第114話

「お姉様!!よくぞご無事で!」


 飛びながらに駆け寄る妖精の感動的な再会だが、ドライアドの容態は芳しくない。

 ノエールに掴まれている姿はぐったりしている印象だ、ノエールよ強く握っている訳ではないよな?


「キングトレントとやらに魔力を吸収されていたのでしょう、奴らは植物なので吸い上げることは得意なのです。」


 実際メリダが戦っていた時も大地に取り込まれていた水分を吸収していたようだ、吸収の限界を越えた水分は取り込めないようだが。


「なので、ここからは綾人さんに頼むしかないですね。」


 アドリアネはやれやれと首を振りながら妖精を見つめる。

 魔力供給か、やる事はいつも通りのマッサージしかないけど、小柄という言葉に収まらないほど小さい患者へのマッサージは体験がない。

 指圧も按摩も手のサイズが違って効かないのではないか?


「そこは私がパイプとなりましょう。

 綾人さんは私にマッサージして、供給される魔力のみをドライアドへ移すということです。」


 へぇそんな事ができるのか、それなら確かに出来そうな気がする。

 ガッツポーズを決めているアドリアネを見ると、ただただ夜までマッサージが待てなかっただけの気もしてくるけど。


「さぁ綾人さん、準備万端ですよ!さあさあ!」


 アドリアネはもう素っ裸で寝そべっている、この天使脱ぐのに躊躇なさすぎる。

 振り返ればもう脱いでいるから、売れたい若手芸人くらいすぐ脱ぐ。

 これくらいプロポーションが完璧だと恥もないのか、それともこの世界観によって女性が脱ぐという事への抵抗感を緩めているのか。

 にしても森の中で全裸美人というのは幻想的な眺め、それに妖精もセットというんだから。

 当の妖精はアドリアネの谷間に納まっている、アドリアネが言うには身体の中心に近いほど魔力の伝導が良いらしい、乳圧に潰されないかが不安要素ではある。


「んで、このローションは何処から持ってきたの?」


 気になるのはアドリアネの横に置いてあるローション、マッサージ専用の物ではなくよくアダルトグッズの横に置いてある市販のもの。

 まさかローズさんに買わせに行ったんじゃないだろうな。


「当然ローズに買わせに走らせましたよ?」


 悪魔だわ、少なくともこの事実は村に帰っても明かせないし、墓場まで持っていく事にしよう。

 ただローズの努力に合掌して讃えるとしよう、申し訳ないですが使わせてもらいます。


 アドリアネの求めるスペシャルマッサージとは、簡単に言うと臀部から鼠蹊部にかけてのリンパマッサージのことである。

 美脚やむくみ解消に効果があるが、正直いらないだろって脚をしている。

 それでも求められる理由は単純、性感帯に近い部位であるからだ。


 マッサージする以上、プロとして真面目に施術するつもりだ。

 だが、やはり俺も男でドギマギする気持ちがない訳ではない、そこがアドリアネが最も求めているポイントだ。

 しかも仲間たちの面前でやる痴女っぷり、この世界では逆に男らしいのか?


 それが分かっているからこそ、ニヤニヤ観察してくるアドリアネに一泡吹かせたいところだ。

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