第4話
カーテンの隙間から入る日差しで早朝から目が覚めた。
部屋を見渡す。
もう!ホントすっごい部屋なのよ!
前世ではちょっとしたマンション並の広さが一人部屋なの!
恐るべし公爵家!
もちろん16年間生きてきた記憶もあるから、慌てることもないんだけどね。
リビングには本棚と机、ソファーセットが上品だけど嫌味なく揃えられている。
寝室のベッドだって、3人は寝れそうな大きさ、しかも天幕つき!
クローゼットだって、住める広さよ?
浴室だって、トイレだって、わたくしの部屋内にあるのよ?
部屋から出なくても生活できるじゃん!
何かあった時には立てこもろう。
今日と明日は学園が休み。
この世界の学園も週休二日制なのよ。
考える時間が欲しかったから前世を思い出すタイミング的にはよかったのよね。
学園生活は楽しく過ごせていたのよ。
仲のいい友人もいるし、勉強だって上位にいるわ。
そりゃ全ての人に好かれてるわけでもないわよ?
嫉妬や妬みの目を向けられることも多々あるもの。
それは高位貴族なら仕方ないことだとあまり気にしてないの。
何か言ってくることもないしね。
彼女、ナタリー・ハウゼン様だけが敵視してくるのが気になるのよね~
何かしたかしら?思い当たることってないんだけど・・・
でも、今回の階段突き飛ばしはやり過ぎよね。
今思い出してもゾッとするわ。
だって、笑顔だったのよ?下手したら死んでたのよ?
殺したいほど恨まれてるの?
せめて理由ぐらいは知りたいわよ!
前世を思い出すまでは、わたくしって高位貴族らしく嫌なことも、辛いことも微笑みで受け流してたのよね~
それが正解なのかもしれないけど、前世を思い出したからには黙って流すことなんてできないわ。
コンコン「お嬢様朝食のお時間です。」とメイドのエミリーが入ってきた。
ぱぱっと顔を洗って楽な格好に着替えさせてもらう。
食堂では既に両親と兄が揃っていた。
「おはようございます。遅くなり申し訳ございません」と礼をすると、イケメン兄が「おはよう。シア」席を立ちハグと額へのキス!そして、席までエスコート!
なんて自然なの!
毎日のことですけど!
照れるわ~!
よかった。今世の記憶があって。
食事も終わるころ父が「サロンに移動しようか。」とニッコリと誘ってきた。
ガラス張りのサロンは太陽の光が入ってきて明るく暖かい。公爵家自慢の庭園もここから
一望できるの。
テーブルを挟んで前のソファには父と母が座り、わたくしの隣には兄が座る。いつもの定位置ね。
メイドがお茶の準備を終えると部屋から出てもらった。
ん?何が始まるの?
父が「単刀直入に言うよ、アリシアの中にいる君は誰だい?」
一気に血の気が引いた。
見なくても分かる、きっと真っ青になってるはずだわ。
「え、えっと・・・なんで・・」ダメだ、上手く言葉が出ない。身体が震える。アリシアの記憶もある。大好きな家族から拒絶されたら・・
「大丈夫だよ。私たちはアリシアを愛しているから気づいただけだよ?」
「そうよ。安心して」
「大事な妹に変わりはないから正直に話していいんだよ?」
「受け入れてくれるの?嫌いにならない?」
優しい眼差しで頷いてくれた。
涙が出た。
それからは、ゆっくりゆっくりと前世を思い出した切っ掛けや、前世でのことを話していった。
22歳で殺されたことを話した時には三人とも真っ青になっていた。
なんで簡単に受け入れられたのか聞くと、父の母つまりわたくしの祖母が前世持ちらしい。
え?ちょっと待って!祖母って、え?
つい最近も休暇で領地に行った時に会ったわよね?
え?マジ?焦るんですけど!
詳しく聞くと、この国では50年に1人ぐらいの割合で前世持ちが生まれるらしい。
ただ生まれた時から記憶がある人と、突然記憶が甦る人との2種類がいて、記憶が途中で甦る人はわざわざ報告したりしないらしい。
だから実際、何人の前世持ちがいるかは不明なんだとか。
祖母に今度会った時には詳しく聞くことを決めたわ!
前世の両親の「元気でいてくれればそれでいい」には感銘を受けていたようで、わたくしにも、自由に生きていいんだよ。と言ってくれた。
また涙が出た。
「今世でお父様、お母様、お兄様に出会えてわたくしは幸せです。」と伝えた。
今世も前世も親兄弟には恵まれてよかったよ~
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