実り多き樹の国
仲仁へび(旧:離久)
第1話
実りの多い巨大な木。
天に届きそうな大樹の周りに国ができていた。
実りの力で発展していく国。
その国の人々は、自分達の生活を支えてくれる大樹に感謝しながら過ごしていた。
樹の国。
国のどこからでも、巨大な木を眺める事ができるそこに、一人の少年がいた。
少年は巫女の護衛。
木の声を聞く事ができる少女「樹の巫女」を守る役目をになっていた。
「樹の巫女」は護衛である少年を信頼していた。
少年は、いつもどんな時でも「樹の巫女」を守っていたからだ。
しかしある日、「樹の巫女」は不思議な力で未来をみた。
木が枯れてしまうという未来だ。
そんな事をさせてはならない、と「樹の巫女」は未来を回避しようとする。
原因は、木にたよらずに国を発展させようと考えている者達だ。
「水晶科学」と呼ばれるものに頼るその者達は、不思議な力を秘めた水晶を利用する。
しかし、その水晶は何かの生命力を使わなければならなかった。
だからその者達は、木の莫大な生命力を使おうと考えていた。
「樹の巫女」達は、「水晶科学」を広めようとするもの達に抵抗し、抗った。
信頼できる仲間を集めて、武器を手にした。
しかし、力及ばずに負けてしまう。
何かを犠牲にしてでも豊かになりたいと思う者たちは、予想以上に多かった。
「樹の巫女」は枯れていく大樹から種子を受け取って、その国から離れなければならなくなった。
そして、護衛の少年とともに彼方にある、枯れ地に移り住み、そこでほそぼそとした生活を送りながら、種子を育てた。
やがて、時代が変わり、「水晶科学」の力で、世界が繁栄していっても。
二人は貧しいながらに、そこそこの生活と、小さな幸せを積み重ねて人生をまっとうした。
種子の世話はのちの子孫が引き継いでいった。
やがて、「水晶科学」の繁栄は終わる。
使用できる生命力がなくなっていったからだ。
エネルギーの枯渇によって、世界中の人々はみるみる生活がなりたたなくなり、数を減らしていった。
しかし、辺境にあるかつての枯れ地、新しい第二の樹の国は、多くの実りで潤ったままだった。
実り多き樹の国 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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