1ヶ月の夏休み

風邪

1ヶ月の夏休み

「早く起きなさーい!」

「うう~ん、起きるよぉ~」

 お母さんが朝からうるさい。ていうか、まだ日も昇りかけてんじゃん!何時だよ!

 目覚まし時計を確認する。・・・5:00?・・・・・・朝5時!?早っ!?なんで5時なんだよ。

 とりあえずカーテンをあけると流石の真夏でも日は完全に昇ってはない。セミがものすごくうるさくて思わずベッドからはなれる。

 とはいえ、こんなに早く起きるとは思わなかった。予定ーといわれてもそこまで予定という予定はないが、狂いまくりだ。夏休みの初日ぐらいゆっくり寝させろや。1ヶ月もあんのに!

「早く宿題やりなさい。数学早めにやりなさいよ?」

「うう。はあい。。」

 初日から宿題チラツかせんなや。はあ、、せっかくの夏休みなのになあ。。。初日から台無しじゃんかよ。



 ※※※


「早く起きなさーい!」

「・・・は?」

「何ぼーっとしてんのよ。朝よ。早く起きなさい。」

 え?理解が追いつかん。え?どーゆーこと?え?え?え?

「宿題もあるんでしょ?」

「え、あ、う、うん。あるよ?」

「ふっ、何で疑問系で返すのよ。」

 お母さんが一人笑っている中、私は状況を飲み込もうと一生懸命考えた。でも、分からない。たぶんこれってタイムリープ的な何かなんでしょうけど。でも私全力ダッシュしてないよ?思いっきり飛んでないよ?そんなことを考えているとお母さんが不思議そうにこっちを見る。

「大丈夫?」

「あ、うん。」

 嘘だ。本当は大丈夫じゃない。意味わかんない。お母さんは「それなら良かった。」とリビングに戻った。

 何これ、サイアク。初日から台無しじゃんかよぉ。



 ※※※


「早く起きなさーい!」

「起きてる。」

「あら、珍しい。」

 分かりました。これ、タイムリープです。たぶん、私がお母さんに起こされた時に思ったのと、このタイムリープの意味わかんない時の、

『初日から台無しじゃんかよ。』

 が、タイムリープ発動条件っぽい。どゆこと?

 まあ、動いた方がきっといろいろ分かるし起きるか。



「いただきます。」

 1人でテレビを見ながら朝ご飯を食べる。ついでに状況整理。

 ・まず、発動条件はさっき言った「初日から台無しじゃんかよ。」。なんだそれ。

 ・そして必ず戻ったときは、お母さんが起こしに来てくれたところから。

 ・自分と自分がした行動だけが動かない。

 と、ここまでしかまだ分かっていない。今日一日はとりあえずネガティブ禁止。あと、情報収集。

 朝ご飯のそうめんを半分まで食べると、妹が降りて来る。

「姉ちゃん聞いて。」

「何」

「せっかくの夏休みなのに初日から台無しじゃん。っておもったら、タイムリープしてしもうた!」

「あんたも!?」

「もしかして姉ちゃんも!?」

 思わずそうめんをこぼしそうになる。タイムリーパーが2人も!?えぐ。

 でも何で?その理由を妹と考えた。

「姉ちゃんにとって最後の夏休みじゃん?だから神様が受験まで遊べって言ってんのかな。」

「うーん。そうかなあ。」

「姉ちゃん、受験受かんなそうじゃん。だから今だけ夢見せてんだよ。」

「うっせ。」

 この機会を機に、変なことを言っている妹の頭を殴る。受験には意地でも受かる。

「ていうか、それだったらあんたまでタイムリープしなくてよくない?」

「神様は私には優しいんだよ。授業も予習復習してるし。」

「・・・だったら、私が宿題すれば戻んのかな。」

「やってみる価値はあるね。。。」

 宿題・・・あんまり好きな響きじゃないな…。でもタイムリープから脱出するにはやるしかないかあ。



 ※※※



「うーん…」

「もしかして姉ちゃん、そこ分かんないの!?私もう習ったよ!?」

「え?そんなに前だったかなあ・・・」

「やばいよ姉ちゃん!やっぱ受かんないよ!」

「うぐぅ・・・」

 やばいやばいやばい!受からないかな!?私!?妹、今中1だよ?さすがにちゃんと・・・やってないなあ…。やらなきゃ!

「ここはこうしてXを代入する。ここまでOK?」

「うーん…無理。」

 中1の数学ってこんなに難しかったっけ?やめやめ!次国語だ!



「これなんて読む?」

「『ぞう』だけど・・・え?読めないの!?」

「は?読めるし…」

 読めねえ…どうしよう…。

「古典?何それ?」

「え?それも習ったよ!?」

 これもかあ…無理だよお。

 こんなの・・・初日から最悪じゃん。・・・あ。

「やばい。思ちゃった・・・!」

「ちょ!は?姉ちゃん!?」

「・・・あれ?タイムリープしない?」

「ほんとだ。何で?」

『リリリッリリリッリリリッ!』

「何この音?」

「セミじゃないよね…」

『リリリッリリリッリリリッ!』

 怖い…何?私は妹とお互いを握りしめる。

『リリリッリリリッリリリッ!』

「「何なのー!?」」



 ※※※



「早く起きなさーい!目覚ましはなんのためにあんのよ!」

 私は勢いよく起きる。あれ?また、タイムリープ?

「何してんの?」

「ふぁえ?」

「ぷはっ!何?あはは!」

 いや、話が分かるやつ・・・妹連れてこい!ドタバタと起き上がり妹の部屋に行く。

「ふぁえ?姉ちゃん…なにぃ?」

「あんた、一緒にタイムリープしたよね?」

「は?何言ってんの?姉ちゃんおかしくなった?」

「なってない…じゃあ脱出成功…ってこと!?」




 おっと。ここで油断してはいけない。せっかく最後の夏休みなのに。





「ま、とりあえず宿題やるか。」

 一人ぼそっとつぶやく。あんまり難しいやつじゃ無いといいな…何やろうかな。数学は難しいから最初にやろうかな。

 青春したいなあ。私は1人考える。





 私の1ヶ月もの夏休みははじまったばかりなのだから。









 





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1ヶ月の夏休み 風邪 @Kaze0223

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