4話 相談
一気に話したせいでルーティは疲れたのか、肩にかかる金髪をかき上げながらふうっと息を吐く。
美少女はそんな動作も様になっている。
っと見惚れている場合ではない。
「なるほど、わかりました。つまり今回の依頼は妖犯罪者に奪われたペンダントの奪還といった内容でよろしいですね?」
「はい、あれは母の形見でありどうしても取り返したいです…それに私の友達を傷つけた人たちが野放しになっているのは許せません」
大切なものを奪われ、大事な人たちを傷つけられた怒りは大きいようだ。
表情はこわばり必死な様子もうかがえる。
話してる最中は冷静に見えたが、やはり焦りはある。
「警察へは届け出ましたか?」
「それは…事情があり詳しくは説明ができないため頼れないのです。」
俯いて何かを隠したい様子が見られる。
この国の警察は腐敗が進み、妖組織と裏で手を結んでいる奴もいるから用心するのも頷ける話ではある。
それだけでなく警察も妖犯罪に対抗するための力は持っているのだが、純粋な人間が中心となる組織であり、妖にまつわる力を否定する思想が今だ根強いため、この手の犯罪は民間荒事専門業者の方が頼りとなる世相になってしまっている。
最も僕の知人で警察官になった男は嫌になるほどの人格者で正義感であるため全てが腐っているのではないのだろうが。
(国内有数の武具メーカーかつ、由緒ある家、ただ金銭的価値があるものではなく、何がしかの付加価値があるのだろう)
「探す上で必要な情報でもあるのでできれば当相談所には無理のない範囲で話していただきたいです。無論、プロとして守秘義務は守らせていただきます。」
まだ悩んでいる様子であったが、少しずつ話し始めた。
「実は…そのペンダントは母の家系で代々受け継いできた物なのですが、存在としての位を上げ妖の力を高める効果があると言われているものなのです。このことは母と私だけの秘密であり今の私の保護者である叔父もこの件については何もしりません。」
「能力向上系の道具ですか、確かに欲しがる奴は多そうですね」
能力向上系であれば自分が使っても、ブラックマーケットで売ってもおいしい。チンピラが狙ってもおかしくはないだろう。
一口に能力向上といっても物により効果はピンキリだが、これまで秘匿されてきたルーティの代々伝わる家宝が弱い効果ということはないのだろう。
しかし、市販されている道具ならともかく、由緒正しい道具が誰でも使える程、適正がある訳ではない…はずだ。
まさか、僕が戦う相手が使って超パワーアップ!!なんてないと思いたい。
僕は運がないのであまり期待はできないが。
「秘密は話せなくとも襲撃を受けたことは保護者である叔父さんには話されましたか?」
「………知ってはいると思います…でも…あまり私のことはあまり良く思っていなくて」
うーん、やはり家族関係も色々ありそうだな。
「ですから今回の依頼は会社は関係なく私個人からのものになります。」
高校生なのにしっかりしている。
「そうですか…言いづらいことを聞いてしまい申し訳ありません。」
家業や家族関係についてこれ以上、深掘りすると依頼人との関係悪化に繋がる可能性があるためここで引いておくとしよう。
話しているうちに感情が高ぶってきたのか
「とても大切な物だと言われていたのに、私はこんなに簡単に奪われてしまって…友達も巻き込んで…」
今にも泣きそうになっている。
(参ったな、こういうシチュエーションはこっちまでしんどくなってくる。)
「悪いのは貴方でなく、奪った妖犯者です。気に病むことはありませんよ」
嘘つきで誤魔化しが得意な癖にこういう時には役に立たない自分の口が恨めしい。
「…はい…」
意気消沈し、表情は暗いままだ。平和に暮らしていた一般人が襲われ傷つけられたのだメンタルは中々元には戻らないだろう。
「もうご安心を!私は今まで何度もこういった事件に関わってきました。そこらのチンピラ相手なら簡単に取り返せます!」
できうる限り明るく声を出すように努力した。
らしくもなく無理にテンション上げたせいで声が若干裏返った気もする。
こちらが泣きたくなってきた。
依頼について自分なりに整理してみる。
・放課後、リーヤタウンでの帰り路に妖犯者に襲撃を受ける。
・友達を逃がし、自分一人で立ち向かう。
・ある程度、抵抗できたがやられる。
・形見のペンダント奪われる。
・襲撃者グループは目的達成したため撤退。
・警察は頼れないため民間の相談所に依頼。
まとめるとこんな所だろうか。
妖犯者が関わる依頼はこの手の話が多いため、事前にメールで聞いていた情報からある程度は推測していたので想定の範囲内ではある。
あとは襲撃者グループの実態について把握しておきたい。
依頼から必要な情報を聞き出すことはできた。
ここから先は四凶相談所の出番だ。
(この後は流れを説明する必要があるけど…彼女が落ち着くのを待つとしよう。泣くことを止める力はないが泣き止むまで傍にいることはできる。)
そう思い彼女が泣き止むのを一人静かに待った…
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