第4話 それぞれの考え
家に帰った俺は、すぐにスマホを開く。
「多分、今の時間なら平気なはず。えっと……今、話すのは平気ですかと」
ラインにメッセージを送ると……すぐに電話がくる。
「あっ、もしもし?」
『やあ、天馬君。急にどうしたのかな?』
「すみません、アキラさん。突然電話して……」
俺が電話した相手は書籍作家さんだ。
Twitter上で知り合い、有難いことに仲良くさせて頂いている。
そこからDMのやりとりをし、今ではラインもしている。
俺の作品も読んでくれ、たまに助言をもらったりすることもある。
上から目線でもなく、俺が望んだ時にしか言ってこないので、とても出来た人だと思う。
コミュ障の俺にも、ゆっくり丁寧に説明してくれるし。
ちなみに、勝手に師匠だと思っている。
『いや、気にしないでくれたまえ。それで、何があったのかな?』
「実は……」
俺が今日の出来事を説明すると……。
『ははっ! そうか!』
「いやいや、笑い事じゃないですって! 明日からどんな顔すれば……というか、下手すると学校で虐められる……」
『ふむ……だが、その子は夢中で読んでいたわけだろう? 君に悪口を言ったのかな? 』
夢中……確かにずっと見てはいた。
終わった後も、今思えば……特に見下した感じはしなかったかも。
「まあ、そういう見方もできるかもしれません」
『ふんふん……これはチャンスかもしれないね』
「……チャンスですか?」
『多分、その子は普段そういうものを読まないタイプなのだろう?』
「まあ、そうですね。見た目は可愛いギャルだし、完全にカーストトップにいますし」
『我々の業界は認知度が低い。あと、敬遠されがちだ。しかし、それは知らない場合ということもある。私の知人にも、全く興味なかった人がはまったりしたからな』
……一理あると思った。
うちの姉ちゃんも、そういうものに全く興味なかった。
でも、今ではたまに読むというか……理解はしてくれてる。
ただ、弟のやってることだからという可能性がある。
「そうなんですね」
『その子も、もしかしたらハマるかもしれないね』
「いやいや、ないですって」
『とりあえず、明日学校に行って様子をみたらどうだい? もし何か問題があったなら、また相談にのるよ』
「……そうですね、そうしてみます。お話を聞いてくれてありがとうございました」
『なに、気にしないでくれ。これも、可愛い後輩のためだ。では、またね』
「はい、では失礼します」
通話を切り、ベットに横になる。
とりあえず……気になって、今日は寝れそうにないな。
◇
急いで追いかけようと思ったけど、私には商品が残っていた。
あとよくよく考えたら、そこまで焦ることはないし。
明日、学校で聞けば良い話だ。
なので、予定通りにのんびりとすることにする。
「それにしても……」
中々面白かった。
小説なんかは読んだことないけど、あれくらいの文章なら読めそう。
「なんてサイトだっけ?」
確か、カクなんとか……これかな?
スマホで検索すると、同じサイトが出てくる。
「へぇ……親会社は有名なんだ」
私でも聞いたことがある作品をたくさん出している会社だ。
しかも、このサイト……無料で読めるって書いてある。
「無料……凄い」
私が読んだ感じでは、結構面白かったし。
「ふーん……さっきの野崎君の作品もあるってことよね」
……検索はどれ? これ? よくわからない……。
「あっ——」
検索はできたけど……出てこない。
「なんで? 待って……」
確か作品名とかあったよね?
第三王子なんちゃら……あった。
「……そっか、ペンネームを使ってるんだ」
そこには、さっき見た題名と、テンという文字がある。
とりあえずクリックして、続きを見ようとするが……ない。
「なんか、他にも作品がある?」
仕方ないので、そっちを見ることにする。
……あっ! 画面が消えちゃった!?
何か押しちゃった……違う、ただの充電切れだ。
「嘘? そんなに経った?」
店にある時計を見ると……二時間が経っていた。
「やばっ……帰らないと」
片付けを済ませ、急いで家へと向かう。
「……めちゃくちゃ面白かったし」
文章は私みたいな人にも読みやすく、内容も理解しやすかった。
あれで無料だなんて信じられない。
「あれを書いてる人が、私と同じクラスにいるんだよね……やばくない?」
その後、家に帰って携帯を充電する。
その間に、家のことを済ませる。
「結衣ー? 洗い物してくれるー?」
「もうやったよー」
「じゃあ、お風呂お願いしていいー?」
「うん、わかった」
「お姉ちゃん! お風呂!」
「はいはい、わかったから」
まずは、幼稚園児の恵梨香と一緒にお風呂に入れる。
「髪は一人で洗えるー?」
「頑張る!」
すると、外から拓也の声がする。
「結衣ねえ! アイス食べてもいい!?」
「待って、恵梨香がお風呂を出てから」
「早く食べたい!」
「だめ、待ちなさい」
拓也はまだ幼稚園児で、お世話するのも大変だ。
お父さんが死んでから、私は二人のお世話ばかりで息がつまる。
もちろん、二人共可愛いんだけどね。
……早く、小説の続きを読みたいなぁ。
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