変わってしまったこの世界から、

影神

変貌



久しぶりに。



静かな朝が訪れた。



いつも鳴るはずのアラームも。


遠くで微かに聞こえる電車の音も。



それはまるで、遥か遠い昔話かの様に、、



あの日から。


私達の世界の全てが変わった。



当たり前の様に慣れ親しんだ一切の音を。



あの騒がしかった雑音もまでが。



2度と。私達の耳にする事はなくなったのだった。。



代わりに聞こえて来るのは、



男性1「ぁああああ!!!」


男性2「鬼だぁあああ」


女性1「ぃやぁああああああ」



人間達の悲鳴だった。



この世界は、3種類のモノになった。



いや、、まだ。


この世界には、他の生物も居るのだろう、、


雀や、鴉は、久しく見ていない。


だから本当は、誰のモノでもないのかも知れないが。



きっと。"鬼"が食べてしまった、、


私の頭に過るのはそれだけだった。



あの日から、通称"鬼"と呼ばれる、


絵本の中から飛び出して来た様な、


真っ赤な顔をした角の生えた鬼と。



鉛筆で書いた、誰かの落書きの様な人間の形をした。


通称"影"と呼ばれる者達。



そして、最後に。


私達"人間"で溢れた。



鬼。アカオニは、私達人間を食べる。


隠れても、必ず。


アカオニには見付かってしまう。



影。クロカゲは、何もしては来ないが、


ただじっと。


私達を静かに見つめている。



アカオニは、クロカゲを見る事が出来ない。


私達人間で腹を満たすだけ、、



たまにクロカゲが見えるアカオニが稀に居る様だが。


アカオニはクロカゲに触れる事すら出来ない。



クロカゲはそこに居る様で、居ないかの様に。


アカオニの手は、煙の中を通るかの様にして、


クロカゲの身体の中を過ぎてゆく。



クロカゲは人間と同じ様にして、集まって。


ただ立ち止まって1日を過ごして居る。



私達が近くに居ると、必ず私達を見つめている。



繰り返すが、彼等は何の危害も加えては来ないが。


彼等は私達の味方でもないのだ。



そんな世界で。


私達人間は、各々の小さな集まりを作って。


互いに支え合って。



共に生きて来た、、



女性2「女は足りてるよ。


よそに行っておくれ、、」



この世界では。


アカオニと戦う戦力にならない女は、


あまり歓迎されない。



今日という日を生き延びる事が、


明日を迎えられる『切符』なのだから、、



子孫なんてモノは、当然。


必要が無いのだ。



今大切なのは、自分が今日を生きられるかという事のみ。。



人間が生きていく為には、アカオニと戦い。


生き残らなくてはならない。



山や海へ行けば。


野菜や、果物が手に入るだろう。。



だが。


視界の悪い場所は、



アカオニの絶好の狩場となっている。



しかしアカオニは、倒すべき相手でもあり。


人間達の食糧でもあるのだ、、



こうして、新しい世界で。


異なる者達が共存する世界へと。


変貌したのだった。



『今日を生き延びろ。。



さすれば、明日が迎えに来る。』

















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