第37話 カイト視点

生まれた時から前世の記憶があった。


僕は1番大切だった彼女を殺してしまった。


僕の軽はずみな行為で彼女の気持ちを永遠に失ったことで、自分を責め続けて夜も眠れず後悔ばかりしていた。


あの女に好意すら持っていなかったのに・・

「童貞だとあの子に呆れられるわよ。だから私が教えてあげる。」


実際興味もあって、その誘いに乗ってしまったんだ。

軽い気持ちだった。

早い奴は中学で済ませている。

僕はもう22歳だった。

友人から聞く風俗に行く感覚で関係を持ってしまった。


好きでもない女とやっても想像していたよりも全然良くなかった。

ただ経験不足が原因なのかと、あの女に誘われる度に体の関係だけは続けていた。


最初は罪悪感もあったんだ。

それが段々と性処理するだけだから大丈夫だと、何となく自分を正当化して関係を続けてしまった。


そして、言い逃れできない場面を見られた。

言い訳ばかりする僕に証拠まで揃えていた彼女の目に僕はもう写っていなかった。

何を言っても許してくれないと悟った。


それでもバカな僕はしつこく彼女に許しを乞うと追いかけ続けたが、彼女の友人に毎回追い返されていた。


こっそり彼女を陰から見ても、彼女は僕と別れたことなんか気にもしている様子もなく、いつも友人に囲まれて楽しそうに過ごしていた。


その間もあの女から「会いたい」「本当はずっと好きだったの」「あの子と別れたなら私と付き合いましょう」などLINEが一日に何度もきていた。


この女が誘ってさえこなければ、彼女と別れる事にならなかったのに!

バカな僕は自分の意志の弱さをあの女のせいにしてしまった。


もうその時には僕はおかしくなっていたのだろう。


あの女を呼び出して殺そう。

あの女がいなくなれば、彼女も戻ってくるはずだ。

そう思い込んでしまったんだ。


呼び出したのは、あの女だったのにナイフで刺したのはあの女を庇った彼女だった。

崩れ落ちる彼女と目が合った。



何も考えられなくなって、気がついた時にはあの女をメッタ刺しにしていた。

身体中から血が流れていた。


2人を殺したのに怖いとか、逃げようとかは思わなかった。


これで僕のもとに彼女が帰ってきた。

そう思ったんだ。

彼女を抱きしめながら、自分の首にナイフを突き刺した。


生まれ変わって彼女と出会えたなら、今度は絶対に裏切ったりしない。

彼女だけを愛し抜くと誓う。


薄れていく意識の中そう思ったんだ。


次に気づいた時にはカイト・ローゼンとして生まれた時だった。


そして、6歳の時にアリシアと出会った。

すぐに彼女だと気づいたんだ。

奇跡が僕たち2人の為に起きたんだと思った。


次こそは絶対に裏切らない、だからまた僕を好きになって。

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