ユニコーン

@HAKUJYA

ユニコーン


夫がセカンドカーを仕入れた。


ためすがめつ、納車された車をみていると


なんだか、不穏な思いがわいてきていた。


ーなんで、こんなきれいな車があんな値段で手放されるのだろうー


破格といえるほどの改造も惜しみなく施されていた。


なにか、触りたくない。


乗りたくないという思いがわいてきていた。


嫌な思いは、はっきり私にささやいてきてもいた。


ー事故車じゃないか??ー


だが、夫が懸命にワックスをかけたり


細かなところまで点検しているのをみていると


嫌な思いを口に出すことはしなかった。


ーなにかに、のりあげているなあ。ひんじが曲がっている。きちんと修復してるけど、わずかにねー


夫がつぶやいた言葉に


嫌な思いが膨らんできていた。


ーのりあげたものは・・人間?ー


仕事から帰ってくると、一目散に車のそばに行って


なにか、変更をかけるのだろう


自動車屋さん、パーツ屋さんに


連絡を入れていた。


案の定、数日もしない内に部品が届く。


だから、いっそう、嫌な思いを持ちたくない。


ーあんなに夢中になっているんだから・・ー


なんとなく、浮かんでくる不穏な気配を打ち消してはみるものの


どうしても、車に指一本触れることが出来なかった。


触りたくない。と、自分の中の何かが恐れを沸かさせてくる。




夫の熱心な手入れに


ひとつの解決があるように思えて来ていた。


物にだって、魂・精神は宿る。


なにか恐れを感じさせる「原因」を


夫の愛情が癒し、解いてくれるんじゃないか。


そんな事を思ったのは、


やはり、どうしようもない不安と怖れを感じていたせいだったと思う。


あれだけ大切にしているなら


車にこびりついた「変な念」を浄化してしまうんじゃないか?


そう信じることで


不安ととりとめない恐れをねじ伏せようとしていたのだと思う。


だが、そんなはやりのスピリチュアルじみた説得は


なにも、役に立たなかった。




その夜。


寝入ってしばらくだったろう。


色の付いた夢を見た。


車の下の地面が おびただしい血溜りを作っている。


尋常じゃない血の多さと裏腹に


その血を流したものの存在は無かった。




目覚めてしまったまま、


ひとつの決心と結論を導き出すしかなかった。


夫の愛情だけでは、癒すこともなだめることも浄化することもできない。


これが、結論。


決心とまでいかなかったが


そんな夢を見た自分こそが、


「なんとかしてくれ」と、伝えられているということではないだろうか?


夫とは、違う方法で


もしかして 自分なら 解決出きることなのかもしれない。


だけど・・・


一体、何があったのか


それでも、「解決してくれ」というメッセージの夢だったなら


一体、どうやって 解決すればいいのだろう。




次の日は 夫の仕事も休み。


朝から やっぱり車を触っていた。


ガレージまで、朝食を伝えに行って


一端、朝食を食べてから


夫はガレージに戻っていった。


皿を洗い、洗濯・掃除を終えて


ガレージに出向いたとき


昨夜の夢が、なおさら 自分をおびえさせていた。


どうしても、車に触れない。


触りたくない。


だけど・・・


あの夢の事を思うと


なにか、解決しないと・・・


もしかしたら夫に災難が降りかかる?


夢の中に出てこなかった血を流した人物が


夫になるかもしれない。


そんな恐ろしい「何か」が車にまとわりついている。


それを感じ取って、触ることが出来ない。


だけど、夫に何かあったら・・・


と、思うと


覚悟を決めるしかなかった。


何をどうすれば良いのか判らないまま


ー判った。私が浄化するー


浄化でいいのか、さえ判らなければ


どうすれば浄化できるのかさえ判らないまま


車に自分の決心を念じながら


触ってみた。




その途端だった。


心臓が圧迫されるような息苦しさ


その場に居られず


逃げるように、2階の自室に戻っていった。


とにかく、体を休めよう。


しばらく横になっていれば治る。


と、考え


階段を上がり始めたが


まさに息たえだえ・・・


布団に横になりながら


自分の口をついてきた言葉を聞いていた。


ーふ~~ 死に目にあったー


確かにそれは自分の様子だったが


なぜか、はっきりと


車の下の血だまりの主の「思い」だと思った。




そして、ますます、苦しくなっていき


意識が薄れていった。


眠りに入り込んだのか


意識が遠のいたか判らないまま


少女の声で目が覚めた。



夢うつつの中で


少女の声が響いた。


「あ、ユニコーン!!」


少女がユニコーンを見つけた様だった。


だが、すぐに少女の声が凍り付いた。


「怖い!!」


少女の姿もユニコーンの姿も


夢うつつの中に現れず


なぜ、少女が怖いと思ったのか、


それも判らず


ただ、酷くおびえているのは判った。




ユニコーン?


その少女を慕ってユニコーンが現れたのだろう。


なのに、少女を脅かすユニコーンの姿があったということだろう。


なぜ、ユニコーンが現れたのか?


少女は誰なのか?


なぜ夢の中に現れたのか?


なぜ、恐ろしいと少女が叫んだのだろう。




そんな思いがぐるぐると渦巻いているうちに


気が付いた。


あんなに、しんどかったのに


気分は爽快。


死に目かと思ったほどの


苦しさが一切なくなっていた。




どういうことだろう。


だいたいユニコーンなんて・・・


いるものだろうか?


スピリチュアルの中では


5次元に居るということも聞いたことがある。


仮に本当に居るんだとして・・・・


なぜ、何のために現れたのか?




判らない事はネットで探してみるのが


早いと思った。


もしかして、現れた理由が判るかもしれない。




そして、ベッドの横にあるパソコンに向かい


調べてみた。




ユニコーンは処女(おとめ)に懐く。


すると、ユニコーンを導くために


なにものか、が、あの少女を夢の中に置いたのかもしれない。


実際、12~13才くらいに感じたが


そんな年齢に該当する女の子など


現実世界にはいなかった。




ユニコーンを来させるため


少女が夢の中におかれたとしても


なぜ、ユニコーンを越させる必要が有ったのだろう?


その疑問の答えもネットに出ていた。




ユニコーンは


「魔」「邪悪」「毒」なものを


あの角で浄化する。


その浄化力は強力なものである。




自分は


夢で見た車の下の血だまりの主に


あるいは、その思いに


汚染されたのではなかろうか?




今までを振り返っても


不思議と


妙なものに憑りつかれたときや


危険な状態に成った時


誰かや何かが助けに来てくれていた。


時に神道の人がふっとよって来たり


霊能力者の人だったり


あるいは、父親だったり


夫だったり


何かの教えだったり


ふと、我に返って事なきを得るということがあった。




でも、今回は


死に目に会うような毒気をあてられていても


夫はきがついていないし


自分も気が付いてなかった。




どうにもならないとなって


誰か?なにか?が、


ユニコーンを差し向けようと画策したと思われた。




おそらく・・・


少女が怖いと叫んだのは


私の毒気を浄化するときの


ユニコーンの姿が


いつも少女に懐く姿とかけ離れたものだったからではないだろうか?




そんなことを勝手に考えたくなるほど


非常に気分も体調も


打って変わってすっきりしたせいであった。




だが・・・・


自分が被った毒は浄化されたのだろうけど


車の下の血だまりの主・・あるいはその思いは


浄化されていなかった。





仕事から帰って来るとは


ガレージに飛び込んで


夕食が整うまで


連日、車を整備していた夫が


休日に試運転をかねてドライブに行こう・・と


言い出した。


一生懸命に整備していたんだもの


嫌だ・・とは言えない。


それに、


「浄化してやる」と、覚悟したのに。


そして、この前のユニコーンの事で


もしかして、


私を通過して、車が浄化されているかもしれない。


乗ってみなきゃ


判らないと思うものの


浮かない思いになる。


無理もないと思う。


触っただけで


死ぬかと思うような目にあったのだから


乗ったら、どうなる事やら。


そんな不安がある一方で


浄化する・・と覚悟したからこそ


ユニコーンが助けに来たんじゃないだろうか?


と、いう考えがわく。


夫の性格だから、そんな変な怨念じみたものは


受け付けないし


話が出来たとしても


お前が精神的に弱いんだ・・と、いうだろう。


確かに夫は平気で触っているわけだし。




強い気持ちが必要だと思うと


車の怨念じみたことを信じるか信じないかということでなく


覚悟したように


「浄化してやる」と、いう気持ちを


さらに強く持つことだと思った。




そして、いよいよ 試運転の日がやってきた。


助手席に乗って、しばらくしない内に


ふわふわと身体がういたようなしんどさを感じはじめた。




以前も、同じ状態に成ったことが有り


その時は、ネットを通して


神道の修行を修めた人がよってきて


「今、しんどいだろう


女性が憑依しているから


払ってあげる。


その女性に、思い当たるか?」


と、尋ねられた。


そして、こ1時間ほどしたら


ぐらぐらした、ぼーとして地に足がつかないようなしんどさが消えた。




そのことがあったから


「あ、これは憑依だ」と、思った。


だが・・・不思議と怖いという思いが無く


むしろ、この霊????は


この車にのりたいと思っているように思えたし


血だまりの主 つまり、この車に轢かれた人にしては


「死に目にあった」という思いだったように思う。


車や運転手を恨んでいるという思いとは違っている様だった。




例えば、車の整備をしていて、車のジャッキアップが外れたとか


運転手は息子とか血縁の愛情を寄せている人で


その人に誤って轢かれてしまい・・


「死に目にあった」と、いう位だから助かっているけど


なんらかの後遺症があって、車に乗れなくなった。


だからなのか、運転したい・・というより


この車に乗りたい と、いう気持ちの方が強いように感じた。




仮に助手席に乗る立場の人であったのなら


同じ助手席立場の私の方に憑りついてきて


何らかの思いを晴らす、昇華させようとしているとも思えた。




そして、それはまた、私を通して昇華しきれるものだから


苦しいという「毒」を浄化させて


憑依という同化を通して、昇華させられると


ユニコーンが動いたのかもしれないと思えた。




おそらくでしか考え付かないが


息子さんが、誤ってお父さんをひいてしまい


お父さんはちっとも恨んでいなかったのだろうし


車に乗せてもらうのが楽しみだったのかもしれない。


だけど、そののち、その怪我が元で(かもしれない)


亡くなったのかもしれない。


それで、息子さんは


この車を手放したのかもしれない。




そして、この車に


死に目にあったというお父さんの苦しい思いと


いつものように、横に乗ってドライブしたいという思いが


張り付いてしまったのかもしれない。




そして、


先に大きく影響を受けたのが


死に目にあったという苦しい思いで、


それを先に感じ取って嫌な感じに思えていたのだろう。


だけど、


そのままの状態で


夫に乗り続けさせてはいけない。


同じことが起きかねない。


だから、浄化するしかないと思わされたものの


苦しい思いを浄化する事なんかできないわけで


それは、まさに私にとっては


「毒」そのもの。


だけど、その「毒」をどかしてしまわないと


このお父さんの「存念」(車に乗りたい)を


叶えて、成仏してもらうことが出来なかったのではないのだろうか?




なので、


まず此方に「死に目にあう苦しさ」を渡されて


おとうさんの霊から、その思いを取り去った。


そして、


救い出させる(成仏させられる?)私であったので(決心した・覚悟した)


私が受けた「毒」を、ユニコーンが浄化しに来た。




と、なるなら


このお父さんの思いを晴らす・叶えることが


私に出来る事であり


そのために、一心同体になってしまえば


(つまり、憑依されれば・・・)


私がしている事で


お父さんの思いをかなえることが出来る。


と、言う事のように思えた。




祝日をはさんだせいもある。


1週間の間に3回も試運転に同乗することになった。


私の憑依と思われるぐらつきや眠気は


ひどいもので、助手席でうたた寝しているばかりだった。


気楽な助手席と、思われていることだろうけど


瞳の中は鮮やかな色彩が陽光に映えて、乱舞し


もしかすると、極楽の入り口で浮遊しているんじゃないかと思えた。


ドライブインでの休憩も、車からおりると


雲の上をあるいているというのは、間違いなくこんな感じだ


と、言いたくなる浮遊状態にいた。


これが、3回も続くと、


車にのりたいという思いが残って浮かばれずにいる血だまりの主ではないかという


推量はまちがっている、と、思えてきた。




相変わらず、夫は試運転の後に


車を整備していたから


次の休みも試運転になるのだろうと思っていた。




浄化は埒があかないものでしかなく


車に乗るたび ぐらぐらして


私にとっては苦痛になり始めていた。


ー今度は断わろうーと、思っているのに


私の中で、


ーえ?もう乗れないの?ーと、いう


残念な思いがかすめてきた。


ーあれ?今の思い・・私じゃないー


確かにそうだと思う。


血だまりの主は


やはり、車にのりたいのが、本当なのかもしれない。


だけど、いつまで、何回のれば


その思いが晴れるのだろう。


はてしなく、いつまでも、このまま?


ぞっとする思いがわいてきた。


むしろ、私が車に乗らなければ


血だまりの主は、私をあてにしなくなるのかもしれない


と、考えた。


それとも、なにか、目的が違うのかもしれない。


例えば、車で行ける高い山に上がりたい・・とか


だとすれば、次の目的をかなえないと


一生という言い方もおかしいが


血だまりの主は この世に一生 浮遊もしくは呪縛することになる。


それは、この先にむけて


負の遺産を残すということになるのだろうか?




迷い続けているうちに


次の休みがやってきて


やはり、私は試運転についていくことになった。


そして、


この日のドライブが


血だまりの主の次の目的を引き出すことになるとは


思ってもいなかった。


それは、夫の口から出てきた一言だったのだが


私は


血だまりの主が浄化されたあとに、


その一言の意味に気が付いた。





車が動き始めるまもなしに


私はぐらりとした幻惑の中に落ちたと判る。


そして、異様な眠気に


目を閉じれば 極彩色の陽光が瞼の中で踊り狂う。


ーもしかすると・・・これがいけない?


例えば、車の外の景色を楽しむとかしたいのが


主の思いだとしたら?ー


今の私の状態では


憑依されているーだけ。


主がドライブを楽しみたいと思っていたのなら


これでは、いつまでたっても、主の思いは叶わない。


ぐらぐらに、負けまいと目をあけて


しっかり、外を眺め始めたとき


私のぐらぐらした揺れはなりをひそめた。


私がドライブを楽しめば、それで良いんだ。


と、糸口をつかんだ気がしていた。


ところが・・・


山道のせいだろう。


カーブの多さに、夫の運転テクニック


かなりのスピードで右に左に重心がずれていく。


なんだか・・・気持ちが悪い。


それは、憑依によるものでなく


車酔いに違いなかった。


これじゃあ、ドライブを楽しめない。


それにもまして、気分が悪くなる。


ーねえ。もう少しゆっくり運転してもらえない?ー


いささか切り口上になっていたせいもあって


夫は私の状態に察しがついた。


ー酔った?じゃあ、運転替わる?ー


ーいやいや、まだ、普通の道でさえ運転したことのない車を


こんな山道で運転する自信なんかない。ー


仕方が無いと、夫はかなりスピードを落とし運転し始めた。


多少、気分が落ち着いてくると


まわりを見渡せる余裕が出てきた。


ところが、何故か、今度は


運転自体が、怖くて仕方なくなってきた。


なぜだろう?


運転していたら、怖くない。


夫の言うように、車酔いもしない。


ーねえ、今、あなたの運転が怖くてしかたないんだよねー


ゆっくり走ってくれてるのに・・なぜ?


夫は、苦笑していた様に思う。


ーそれは、車がどこに向かって行こうとしているか


見てないからだよー


運転手は車が進む方向にいつも目を向けている。


ところが、助手席の私は


あっちを見たりこっちを見たりしていた。


車がどう進むのか


どの方向に曲がるのか


を、先に気取って、体幹と重心の調整なんかしないのだから


そのうち、車に酔いだす。


そうなのかと、


運転手目線でのドライブをしてみた。


白い車線が曲がっていくから


同じように車も曲がっていく。


逆に、白い車線をみていれば


車がどう動いていくか判る。


車線が右に曲がってる。


右にハンドルを切ってゆくイメージをもつ。


今度は左。カーブが深そう・・・


隣の席で同じように疑似運転してみたら


怖いも気分悪いも吹っ飛んでしまった。


夫の言葉は、名医の如く。


ーどこに行こうとしているか


しっかりつかんでないから、怖くなるんだー


しっかり、行き先をみようとしていないから


怖くなる。


その行き先を示すものを見ようとしてなかった私だ。




助手席のドライブの仕方に


二手あるのだと思った。


景色を楽しむドライブ。


ドライバーと同じ思いで疑似運転するドライブ。




あれ?これかな、と思った。




血だまりの主は


運転手と同じ思いで


おそらく 最愛の息子さんの運転に


同じように沿った目線で


二人、同じ思いでドライブしていたんだろう。




その楽しかった思いを


もう1度味わいたい。


そういうことだったのかもしれない。




それが正解だったと判ったのは


その日の深夜だった。


夢うつつの中で


私は男の人の声を聞いた。




ーもう思い残すことは無いー




もう思い残すことは無い。


と、言った言葉に私はたずね返していた。


だって、運転手と同じように車を運転する疑似運転ドライブを


たっぷり楽しませてあげられたとは思えなかったから。


本当に満足しているのだろうか?


もう1度、今度は


運転手と同じように車を運転する疑似運転ドライブを行って


あげた方が良いのじゃないか?


そんな思いが私に沸いていた。




その考えは、あるいは主の本心が伝わって来ていたせいだったのかもしれない。




ーもう1度、最後にあの車に乗りたいー


主の声が響いた気がした。




そして、もう1週間後、私は夫の車に乗り込んだ。


流石に、ここひと月の間に何度もドライブしているから


今週はもう行かないかもしれない、と思った。


けど、


不思議だったが


行かないつもりでいた様子をみせていたのに


夫は


ーやっぱり、行こうーと、言い出した。


やっぱり・・・という言葉に


本当は行けないけど


行っておく必要がある。


と、感じ取っている様に思えた。




そして、


そのドライブが終わったあと・・・・


主の気配が


忽然と消えていた。




あっけない「さらば」は


あの夜の


「もう思い残すことはない」と


重なっていた。


なぜ、突然、思い残すことは無いと宣言しに来たのか?


けど、本心は


「もう1度乗りたい」だった。


思い残すことは無い



もう1度乗りたい



完全に矛盾している。




思いつくのは


「思い残すことがない」ことにしようと決心したということだった。


なぜ、もう1度乗りたいを叶えなくても良い決心をしたのだろう。


思い残すことは・・・


もう1度乗りたい、ということではなかったのだろうか?




あの日のドライブを私は思い返していた。


まるで、主の回答のように


夫の一言が思い返された。




ーどこに行こうとしているか


しっかりつかんでないから、怖くなるんだー




ああ、これか。


と、私は突然理解した。




主は


死んだ後にどこに行こうとしているか


しっかりつかんでなかったんだ。


だから、怖かったかもしれない。


そして、怖いと恐れる所に行くよりも


ドライブでいえば


外の景色を見ていたかったのだろう。


その「外の景色」は


死に目にあったという恐怖の後ろに有った


(たぶん)息子さんとの楽しいドライブ


同じように運転している気分を味わえる疑似運転のドライブだったのだろう。




ーどこに行こうとしているか


しっかりつかんでないから、怖くなるんだー


と、いう言葉に主は


もう天国にあがらなきゃと気が付いたんじゃなかろうか。


違うところにいくことを恐れて


何処に行こうとしているか


道しるべになる物をみるより


疑似運転のドライブの楽しかった「思いの世界」に行こうとしたのかもしれない。




ーそういうことかあ・・・ー


夫の何気ない一言で


主は気が付いた。


もう恐れる事はない。


天国までの白い車線を道しるべにすればよい。


だから、


思い残すことは無い。


ー知らぬ所へ行く怖さはもうなくなったー


ーここにとどまる理由がなくなったー


と、告げに来たのだろう。




不思議な事が起きたけど


何よりも不思議だったのが


ユニコーンだった。




そのユニコーンや少女は


もしかしたら


主の守り神だったのかもしれない。




主を助けたい


浮かばせたいと


必死になったユニコーンと少女だったのかも。




そして、


本当に導いたのは


夫の一言かもしれない。




そんな夫の一言を導き出すために


彼らは動いたのかもしれない。




それ以後


ユニコーンも少女も現れていない。


そして、私は


きっと、ずっと、これからもドライブ三昧だろうね。


    おわり






実際におきたことを、設定をかえて

憂生 →奧さん

オーナー →夫

マイカー →セカンドカー 

と、して、書いています。


いろいろ、不思議なことがおきる人なのですが、

これも

「物」(MONO)と考え

物書きとして、「物」を書き留めておこうと思いました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ユニコーン @HAKUJYA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ