空を飛ぶ夢
クボタ ヨシミ
夢の中での出来事
空を飛ぶ夢を見た。
青く広がる空と色彩豊かな地上の隙間を滑るように進んでいく。
風に揺れる森や草原を過ぎ、静かにたたずむ山々を超え、波歌う海を眺めながら
見知らぬ街の上を抜けていく。
そういった景色たちによって僕の存在は、この世界に浮かび上がっているようだった。
しばらく飛んでいると、いつの間にか1羽の大きなカラスが隣を飛んでいるのに気が付いた。ゆっくり羽ばたきながら無表情で飛んでいる彼——もしくは彼女——はどこか悲しげで、そして怒っているようにも見えた。僕がなんと声をかけようか考えていると、彼——もしくは彼女——のほうが先に口を開いた。
くちばしをカチカチ鳴らしてこう言った。
「この先に行くと雲が見えてくる。大きくて優しい雲だ。お前は吸い込まれて、上も下も分からなくなり道を失うだろう」
抑揚の無いしゃがれ声だ。
「何か目印のような物はあるのでしょうか?」
僕は恐る恐る聞く。
「さぁね。私にはわからないよ。なんせ私はほら、カラスだから」
そう言うと彼はシャボン玉になって消えてしまった。
やがて巨大な雲が現れた。初めは小さな雲だと思っていたものが、近づくにつれ大きくなり、目の前に来た頃には、白い滝が世界を分断しているようだった。僕はその滝の世界に身を沈めていく。
中は完全な白の世界だった。その他の色には居場所がないのだ。
そして僕も自分がどこにいるのか分からなくなっていた。完全な白は方向感覚も吸い込んでしまうようだ。しかし不思議と不安や恐怖はなく、むしろ安心感のようなものに満たされていた。このままこの世界の白となっても良いとさえ思えた。静かに目を閉じる。すると何か暖かいものが僕の体を包んだ。
目を開けると僕は女性に抱かれていた。一糸まとわぬ彼女の素肌は白く柔らかく、まるで雲の精霊だ。彼女は何か囁いている。しかし殆ど聴こえない。白の渦に飲まれている。
瞬間、辺りが暗闇に変わり、彼女も離れて行った。深い穴に落ちていく彼女の後ろから炎が上がり、彼女を包み、そして僕を――。
空を飛ぶ夢 クボタ ヨシミ @z_zinbutu0443
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