第39話 最終話

結局、ナタリー様は規律の厳しい修道院に送られることになった。

公爵令嬢を殺害しようとした罪にしては軽すぎる刑ではあるが、彼女はもう彼女ではない。

兄に気絶させられて目覚めた時には前世の記憶も今世の記憶も消えてしまったていた。


何人もの医者に診てもらっても同じ診断だった。

もうナタリー様は生涯、修道院から出ることはないだろう。


どこかにいる、神様がわたくし達3人にやり直しの機会を与えてくれたのかもしれない。と思ってしまう。

それを無駄にしたからナタリー様の記憶がなくなったとしか思えない。



ナタリー様を手伝った女生徒と男子生徒は姉弟で、万引きをした姉が脅されているのに気づいた弟がナタリー様に「今回手伝えばもう二度と脅さないし、誰にも言わないわ」と言われ、小屋に姉弟で運んだそうだ。


姉弟たちの男爵家は取り潰しとなり平民になった。


そして、ナタリー様の実家、ハウゼン侯爵家のご両親はナタリー様の犯行に自ら爵位の返上を申し出た。

ご夫妻はナタリー様が入る修道院がある村で静かに生きていくそうだ。


アリサ様は転生者ではなく、単に優良物件に嫁ぐことしか考えていなかったことが判明して、わたくし達も気が抜けた。

ただ単におバカさんだったのね。

もちろんアリサ様も平民になった。

納得出来ないアリサ様は暴れて手のつけようがない状態だそうだ。




それから月日が経ち、今日はジークとわたくしの結婚式が行われた。


父は朝から大泣き、母はそんな父を諌めるのに苦労していた。

兄もイケメンが崩れるほどの号泣、その兄を支えて横にいたのがイザベラだ。

二人はこの一年で随分近づいた。

婚約の話しもでている。

わたくしもイザベラと義姉妹になれるのが楽しみだ。

ユリアは顔を合わせれば喧嘩になる4歳上の幼馴染みと来年結婚する。それでも幸せそうだ。


結婚式には二人の殿下も来てくれた。


カイトも・・・祝福してくれた。




そして今わたくしはアズール家のジークとわたくしの寝室でドキドキしながら彼を待っている。


小さなノックで入ってきたジークと目が合うとお互い照れてしまって動きがぎこちなくなる。

ジークの「やっとアリーを抱ける。愛してるよアリー」と言いながら優しいキスに緊張もとけた。

何度も愛してる。幸せにするよ。の言葉に同じだけ言葉を返す。


痛かったのは初めだけ。

そこからは何度も何時間もお互いを求め続けていた。

意識を失いそうになる頃には朝日で窓の外が明るくなっていた。

まだまだ元気なジークに「アリーもう寝ちゃうの?僕まだアリーが足りないよ」なんて言われるとバカなわたくしは、そこからも付き合ってしまった。


起きた瞬間から身体中がバキバキに痛くて(筋肉痛もあり)後悔したわ。



それでもこれからは毎朝、目が覚めても隣には愛しい旦那様がいる。

ジークの寝顔を初めて見た。

愛しくて愛しくて涙が溢れる。

「ありがとう。わたくしを愛してくれて」起こさないように小さな声で言ったのに「ありがとう。僕を愛してくれて」と返された。


それからの日々は幸せの連続だった。

毎日のように求められるのだ、妊娠もすぐに判明したの。

もちろんジークは抱きしめて喜んでくれた。


それ以上に父と兄の舞い上がり方が凄すぎた。


男の子が産まれると、毎日オモチャを持って押しかけてくる父と兄に母が出入り禁止を言い渡しても抜け出してまで会いに来る。

そこからは息子の取り合いになるのがワンセットだ。


2人目は年子で女の子、一年あけて3人目、4人目は双子の男女が産まれた。

4人産むまでにわずか5年・・・4人もいれば両親と兄とジークの取り合いはなくなった。

もう皆んなが子供たちにメロメロだ。

使用人たちまでが子供たちの世話の取り合いになっている。


今ではアズール侯爵家はたくさんの人が集まる賑やかな場所になっている。

(ジークここは愛に溢れてもう寂しい場所じゃないでしょ?)


愛しいジーク。


ありがとう。

ジークわたくし幸せだわ。



どうか前世のお父さん、お母さん、兄さんたち私がいなくなったからって悲しまないでね。



私は今、幸せですよ。




____________________


これで完結になります。


最後までお付き合いいただきありがとうございました。m(_ _)m




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る