マンツーマンだなんて聞いてない
放課後になり、やって来ました帝立学院の中庭のテラス。
ここでエレオノーラ主催のお茶会が開催される予定になっており、しつこくまとわりつくオフィーリアを振り切ってきましたとも。
というか、なんで放課後までオフィーリアの剣術の稽古に付き合わなくちゃいけないんだよ。身体がいくつあってももたないよ。
「それにしても……」
もうすぐ約束の時間だというのに、テラスに向かおうとする令嬢の姿が見当たらない。
最初に誰か来てくれないと、僕が行きづらいんだけど。
いやほら、大学のコンパとかそういう集まりの時って、一番に来ちゃうとまるで張り切っているみたいに思われて嫌じゃない?
それに、次に来た人と二人っきりになった時、相手が知らない人だったらメッチャ気まずいよね。
……喪男だし前世ではコンパに誘われたこともなかったから、よく分からないけど。
でも、きっとそうに違いない。多分。
ということで、僕とイルゼはテラスの席へと向かわず、ひたすら様子を
「? 何をなさっているのですか?」
「エ、エレオノーラ会長!?」
突然後ろから声をかけられ、思わず驚いてしまう。
だけど、イルゼは一切動じている様子はないから、さすがだと思う。僕とは大違いだ。
「い、いえその……まだ誰もいらっしゃらないようでしたので、ひょっとしたら場所を間違えたのかな、と……」
「ウフフ、こちらで合っておりますよ。ただ、お茶会はルートヴィヒ殿下と私の二人だけですが」
「え……?」
まさかのマンツーマンだった。
いやいやいやいや、急にハードル爆上がりなんだけど。
たまらず僕は、イルゼへと視線を向ける。
僕じゃ絶対に会話にならないと思うから、お願いだから助けてね?
「本日は是非とも殿下と二人きりでお茶を楽しみたいので、従者のあなたには席を外れていただいても?」
「…………………………」
おうふ……イルゼを
そもそも、その提案ではお茶を楽しむどころか、絶対に僕を誘ったことを後悔すると思うよ? つまらないし。
「エ、エレオノーラ会長、イルゼは僕の大切なパートナーですし、彼女の言葉は僕の言葉でもあります。なので、どうか彼女の同席をお許しください」
「で、ですが……」
「お願いします!」
深々と頭を下げ、エレオノーラに懇願する。
だって、僕なんかが二人きりでお茶会なんてしたら、絶対に地雷ワードの連発でバッドエンドのフラグ立てまくりだろうし。
……いや、むしろ今日の出来事があったからこそ、エレオノーラは反乱しようと心に決めた可能性だってあるかも。
「ふう……仕方ありませんね」
「! あ、ありがとうございます!」
こめかみを押さえながら、やれやれとかぶりを振るエレオノーラ。
僕は最大限の感謝を込め、もう一度お辞儀をしましたとも。
「ルイ様……こんな私のために……」
「違うよイルゼ、これは僕がそうしたいからしただけだから」
そうとも。君が隣にいてくれるだけで、僕のメンタルは救われるんだ。
だから、女子トークは君に任せてもいいかな?
耳まで真っ赤になったイルゼをエスコートし、エレオノーラの後に続いてテラス席に座った。
「……ルートヴィヒ殿下は舞踏会でおっしゃったとおり、その従者をとても大切になさっているのですね」
「あはは……はい。僕にとって、かけがえのない
いやあ、もしイルゼがいなかったら、僕は絶対に“醜いオーク”の姿のまま引きこもっていたと思うね。
何より、今の痩せた姿でいられるのも、イルゼが親身になって鍛えてくれたおかげだし。
本当に、感謝してもしきれない。
「そうですか……」
「それが何か?」
視線をテーブルへと落とすエレオノーラを不思議に思い、尋ねてみる。
それで、どうしてイルゼは席に着いてからずっと、僕を凝視しているのかな。何かお茶会のマナー違反でもしたのかな……そんなことないよね?
「本日ルートヴィヒ殿下をお招きしたのは、他でもありません。実は、お誘いしたいことがあったのです」
「お誘い、ですか……?」
エレオノーラは、ゆっくりと頷くけど……嫌な予感しかしない。
これ、絶対に面倒事のような気が……。
「この帝立学院に、いくつかのサロンがあることはご存知ですか?」
「サロン……?」
「帝立学院では、生徒同士で
聞きなれないワードが出てきたのでイルゼを見ると、彼女が簡潔に説明してくれた。
ふうん……つまり、クラブ活動みたいなものかな。
「私が主催するサロン……『エヴォルシオン』では、現在の帝国のあり方について、次代を担う学院の生徒達によって
「へ、へえー……」
相槌を打ったものの……これ、やばくない?
だって『エヴォルシオン』って、進化とか発展っていう意味だよね。
先頭にアルファベットの『R』をつけたら
「殿下」
「は、はい!」
「今のバルトベルク帝国について、どう思われますか?」
エレオノーラの問いかけに、僕は一瞬言葉に詰まった。
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