第58話 カラオケ終わりに

 その後、あっという間に時間が過ぎ……。


 プルルっと、電話の鳴る音がする。


「ん?」


「あっ、もうそんな時間? これは、終了五分前の電話だよ」


 そう言い、葉月が受話器をとる。


「はい……ええ……野崎くん、延長する?」


「いや、いいかな」


「了解。では、これで終わりでお願いします」


 そう言い、受話器を置く。


「全然時間見てなかったし」


「俺もだ。一時間ってあっという間なんだな」


「まあ、普通は二時間くらいは歌うから。今回はワンドリンク制だったけど、普通は飲み放題だし」


「そういえば、入り口近くにドリンクバーあったな」


「その……どうする? またくる?」


 どうだろう? 正直言って、歌うのは悪くはなかった。


 ただ、女子というか……葉月と2人でいるのは心臓に悪い気がする。


 でも、楽しくもあり……難しい。


 いや、これこそがラブコメというやつなのでは?


「葉月さえ良ければ、たまになら……」


「ほんと? じゃあ、今度は飲み放題のコースにするね」


「カラオケ好きなのか?」


「へっ? な、なんで?」


「いや、妙に嬉しそうだから」


 何やら、ニマニマしている。


 もしかして、俺の歌う様が面白かったのか?


「ま、まあ、カラオケは好きだし……ほら、学生割引だからすっごい安いし。とりあえず、次に行こー! ほら! 五分過ぎちゃったら延長料金取られちゃうから!」


「ああ、それはまずいな」


 俺もスマホや荷物をしまい、出て行く準備をするのだった。


もちろん、葉月が出そうとしたが、俺が全額払いました。


……流石に、それくらいカッコつけないと。





 ◇


 何とか動揺を抑えつつ、無事にカラオケを終える。


 私は会計を済ませつつも、心の中は先程のカラオケのことでいっぱいだ。


 ……なになに!?


 どうして歌が上手いのよ!


 いや、別に下手じゃなきゃいけないってわけじゃないけど。


 あの感じで歌が上手いのは反則じゃない?


 カラオケ中はびっくりしすぎて流してしまったけど……。


 終わった今、さっきまでの興奮が押し寄せてくる。


「なあ」


「な、なに?」


 だ、だめ……動揺が抑えられない。


「このあとは、どうするんだ?」


「な、なにが?」


「いや、だから……ゲーセンに行くんじゃないのか?」


「行くに決まってるし」


「いや、会計も終わったのに……さっきから動かんし」


「何処のゲーセンに行くか考えてただけだし」


「そ、そうか」


 もう! 何なのよ!


 自分の言葉遣いが変! なんか、棘がある感じになってる!


 野崎君も困ってるし!


 ……でも、それくらい破壊力があった。


 高いキーは完璧だし、リズムも音程もいいし。


 何より、声が私好みだったし……はっきり言って、めちゃくちゃかっこよかった。


 まあ、私が野崎君を好きだからかもしれないけどね。


 とりあえず、みんなには内緒にしないと……私以外と行かせないように。

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