹ごしらえだ。今日貰ったのは生魚だし、道具も無いから保存も出来ん。早めに処理しないと腐るからな。


枝や葉っぱを集めて…木で火種を作って…よし、火が付いた。後は串刺しにした魚を焼いて…出来た!


しっかし不便な物だな。道具も魔法も無いと火の一つすら大変だ。


まあ暫くの辛抱だ。とりあえず食べちまおう。


お腹辺りをガブリ…ヤバッ!美味い!こいつがアジサカナか!頭も骨も全部食える!疲れた体に染み渡るッ!


結局3匹も食べた。まあ最期?の晩餐には丁度良いな。



さて、腹も満たされた。今回は周りに人も居ない。夜でも盛んな娯楽街からも遠い。火の処理もした。コンディションは完璧だ。


早速新品のナイフで首をグサリと行くぞ!


今度こそ一死だ!


首にナイフを突き刺し…


「バカな真似はやめるにゃー!!」


「ぐほぉ!」


え、誰!?俺、突進された!?何でこんな所に人が居るんだよ!?




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