第14話

今日の鍛錬が終わり汗を流した後、朝食を取りながら兄と話をした。


なぜか使用人達も微笑ましそうにこっちを見ている。



兄妹で恋バナをするのは今世も前世でも初めてで照れるわ~。

なんて、思いながら正直に自分の気持ちを伝えると、ジーク兄様は何年も前から思ってくれていたと教えてくれたの。

嬉しくて恥ずかしくて顔がニヨニヨしてしまう。





婚約や細かい話しは両親が帰ってきてから話し合うことに決まったの。当然よね。

話が纏まるまでは学園でも今まで通りに過ごすようにと。

最後に兄は「ジークなら幸せにしてくれるよ」と言ってくれた。周りにいたメイドたちも揃って頷いている。


いつもジーク兄様がゆっくり歩くのは長く手を繋ぎたかったからと教えてくれたの。

普段は早いくらいのスピードで歩くらしい。




学園に到着して馬車から降りるとジーク兄様が待っていた。

顔を見ただけで真っ赤になったわたくしを見てジーク兄様が「おはようアリー」と手を差し出した。「おはようございますジーク兄様」と手を繋いでゆっくり歩き出す。


兄は「皆んな見慣れてるから大丈夫か~」と

呆れた声が聞こえた。

そう。

学園でもジーク兄様に会えば手を繋ぐのは皆んながよく見る光景だと思う。

幼馴染みだと知っているからね。


いつもと違うのは、わたくしが真っ赤になっていることだけ。

今までどんな顔をしてたのか思い出せないわ。なんで平気だったの?

ジーク兄様はちょっと屈んで「意識してくれて嬉しいよ」と意地悪な顔になっている。

やめて~素敵ボイスで耳元攻撃!朝からクラクラするじゃない!


わたくしの教室まで兄と一緒に送ってもらって別れた。額へのキスも忘れずに。もちろん兄からも頭へのキスをもらったわ。

今日も周りから黄色い声が上がったわ。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ジークハルト視点


僕だけが「アリー」とアリシアを愛称で呼ぶことを許されている。



僕は両親からの愛情を知らない。

たまに顔を合わせても声すらかけられなかった。

抱きしめられたこともない。

使用人も僕の世話をする以外は話し掛けてもくれなかった。


嫌われない為に常に笑顔でいた。

今思えば常に笑っている子供なんて不気味だっただろう。

本当に心から笑ったことなんて記憶にはなかった。

殺伐とした侯爵家には僕の居場所はなかった。

ただ、僕はそこに存在するだけだ。



4歳で隣のウエルス公爵家の同じ年のアルフレッドを紹介された。

アルフレッドは根気よく僕に話し掛けてくれたけど、余計な事を言って嫌われたくなかったから笑顔で返事だけしていた。


そんな時、部屋に小さな女の子が入ってくるなり僕の頬を摘み「笑って、笑ってくれないとシア悲しい」とポロポロ綺麗な青い瞳から涙を流した。

初めて会ったばかりなのに、僕の心配をしてくれている事が嬉しいのに、どうしていいか分からなかった。


それからだ、公爵家と僕との繋がりができたのは。


アルフレッドは僕にとって何でも話せる親友と呼べる大事な存在になり。



アリシアは特別で大切な唯一の存在になった。

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