第31話 3.がとーしょこら色の思い出(3)
そこまで考えて、ある答えに辿り着くと思わず叫ぶ。
「やばいじゃんっ!!」
突然の僕の声にビックリしたのか、小鬼は目をパチクリとしながらその場でピョンと飛び跳ねた。
「ど、どうしたんですか〜? 古森さん〜?」
「ねぇ! やばいじゃん!!」
「だから、どうしたんですか〜?」
「だって、あと五時間の間にプログラムを終了しないと、最恐レベル行きなんじゃないの? もしかしてっ?」
僕の言葉に、小鬼は瞬時に呆れ顔になる。
「もう〜。時間のことはあまり参考にはならないって言いましたよね? きちんと聞いていましたか〜?」
小鬼ののんびりとした声と態度に、僕は少し苛立つ。
まるで他人事じゃないか。いや、他人事なのだが。
「僕は最恐レベル行きを回避するために、このプログラムを受けているんだ! これが期間内に終わらなかったら意味ないじゃないか!!」
僕は体中に渦巻く焦りを早口に吐き出す。
「古森さん〜。少し落ち着きましょう〜」
小鬼は、僕を宥めようと声を掛けてくる。
「落ち着いてなんかいられないよ! 確か、このプログラムは五日間の予定だよね? 君たちの時間では一日分が終わったようだけど、あと五時間で四日分の予定が終わるの? ねぇ? 僕は間に合うの?」
僕が自分の中の焦りを怒涛のように吐き出し続けていると、小鬼は僕のそばへとやってきて右膝をペシっと叩いた。
「痛っ。何するんだよ!!」
「ちょっと落ち着いてください〜。」
「時間がないのに、落ち着いてなんていられないよ!!」
「まぁ、とにかく、座って座って〜」
そう言いながら小鬼はベッドの向かいに設置された机に向かうと、自分よりも大きな椅子を引き出した。
椅子の脚に手を掛けて、満面の笑顔で小鬼は待っている。
僕は渋々小鬼のそばへ行き、椅子に腰掛ける。そんな僕の様子を見届けてから、小鬼は僕のそばを離れた。
しばらくして、手に小さな白いカップを持って戻ってきた。
「古森さん〜。コチラをどうぞ〜」
手渡されたカップには、七色に揺らめく液体がなみなみと注がれていた。カップからは金木犀から漂うような甘い香りがしている。ここへ来たばかりの時に口にした冥界区限定のリラックス効果の高い飲むサプリのようだ。
「これは、例のリラックスサプリ?」
「そうです〜。お見受けしたところ、古森さんは随分と心が乱れているようですので、まずは一口飲んでください〜」
僕は小鬼の笑顔とカップから漂う香りに誘われて、不思議な液体をコクリと一口分口に含んだ。
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