第37話 お家に到着
葉月が説得するが、やはり二人は不満そうだ。
「でも、滅多にこないし……」
「まだいたいもん……」
「うーん……確かにそうだけど」
まあ、当然といえば当然だ。
まだ小さい二人に、そこまで考えろという方が無理がある。
というか……今思えば、小さい頃の俺がそうだった。
だだをこねて、よく姉貴に怒られてたっけ……俺は、その時になんて言われた?
「俺がまた連れてくるから大丈夫だ」
「「「えっ!?」」」
三人の顔が一斉に向けられる。
「ただし、きちんとお姉ちゃんのいうことを聞いたらな」
「わ、わかった!」
「う、うんっ!」
葉月だけは、ポカーンとした表情をしている。
……しまった、教育方針に口を出してしまったか?
「じゃあ、帰るとするか」
「そ、そうね」
全員で席を立ち、会計に向かう。
その時、葉月が俺に近寄ってきて……。
「……野崎君」
「すまん、教育に口を出してしまった」
「い、いや、そんなことないし……正直言って、すごく助かったから……ありがとね」
「お、おう」
「でも、また連れてくるなんて言って良かったの? 子供って、意外と覚えてるんだよ?」
「知ってるよ、俺がそうだったし。まあ、たまにならいいよ」
「子供連れて良いとか……ほんと、君って変」
「ひどくね?」
「ふふ、褒めてるから」
「そうなのか……なら良いけど」
すると、先を歩いていた二人が駆け寄ってくる。
「にいちゃん! 早く行こうぜ!」
「お、おしっこ……」
「あらら……」
「はいはい、お姉ちゃんと行こうね」
葉月が恵梨香をつれて、奥の方に向かっていく。
……これはチャンスなのでは?
そう思った俺は、拓也の手を取り、行動に移すのだった。
数分後、葉月が戻ってきて……。
「ごめんね、おまたせ」
「おまたせ!」
「平気だよ。んじゃ、俺の家に行くか」
「あれ? 会計は?」
「もうすませたから大丈夫」
「えっ? じゃあ、精算しないと……」
財布を出そうとする葉月を、ジェスチャーで制する。
「別にいいから」
「でも、そういうわけには……」
「お弁当美味いし……まあ、また作ってくれると助かる」
ただでさえ、美少女が作ったお弁当だというのに……その上で美味しいとか。
正直言って、これくらいの値段では返せないくらいだ。
流石に毎日はアレなので、二日に一回にしてもらってるとはいえ。
「野崎君……うんっ!」
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「ニヤニヤしてっけど」
「なんでもないわ。ほら、店を出るわよ」
二人の手を引いて、葉月がファミレスから出て行く。
「……これで正解なのか?」
姉貴から、さりげなく会計を済ませたら良いとか言われたが……。
あと、財布を出そうとする女性には、なるべく奢りなさいだっけ?
……うーん、よくわからん。
パンケーキを食べて、ご機嫌な二人を連れて歩き……。
十分くらいで、俺の家に到着する。
「おぉ……でけぇ」
「大きいおうち! かなちゃんの家みたい!」
「ちょっ、やめなさいって」
「はは……まあ、二階建てではあるけど。とりあえず、中に……」
すると、玄関のドアが開く。
「あら、騒がしいと思ったら……」
「す、すみません」
「大丈夫よ、子供ってそういうものだから。この辺りの人たちもわかってるし。まあ、とりあえず上がってちょうだい」
近所にご迷惑になるので、ひとまず全員家の中に入る。
「この綺麗な人はだれー?」
「綺麗な姉ちゃんだっ!」
「あらあら、よくできた子達ね。どうもいらっしゃい、天馬の姉で小百合っていいます」
「拓也です! こ、こんにちは!」
「恵梨香ですっ! こんにちは!」
「いいお返事……ふふ、昔を思い出すわ。あんたにも、こんな時期があったわねぇ」
「へぇ、そうなんですね」
「そうなのよ、こいつったら……」
「い、いいから! とりあえず部屋に行くぞ!」
このままでは、俺の黒歴史が暴かれてしまうので、急いで退散するのだった。
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