第71話 ヒロイン視点

 ……どうしよう、電話しちゃった。


 お母さんも仕事で、桜は家族と出かけるって聞いてたから……。


 おじいちゃんとおばあちゃんも、今日は遠出するって言ってたし……。


 私が休みだから、安心して出かけられるって……なのに、風邪をひくなんて。


「拓也と恵梨香が出かけるまでは、平気だったのに……」


 その後から、急に寒気と頭痛がして……。


 少し疲れたかなって思って、横になったら……動けなくなっちゃったし。


「野崎君……きてくれるかな?」


 お母さんとか桜が来れないのはわかってたけど……一番最初に浮かんできたのが野崎君だった。


 そんなに頼りになるって感じじゃないんだけど……なんか、顔が見たくなっちゃったんだよね。


 ……そんなことを考えてると、意識がなくなってくる。







 ……あれ? 私、どうしたんだろ?


「あら、起きた?」


「……お母さん?」


 目の前には、お母さんがいた。


「もう、あなたって子は……こんな時くらいは電話しなさい。お母さん、仕事を休むから大丈夫よ……うん、とりあえず熱は下がってるわね」


 ……あれ? そうだ、どうしてお母さんがここに……。


 スマホを確認すると、まだお昼の一時だった。


「あ、あれ? まだ一時だよ? どうしているの?」


「あら? 何も覚えてないの?」


 そして、お母さんに説明される。


 私が野崎君を呼んだこと、そこからお母さんに連絡がいったことなど。


「……そうだ、私は野崎君に電話しちゃって」


 ……思い出してきた。


 意識が朦朧としてたけど、確か玄関を開けて……。


「……へっ?」


 あれ? 私、どんな格好出てた?


 改めて、自分の格好を確認すると……ピンクのパジャマ姿だった。


 しかも、一番上のボタンが開いてる……?


「あいてる……? っ〜!!」


 この格好で野崎君の前に出たの!?


「大丈夫よ、何かするような男の子じゃないでしょ?」


「わ、わかってるし……そういうことじゃなくて」


 は、恥ずかしいし……メイクもしてないし、髪もボサボサだし……。


「ふふ、わかってるわよ。好きな男の子に見られて恥ずかしいのよね?」


「な、な、なっ……」


「はいはい、起き上がらないの。幸い熱も下がったし、今日はゆっくりしてなさい。明日も具合悪かったら、病院に行きましょう」


「そ、それより……なんでわかったの?」


「そんなのわかるわよ。一応、あなたの母親ですもの。それに、弱った時に呼ぶ人ってことは、そういうことでしょ?」


「……うん、多分……好きなんだと思う」


 そう言葉にすると、再び身体が熱くなってくる。


「ふふ、この辺にしときましょうね。また熱が上がっちゃうから」


 私は布団に潜り込んで、顔を見られないようにする。


 ……次、どんな顔して会えば良いのかな?

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