第87話
ボロボロの姿で2人の女性が村へ訪れた、自力で村に辿り着くのは初めてなんじゃないか?
森の枝葉に衣服が持っていかれて、見窄らしいほどボロボロになっているが…。
この前村に来たメリダさんだっけ、いかにも魔法使いといったローブに幾つも穴が空いている。
それともう1人、こちらは初見のエルフだ。
こちらも森に入るには適さない装いで、あちこち衣服が裂けているが高そうな装飾が施されてる。
その2人が村に入るなり五体投地して、
「私たちは村に敵意はありません!」
と全面降伏スタイルだから竜たちも手出ししていない、使者が帰ってこない報復ではないと白旗まで持参している。
先に捕まっている兵士もこの2人を見て驚いている、
「最高司教様と一級魔術師のメリダ様じゃないですか!
なぜこの様な場所で!?」
有名人なんだ、っていうか最高司教って俺が会う予定だった人が来てるのか。
護衛を連れてといっても、今から戦場になるかもしれない森を抜けてボロボロになって来るとは予想できなかったな。
「どうも、初めまして綾人といいます。
とりあえず落ち着ける場所に移動しましょう。」
偉い人を村の入り口で待たせるのも何なので、ヘラ様御一行用の旅館へ案内することに。
本来ならばツバキの館に行くのが筋だと思うが、今回の訪問は例外なので。
道すがら興味深そうに眺めてくる村人に、メリダさんは終始怯えたようにしていたが、トーラさんは逆に周囲を興味深そうに観察していた、高貴な感じなのに物怖じしない性格がうかがえる。
旅館に着くと、靴を脱ぐ文化に戸惑いながら大広間に案内して、さらに床(畳)に座る文化にも困惑している。
この村では座敷は普及しているけど、他の国はそうでもないみたいだ。
対面に俺たちも座ると自己紹介が始まった。
「改めまして、護衛で同行していますメリダと申します。
先程の兵士が言ったことは忘れて下さい、ただのメリダとお呼びください。」
「私がエトラッタ王国のアルテヘラ教会に所属しているトーラと申しますの、役職は最高司教を拝命されておりますの。
綾人様、お会いしとうございましたの。」
正座から前のめりでの熱烈挨拶にドギマギしてしまう、エルフというのは誰も彼も美形が多くて困る。
全員何故か正座で揃っている、この話し合いは争いを止める可能性を秘めているから俺も真面目に向き合わなければな。
「挨拶はこの程度で結構、早速本題に移りましょう。
エトラッタ王国はこの村と戦争でもしたいのですか?」
アドリアネがアクセル全開だ、その目は相手を品定めするように光っている。
後ろに並ぶ竜姫たちも威嚇するような眼光を飛ばす、君たちなんでそんなに荒っぽいの。
メリダは首が千切れんばかりに首を振りトーラの陰に隠れる、君たしか護衛だったよね。
「この侵攻ともとれる行軍は全てニーサ、村に来たことのある若いエルフの独断によるものです!
今、そのエルフの師匠が直接軍を止めるために動いておりますので!」
深々と頭を下げながらメリダは釈明するが、
「自ら罪の告白ですか、この場は懺悔室ではないのですよ?」
おぉめちゃくちゃ皮肉混じりのコメントだ、アドリアネも容赦ないな。
青ざめるメリダを庇う様にトーラさんが腕で制す、
「なので私が来させていただきましたの。
教会における肩書きですが、エトラッタ王国に対しては効果がありますの。」
「なるほど、いざという時の人質役を買って出たというわけじゃのう。
しかし迷惑なことには変わらぬ、其方に人質の価値があるとするなら余計に軍は引かぬじゃろ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます