第12話 ヒロイン視点
……な、なによ、意外とカッコいいところあるんだ。
私が部屋に行こうかって言ったら、女の子がそんなこそ言っちゃダメとか。
それくらい奢るとか……。
もちろん、今までも言われたことはよくあるけど……下心丸出しが多かったし。
彼はそんな感じもせずに、ただ自然に奢るって感じだった……誠実な人柄なのかな?
……ギャップがあっていい感じかも?
隣で歩く彼の横顔を見ながら、昨日家に帰ってからのことを思う。
……変なの。
適当に嘘を言っただけなのに、彼のことが気になってる。
一緒にいると意外と楽しいし……なに? 私って意外にちょろかったの?
いやいや、確かに男の子と付き合ったこともないけど……。
何かを真剣にやってる姿が良かったとか?
「そ、そんなんじゃないし!」
「お姉ちゃん?」
「結衣ねえ! 顔あかいぜ!」
「う、うるさいわね! なんでもないの!」
「お兄ちゃん! 遊ぼっ!」
「仕方ねえな!」
拓也が恵梨香の手を取り、部屋の中を駆けずり回る。
ほんと、平屋の一軒家で良かった。
これじゃ、ご近所迷惑になっちゃうし。
まあ……その代わりプライベートも何もあったもんじゃないけどね。
「怪我しないようにねー! あとキッチンにはいかないように!」
「「はーい!!」」
これで、ひとまず安心だ……ただし、事件がなければ。
小さい子っていうのは、いつ何をしでかすかわからないし。
なので、今のうちに家事をする。
お母さんが休みだったり、お婆ちゃんが手伝ってくれる日以外は、基本的に家事や弟たちの世話は、私の役目だ。
洗濯、家の掃除、食事の用意……やることは山積みだ。
「それにしても……ラブコメイベントかぁ」
家事をしつつ、スマホで色々なものを見てみる。
「お勉強する、一緒に帰る、帰りに遊んだり喋ったり……この辺は出来そう。おうちに行く……親がいるなら平気かな?」
でも、親に会ったら説明しないとだし……。
恋人ですって……あ、熱くなってきた。
「それは流石にないわよね。あっちだって迷惑だろうし……迷惑だったら、なんかムカつくわね」
うーん……自分で自分が良く分からない。
……結局、良くわかんないこと言っちゃうし。
あ、あんなこと、言うつもりはなかった。
男の子の家とか、行ったことないし。
「おい、聞いてるのか?」
「……へっ?」
「食べたいものはあるかって聞いたんだが……」
「食べたいもの? ドリンクバーだけじゃないの?」
「俺は基本的にドリンクバー以外も頼むようにしてるから。なんか、それだけで居座るのが嫌なんだよ。店員さんとかに悪い気がして」
その言葉が、意外と私の心に突き刺さる。
自分が、いつも思っていることだから。
だから、滅多に行かないわけだし。
「……ふふ」
「悪かったな、小心者で」
「ううん、君のそういうところ良いと思うし」
「そ、そうか」
「い、今のもラブコメイベントになる?」
「あ? そ、そうだな」
つい照れ臭くて、ラブコメイベントの話にすり替える。
「そういえば、君は好きな人はいないの?」
「あん?」
「いや、もしいたら……私、迷惑かけちゃってるかなって」
「いや、いない。というか、そもそも女子と話す機会がない。というか、まともに女子と接したこともない……おい、笑うなよ」
「えっ?」
「今、自分の顔を鏡で見てみろよ」
「ちょ、ちょっと待って!」
私は鏡を出して、自分の顔を確認してみる。
そこには……にやけてる私がいた。
「ほらな。まったく、少し良いやつだと思ったらこれだ」
「ち、違うし! これは……良いやつだと思ってるの?」
「そりゃ……まあ。俺のことを黙ってくれてるし、こうして手伝ってくれてるしな」
「ふ、ふーん……仕方ないから——私が相手してあげる!」
「ァァァ! くっつくな!」
小説はもちろんだけど……。
どうやら、私は野崎くん自身のことが気に入ったらしい。
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