詩のかけら — 桐生 八

筑駒文藝部

詩のかけら

 確かにそう、そうなんだ

 それの中では、

 確かに世界があって

 自分は何かをしようと、何かを求めようとしてた

 でもそれは、

 突然ふと消えちゃうんだ


 歩いていると、左の文が、雨上がりの路上に落ちていた。「人間」とぶっきらぼうに書かれている。


 まるで燦然と輝く満天の星の下に居ながらにして

 どうしても星をつかめないような虚しさは

 一瞬の内にこみ上げ、そしてすぐに消えてしまう

 どうしてここまで儚く感じつつも複雑な思いを抱くのだろうか

 どうして人は日々の生活に慣れると、自然と感情の起伏を

 減じてゆくのか

 それは人の強みであり、悲しみだ


 私たちは情報に左右されやすい

 活字の並ぶ世界では、全ての情報は同一平面上だ

 本来見る価値のないものも、名文も、ごちゃ混ぜになっている

 なんて悲しいんだろう

 とは、みんな思わない

 

 欺瞞は醜いと思っている

 でも残念なことに、大気を通して見るウソの星空は美しい

 

 といっても

 都会に住む私たちは、そのウソの星空を、これまた想像した星空を美しいと思うのだ


 ウソのウソははたして何なのだろうか

 何と形容すべきだろうか

 そんな得体のしれないホシゾラに憧憬の念を抱く私たちは

 愚かしいのだろうか

 人は嘘を嘘であると見抜けないと、本当に生きるのが難しいのか

 こんなふうに悲観的に言葉を並べるのは、卑屈だし、第一紙の

 無駄だと言われよう


 私たちは神を信じた、今も信じる人はいる。

 しかし、自然は恐れない

 不思議なことである

 どちらにも敵うはずがないというのに


 私はまた歩き出した。

 不思議なことに、もう詩のことは忘れていた。

 どうでもよかったのだ。


 ワタシはただ、夢が何だったのかを求めている。

 夢 そう、確かにあった夢を……

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