第13話

そう!決まっていたの。


今世のわたくしが意識してなかった方が不思議!

幼い頃から知っている。


彼の見た目から令嬢たちが群がっても一切相手にしないことでも有名で、キツい見た目だけどよく笑う兄とは対照的で、優しい顔立ちなのにあまり笑わないジーク兄様。

そんな彼がわたくしには甘く優しい笑顔を見せてくれる。


気づいてしまえば好きだと気持ちが溢れてくる。

前世の私と今世のわたくしが混ざらなかったとしても、きっと彼を好きだと気づくのは時間の問題だったと思う。

わたくしの中で彼ほど惹かれる存在はいないと。


結婚願望なんて無かったはずなのに、彼との未来なら簡単に想像できて笑ってしまう。


もっと彼と話さないと!

前世のことも幼い頃から気づいていたみたいだし、忘れている記憶も聞いてみたい。







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アルフレッド視点



はぁため息が出る。



鈍感なシアも漸く自分の気持ちに気づいたようだ。



ジークとは私たちが4歳の頃からの付き合いだ。

王都のウエルス邸の隣にアズール邸がある。

隣といっても敷地面積が広いため距離はある。


アズール侯爵夫妻は政略結婚だった為か、性格が合わなかっただけかは知らないが、ジークにあまり愛情をかけていなかった。

貴族らしいと言えばそうだが、使用人任せだった。


同じ年だと顔合わせの時に紹介されたジークは貼り付けた笑みを浮かべていた。


話し掛けても貼り付けた笑みで返事だけしかしないジークを心配した両親はシアに会わせた。


その頃のシアは庭園を走り回り転んでも転んでも泣きもせず、楽しくて仕方がないと小さな体で表現していた。

元気いっぱいのお転婆な女の子だった。


シアはソファに座るジークの元に行くと、いきなり頬を両手で引っ張り「笑って、笑ってくれないとシア悲しい」と泣き出した。

今までの貼り付けた笑顔からオロオロと困った顔に変化したジークはちょっとだけ笑ったんだ。


そこから両家でどんな話し合いがあったのかは知らないが、毎日我が家に通いながら私と一緒に教育を受けるようになった。


何年もかけて少しずつ、少しずつジークの表情も変わってきたが、シアに対してだけは最初から本当の笑顔を見せていた。


その頃にはジークの想いを両親も私も、邸で働く使用人たちですら気づいていたんだ。


私たちが13歳になった頃、ジークが両親に「僕にはシアが必要です。一生大事にしますから僕に下さい」と真剣にお願いした。


両親は「シアがジークのことを1人の男性として意識するまでは気持ちを伝えないこと、

誰もが認める立派な男になること、シアに好きな人ができた時は諦めること」を条件に出した。


だから、高位貴族でありながらシアには婚約者がいないんだ。

申し込みは山ほどくるが全部両親が断っている。これはシアを手離したくない父上が意気揚々と行っている。


私もジークならシアを任せられる。

あんなに女性に囲まれても1度も余所見はしなかった。

シア以外はどうでもいいと、他人には無理して笑顔を見せることもなく、一途にシアだけを思っていた。


両親が領地から帰ってきたら報告だな。

今から父上が大泣きするのが目に見える。

グズる父上を母上と一緒に説得することになるだろう。



まだ先の話だが、シアが嫁いでも隣ならいつでも会えるな。

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