6話ヒューミリエ
「いっいらっらしゃいマガツちゃん」
「おはようヒューミリエ、今日も元気そうで何より」
「ふひひひ」
ドアを開けるとぼさぼさの伸ばし放題の白髪に濃いクマ、猫背、裂け目のように歪んだ笑み、皺だらけのダボついた服の女性が現れた。(現れたと言っても椅子に座ってこちらを向いただけだが。)
部屋はPC回り以外は足の踏み場がないくらい物(僕にはゴミ達にしか見えないが、ポ○チの空袋が転がっているし)があるためつま先立ちでヒューミリエまで近づいていく
「なっ何の用かな?」
「いやどうせモニター越しに見てたし聞いてたでしょ」
「ふひひっ、さーせん」
不気味だ。
「それで何か掴めそう?」
「ひひっ、あのおっぱい掴んだらっき気持ちよさそう」
質問に答えろよ。
「ッチンピラ3人組に襲われボロボロってどっドエロですよこれは、服や破られたってっぜ全裸に剥かれたとかだっだったりして、そうじゃないならチンピラもっと頑張れ頑張れってってオラあああっ」
お前が頑張れ、情緒が不安定すぎる。
いや僕が頑張れこいつから意味のある内容を会話で聞き取る難易度は知っていたはずだ。
「ああ~さすがはヒューミリエ、その着眼点が素晴らしい!これはエロすぎるぜムラムラしてきた。」
らしくもなくまた再度テンションを無理に上げてやる。
「ひひひひ」
お前はいつも楽しそうでうらやましい。
「まっマガツちゃんならそう言ってくれるとおおっ思ってたよ、同志だもん」
実に光栄な称号だ。
「そっそこで提案なんだけど、依頼人のるっルーティちゃんを縛って件の連中の目の前に放置。小型カメラでその後の様子を生中継する視聴会を開いて皆で見ない、ぢゅひひ、どっどうかな?」
良い訳ねえだろ。
「ああああっひふふ、ひょっとしてマガツちゃんもちょっ直接参加希望だったり、だったらあいつらにはあげず、私たちで楽しもうか?」
ちょっと待ったさらっと重要なこと言ってなかったか?いや僕が参加どうこうでなく、
「ヒューミリエ、連中の居場所を知っているのか?」
「おっおおうマガツちゃんは高みの見物派でしたか、ひひ、通ですな」
早よ答えろ。
「っか会話で聞いた時点でリーヤタウン近辺のっかカメラをチェックしたんだよ、っそそしたら見事っびビンゴ」
「っささ3人組全員はっと特定できなかったけど、っすスキンヘッドの男は懸賞金付きだったっかからすぐ丸裸にできたよ」
その後、僕がヒューミリエから聞いた情報をまとめると数年前に結成されたらしい現在構成人数50人前後の半グレ集団「巣美巣暴威スミスボーイ」のボスをやっているらしい。
特定できたメンバーの写真も見せてもらった。(ボーイって感じの奴は一人も見当たらなかった)
行きつけのクラブでいいアイテムをうちの組織で奪ってやったと自慢していた馬鹿の音声も手に入れていた。
ただ妖との関わりは今までなかったようで最近新しいルートからペンダントや魔薬の情報を手に入れたらしい。黒幕がいるかはわからないが用心くらいはしておくべきか。
「っでっでも、もうちょっとっく詳しい情報が欲しいかな、あっあいつらの内の一人がよっよく目撃される店を見つけたから、いいいってくれないかな?」
「それが必要ならもちろん行ってくるよ」
「っよよろ~」
「ありがとうヒューミリエ、いつも助かる」
人格はともかく能力は高いのだヒューミリエは。
頭の出来も僕より良い。
「ぎゅふっふす」
喜んで悶えているんだよなこれ?
「っるルーティちゃんはああ諦めるから、「巣美巣暴威スミスボーイ」のっに肉体と精神の尊厳凌辱動画希望、っここれっかカメラ、靴かポケットに入れといてね」
品性は最悪レベルだが。
「じゃあ、どう攻略するか、2階で検討してみるよ」
「うっうんっき気を付けてね」
ふらふら手を振られる。
「………」
色々疲れる相手ではあるがルーティかヒューミリエどちらに僕が近いかといえば間違いなくこいつの方と僕は同類に分別されるだろう。
僕は清廉な善人より沼地のような駄目人間の方に親しみと安心感を覚える自分に失望しながら、部屋を後にした。
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