第79話
side ニーサ
ふざけるな!なにか使徒だ、ちょっとこ綺麗な男じゃないか、こんなのが重要人物としてあげられているなんて、教会という組織も耄碌した老人の集まりに成り果ててきた証拠だ。
私がウカクの肩で目を覚ました時には、既に珍妙な村の外に出た後だった。
来た道を引き返しているようだったが、あの男の姿がない、よもや発見したのにおめおめと取り逃したのか!
師匠もウカクも疲労と憔悴が顔にでているということは、私の予感は当たっているようだ。
何と言う事だ、私の教会での確固たる地位を手に入れる為の足掛かりだったのに…。
神からの遣いのはずなのに教会からの救いの手を拒むとは、確かに神託の内容に近い見た目だったが本物だったのか?
それとも周囲の悪女どもに、半ば軟禁状態で囚われているのではないか?
メリダは村に入る前から使い物にならなかったが、それでもウカクという冒険者ギルド最強と言われている剣士、更にカフェカ師匠も揃っていたにも関わらず事実上の敗走なんて予想できなかった。
私の最後の発言から記憶がないが、いったいどんな戦闘が行われたのか、皆一様に目立った外傷もなかったから戦略的な撤退だと思いたい。
兎に角、精鋭揃いでもこの人数では使徒の奪取は叶わなかった、つまり王国に戻り更なる人数を率いて挑まなくてはならない。
「ニーサよ、余計なことをしてくれるではないぞ。
今回の事もあるが、やはり連れてくるべきではなかったな。」
何を言うんですか、および腰だった師匠に代わり交渉を進めていた私にその言種は納得いかない。
「私も今回の依頼からは手を引きたいと考えている、このパーティーには手に余る問題だ。」
ウカクまで!ギルド最強が聞いて呆れる、旅の道すがら魔物や盗賊と戦う姿を何度も見ているが本当か?
男一人を奪い取るような盗賊みたいな真似に嫌気がさしただけではないのか、腕は一流だが人一倍正義感も強いのが仇となったか。
金にもならない正義感なんて捨ててしまえば、もっと上に立てるのに勿体ない。
私はこうはならない、どんな手を使っても上に登りつめてやるんだ、私の目的の為には…。
side メリダ
ウカクの発言は私を安心させるに足るものだった、パーティーのリーダーが言った指針だ信用するしかない。
この依頼には裏があるとは思っていたが、あんな化物を相手にするなんて聞いてない。
報酬は破格だったが正直全然足りないし、たった4人のパーティーには荷が勝ちすぎていたのだ、あんなのは王国の冒険者総出でも相手にしたくないわよ。
この中の何人が気づいていたのか、ニーサを吊り上げた奴より、断然後ろに控えていた4人のほうが私たちを殺す気満々だったことに。
私たちは救われていたのだ、動かないように拘束されていたのも余計なことをさせない為、本音を言うとニーサだけの命で助かるのなら私は儲け物だとすら思っていた。
ウカクは立派な剣士だし、エトラッタ王国の冒険者では並び立つ者はいないと思う、それでもあの場にいた誰も倒すことはできなかっただろう。
私も魔術学校を首席で卒業していますが、感知できても対処できなければ意味はないでしょう、そして浜辺であの銀髪に遭遇し逃げなかった時点で詰んでいたのだ。
焚き火を囲み休憩する、ウカクが大事そうに抱えていた木箱の中身が判明する、あの村で提供されていた料理だった。
ニーサは嫌そうな顔をしていた、そりゃ上空に吊られて気絶させられれば苦虫を噛み潰したような顔にもなるだろう。
だが料理に罪はない、あの場では味わう余裕もなかったが、どれも王国では見ない料理だ。
なくなっていた食欲も料理の香りで湧いてきた、
「かあーっ!美味そうだ。
お土産まで持たせてくれるなんて、あの村には二度と行きたくないが、この料理を食べ納めって考えると悔しいな。」
食道楽のウカクにここまで言わせるとは、得た収入のほとんどを食に当てているから、きっと王国の食べ物は全種口にしているだろうに、
周辺国よりもエトラッタ王国は豊かな部類だし、食の豊かさであれば大陸一だと思っていたが、それよりもか。
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