第73話 明らかになるアキラさん

 アキラさんから連絡をもらい……俺は急遽、都内まで出かける。


 池袋で降りたら、googleで調べながら指定の店を探す。


「えっと、ここか?」


 裏道を通り、何やらレトロな雰囲気の喫茶店にたどり着く。


「サカモト……店の名前もあってる。よし、入るとするか」


 俺みたいな子供には少し入りづらいが、とりあえず入ってみると……。


「いらっしゃいませ」


「こ、こんにちは」


 白髪で背中がピシッと伸びたお爺さんが出迎えてくれる。


 なんというか、小説に出てきそうだ。


 如何にもな、喫茶店のマスターって感じだし。


「お一人様ですかな?」


「い、いえ、待ち合わせをしてまして……アキラさんっていうんですけど」


「なるほど、アキラ様のお連れ様でしたか。あちらの奥の個室で、アキラさんがお待ちです。左側の扉を開けてください」


 店内を見回すと、オープンの座席がいくつかあり、奥の方にはドアが二つある。


 なんで、喫茶店で個室があるんだろう?


「は、はい、ありがとうございます」


 とりあえず、奥にある扉に向かい、ドアを開けると……。


「……あれ? す、すいません! 間違えました!」


 そこには、綺麗な女性がいた。


 セミロングの黒髪に、ピシッとした黒いスーツ姿。


 眼鏡もかけて、いかにも出来るお姉さんって感じだ。


「いや、間違えてないよ、天馬君」


「へっ?」


「私がアキラだ」


「……へっ? ア、アキラさん? じょ、じょ、女性の方だったんですか?」


 我ながら、急に情けない声が漏れる。


 コミュ障の俺、ひさびさにテンパってます。


いや、確かに声はハスキーだなって思ってたけど……。


「ああ、言ってなかったね。まあ、とりあえずは席についてくれ。話はそれからだ」


「は、はい」


 ひとまず、アキラさんの反対側の席に座る。


 そして、改めてアキラさんを見る。


 烏の濡れ羽色のような傷みのない黒髪。


 目にかかる髪、理知的で切れ長の目。


 鼻筋も通っており、顔自体が小さい。


 まさしく『the美女』って感じだ。


「さて、まずは謝っておこう。まずは、急に呼び出してすまない。この間話した通り、一度会わないかと言っただろう? もう少し先かと思っていたんだが、急遽仕事で都内に呼ばれてな……一応、連絡してみたって感じなのだよ」


「い、いえ、それ自体は別に……」


 い、いかん、変な汗が出てくる。


 だ、男性だと思ってたから。


「ふむ……少し早かったか? いや、それについてもすまない。別に騙していたつもりはないんだ。私はこの通り、声が低い。しかし、一言も男性だと言った覚えはない。まあ、君が女性が苦手と言ってきたから、言わない方が良いかと思ったが」


「……それは確かに」


 勝手に、俺が勘違いしてただけだし。


 アキラさんは、何も悪くないよなぁ……俺が変なこと言ったからだし。


 ……それよりも、俺の態度が失礼だ。


 相手は俺の師匠で、恩人でもあるのだから。


 俺は気持ちを切り替えて、改めてアキラさんと向き合うのだった。














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