第34話 お出かけ
近所の人達に挨拶をしながら、葉月の家に向かっていく。
近所のおばさん方には、これからデートなの?とか。
珍しくオシャレしてるわねとか言われた。
「はぁ、面倒だけど仕方ない」
流石に小さいころから知ってる人達だから、無視するわけにいかないし。
それに、遠巻きにニヤニヤされるよりはましである。
慣れない恰好に、すでに疲労しつつ葉月の家に到着する。
待ち合わせ時間ぎりぎりなので、早くインターホンを押さないといけないのだが、俺の手はインターホンの手前で止まってしまう。
「い、いかん、めちゃくちゃ緊張してきた」
なに急にオシャレしてんの?とか、変な恰好とか言われたら……死ねる。
「……よし、いくぞ」
意を決してインターホンを押す。
「はーい!」
「にいちゃん!?」
「お兄さん!?」
「こら! 騒がないの!」
「結衣~! あなたは着替えと靴をお願いね。私は挨拶をしてくるから」
「ちょっ!? お母さん!?」
何やらドタバタと騒ぐ声が聞こえてくる。
すると、誰かが玄関から出てくる。
「こんにちは。あなたが、野崎君ね?」
「は、はい、こんにちは。は、はじめまして、野崎といいます」
出できたのは、優しそうで綺麗なお母さんだった。
清楚系の感じだけど、顔は葉月に似ていて……この場合は逆か。
葉月が大人になったら、こんな感じになるのか?
いやいや、だからどうしたって話だ。
「ご丁寧にありがとうございます。なるほど……うちの子も、なかなか見る目があるじゃない」
「えっと……」
「あら、ごめんなさい。まずは、結衣がご迷惑をおかけしてすみませんでした。そして、拓也や恵梨香までお世話になったそうで……」
「い、いえ! 葉月さんには、いろいろと助けられていますし……二人のことに関しても勝手にやってることなのでお気になさらないでください」
緊張で心臓の鼓動がうるさいが、なんとか声を絞り出す。
コミュ障だし、初対面の人だし……綺麗なお母さんだし。
「まあまあ、ご丁寧にありがとうございます。では、本日はよろしくお願いします。悪いことしたら、遠慮なく𠮟りつけて構いませんので」
「はは……わかりました。まあ、葉月さんがしっかりしてるので心配ないかと」
「でも、あの子も抜けてるところあるから……」
「お、お母さん! いつまで話し込んでるのよ!」
葉月が慌てた様子で、玄関から出てくる。
……おい、ポニーテール可愛いな。
そういや、私服姿で会うのは初めてか……。
チェック柄の赤いスカートに、上には白シャツと青いパーカーを羽織っているラフな格好だというのに……その姿が活動的に見えて、やけに似合っている。
白のスニーカーに、黒タイツ……ぐぬぬ。
なるほど……無理をしなくてもお洒落っていうのは、こういうことを言うのか。
そもそも、美少女は何を着てても可愛いと。
「いいじゃない、私だってお話したいし」
「へ、変なこと言ってないでしょうね!?」
「言ってないわよ。ほら、その前に挨拶しなさい。せっかく、お洒落して迎えに来てくれたんだから」
「へっ?」
そこで初めて、葉月の視線が俺にむけられる。
「よ、よう……」
「………」
な、なんだ? やっぱり変だったか? 調子こいたか?
「なに、ぼけっとしてるのよ。何か言うことあるでしょ?」
「う、うん……い、 いいじゃん、その格好」
「お、おう……サンキュ」
「あらあら……」
すると、玄関から二人も出てくる。
「にいちゃんだっ!」
「お兄ちゃんだっ!」
「こんにちは、二人共」
「「こんにちは!!」」
……子供は苦手だと思っていたんだがなぁ。
ファミレスとかでも、親が放置してるからうるさかったし。
他の人が注意しても、全然聞かなかったり……それも、一部の人ってことか。
親や姉がしっかりしてれば、その子供もきちんとするのか。
「は、早く行こ!」
「パンケーキ!」
「わぁーい!」
「わかったから! 引っ張るなよ!」
三人に手を引かれ、俺は歩き出す。
なんだが、よくわからない気持ちに包まれながら。
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