第41話 ヒロイン視点

 うーん……どうしよう?


 野崎君の家に行った日の夜、私は庭に出て星を眺める。


 そして、悩む……これから、どうするかってことを。


「……多分、好きなんだよね」


 自分で口に出すと、身体中が熱くなってくる。


 でも、その言葉が……すっと身体に入ってくる。


「それにしても……あぅ」


 えっ? 何? めちゃくちゃ苦しくなってきた?


 みんなも、こんな気持ちになってるの?


「こんなの知らないし……」


 自慢じゃないけど、モテたりはする……でも、自分から好きになったことはない。


 もちろん、いいなって思う人はいたけど……こんな感じじゃなかったし。


「そっかぁ……こんな感じなんだ」


 そうだとしたら、みんなに悪いことしたかも。


 今までみんなの恋の話とか聞いても、正直言って『ふーん』って感じだった。


 だから、私を好きだという三浦君にも……。


 その三浦君を好きという亜里沙のことも、適当に流してきた。


「今度、きちんとしないとかなぁ」


 最近、空気が変だし、桜や坂本君も気を使ってくるし。


「よし……それは何処かで話し合おうっと」


 私がきちんと、野崎君を好きってことを伝えないと……。


「それが一番良いよね?」


 あの時は口から出たでまかせだったけど、今は違うわけだし。


 その……まだ付き合いは短いけど、きちんと人となりを知って、好きになったと思うし。


 意外と面倒見もいいし、優しかったりするし、自分というものを持ってるし。


「そうなると……どうしたらいいんだろう?」


 告白なんかしたことないし……好きって言った後、冗談とか言ってごまかしちゃいそう。


 それに、野崎君が信じてくれない気がする。


 いつもみたいに、ラブコメイベントがどうかとか言ったりして……。


 そもそも、おっけーしてもらえるかも微妙だし。


「そもそも、野崎君の好みとかわかんないし」


 私のおっぱいとか見てくるけど、女の子慣れしてないだけかもしれないし。


「ん? ラブコメイベント……?」


 その時、私の頭の中に良い案が浮かぶ。


「えっと、これから野崎君と放課後に遊んだりするよね?」


 そしたらラブコメイベントにかこつけて、色々としていって……。


 野崎君が、私のことを好きになってくれたり?


 そしたら、告白とかしてくれるかな?


「うーん……ひとまず、それで行こうかな」


 そのためには、まずは胃袋を掴まないと……!


 そう決めた私は、家の中に入り、お弁当の献立を考えるために雑誌を読む。


 次に野崎君に作ってあげるお弁当のために。


 ……不思議と、いつもより楽しい気がする。




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