その後
第40話 カイザー殿下視点
アリシアとジークの結婚式に出席した。
幸せそうに見つめ合う2人。
あの小さかったアリシアが花嫁か。
初めてアリシアに会ったのは王宮の庭園だったな。
『迷子か?』と声をかけてみると『お兄様が迷子なの』
涙を浮かべて真剣に兄を心配している少女。
『一緒に探してあげるよ。名前は言えるかい?』
『アリシア・ウェルス4歳』
歳までは聞いてないが、アルフレッドの妹か。
確かに同じ色だ。
アルフレッドは僕の幼馴染というやつになる。遊び相手兼側近候補だ。
歳は1つ下だが優秀なヤツだ。
何度も妹を紹介しろと言っても絶対に連れて来なかった。
不安そうなアリシアの手を引いて歩きながら『この庭園には妖精がいるんだよ。今度王宮に来たら探してごらん』ちょっとしたイタズラ心で言ってしまった。
アルフレッドの所へ連れて行くと安心したのか泣き出してしまった。
この日からアリシアは毎日王宮の庭園に来ては妖精を探すようになった。
アルフレッドに睨まれて『妖精さんは自分の国に帰ったんだよ』と言えば『じゃあ次に妖精さんが来たらアリシアに教えてね』
僕を信じて疑わない素直なアリシアに興味が湧いた。
小さくて可愛いアリシアの行動は王宮騎士にもメイド達にも人気があった。
『王宮の庭園には空飛ぶ人間がいるんだよ』アルフレッドの目を盗んで今度は誰も信じないことをアリシアに言ってみた。
次の日から庭園に寝転がって何時間も空を見ているアリシアは日に日に白い肌が焼けて小麦色になってきた。
さすがにヤバいと思った。
『空飛ぶ人間も自分の国に帰っちゃったんだよ』
『そうなの?会いたかったな~』
それからもアリシアは何を言っても信じるから、だんだん心配になってきた。
僕を見つけると笑顔で駆け寄ってくるアリシアが本当に可愛くて妹のいない僕はアルフレッドが羨ましくなった。
そんなある日アルフレッドにジークハルトを紹介された。
彼も侯爵家の子息だ。
僕の遊び相手兼側近候補かと思えば、アリシアを僕のイタズラから守るためにアルフレッドが連れてきたと言われた。
その頃からジークはアリシアを大切にしていた。
まだ幼い2人が手を繋いで庭園を歩く姿は大人たちの癒しになっていた。
その2人を覚えている王宮騎士やメイドはジークとアリシアの結婚を祝福しながらも僕に同じことを言う。
そうだよ。
僕の初恋はアリシアだ。
初めて会った日の涙ぐんだアリシアのブルーサファイアの瞳を見た瞬間から好きになっていた。
でもアリシアに気持ちを伝えてもジークには敵わなかったと思う。
それに僕はアリシアが幸せならそれでいいんだ。
ジークなら安心してアリシアを任せられる。
アリシア幸せになるんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます