第11話

何事もなく今日も一日が終わった。

兄が迎えに来るまで時間潰しに【スエット】のデザインを考えようとノートを開いた瞬間「アリー」と呼ばれた。「アリー」と呼ぶのはただ1人。振り向くとやっぱり「ジーク兄様!」わたくしの第2のお兄様ジークハルト・アズール侯爵令息が扉の所で手を振っていた。

そばに駆け寄ると「アルが当番で遅くなるから今日は僕が送っていくね」と頭を撫でながらフワッと笑う。

後ろからの黄色い声にびっくりする。


そう!ジーク兄様は兄に並ぶ程の超美形!

今世の記憶がなければ、わたくしも叫んでいたわね。


ジーク兄様は兄の親友で幼馴染。

わたくしとも幼馴染なの。

昔から優しく全てを包んでくれるような包容力のある男性なの。

キツい見た目の兄とは対照的で、優しそうな見た目、短めの水色の髪、目はタンザナイトのような青紫色。

もちろん頭脳明晰、眉目秀麗は兄と同じね。


急いで帰る支度をしてジーク兄様のもとに行くと、わたくしの鞄を流れるように持ってくれた。

そして空いている手を繋いでゆっくりと歩き出す。

2人で歩く時は手を繋ぐのが幼い頃から当たり前だったから違和感などはない。


「学年が違うとあまり会えないから一緒に帰れて嬉しい」

思ったことをそのまま口にした。

「はは じゃあもっと公爵家にも会いに行くよ」と言ってくれる。


アズール侯爵家の馬車に乗り込みお互いの近況報告などをしている間に公爵家に着いてしまった。

話し足りなくて「寄っていきませんか」と声をかけると「喜んで寄らせてもらうよ」と微笑んでくれる。


鞄をメイドにお願いして、2人でゆっくり庭園を歩く。ジーク兄様の側は心地いい。


突然ジーク兄様が立ち止まったと思ったら耳元へ顔を近づけて「アリー前世を思い出したのかい?」と優しく囁いた。

「な、なんで・・・」

「わかるよ。幼い頃からアリーを見てきたんだよ?」

優しいジーク兄様は柔らかく微笑みなが話し続ける「それに5歳くらいまでだったかな、小さなアリーは不思議なことをよく話してたんだよ?」


え?なにそれ!びっくり!!

今世の記憶にありませんが!

「それも僕の前でだけだったけどね」

ジーク兄様が真っ直ぐわたくしの目を見つめてくる。


今世のわたくしはジーク兄様を本当に、兄のように慕っていたけれど、前世のわたくしにとっては見た目も性格も、ど真ん中のドストライク!!

見つめられるだけでドキドキ心臓がうるさい。

どうしよう、バレたことよりもジーク兄様を意識してしまって、どうしたらいいのか分からない。


そっとジーク兄様を見上げる。

「アリー可愛い!やっと僕を意識してくれた?」

え?それもバレたの?

わたくしの顔はトマトのように真っ赤になっていると確信するわ!

だんだん目に涙が浮かんでくる。泣かないように口もキツく閉じてしまう。

「あ~ごめん!やっと意識してもらえて嬉しくって!泣かせるつもりはなかったんだ!」

「え?」

「ずっと好きだったんだよ?アリーに意識してもらえるまで待ってたんだよ?」


え~~!情報量が多すぎる!

わたくしの限界がきたのね。

プツっと意識が飛んだ

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