第73話
今日の昼飯は中華だと決めていた、中華鍋振るい卵と米を絡めていく、具材はなるべく少なくするのがウチ流の貧乏炒飯だ。
その横で温度を上げた油に衣をつけた唐揚げを揚げていく、油の爆ぜる音と共に唐揚げはどんどん色づいていき、取り出してから低音の油でゆっくり二度揚げしていく。
「おまたせ、ゆっくり食べてね。」
テーブルに宴会用の皿で二品並べる、各々取り皿によそって分け合ってもらうのがウチの飯スタイルだ。
そして必ず来客とはテーブルを離すこと、これをしないと食い意地が汚いウチの竜たちに蝗害のように食い尽くされてしまうため。
ウチに来る人は全員、何日も食事をしていなかったように飯をかき込んで食べる習性を持つようになり、皆が一口でも多くと争い合うのをよく目にする。
そんなに少なくない量を準備しているはずなんだけど、というか最近全体的にふっくら丸みを帯びてる気がするんだが。
「君たちちょっと太った?」
ギクッと常連たちの肩が跳ね上がる、やっぱり自覚していたか。
アドリアネとよくお仕置き組手をしているツバキとボタンは比較的マシだが、最近お行儀よくしているキキョウとモモは如実に体型へ影響が出始めているぞ。
そして1番食べているアドリアネは素知らぬ顔である、どれだけ沢山食べようとも美しいプロポーションは崩れない。
1番組手で運動しているし、もしかしてシゴいているのはダイエットの為もあるのか?
「仕方ありませんわよ、綾人殿の食事が美味しすぎるのも問題でしてよ。」
キキョウは匙を咥えながら抗議する、行儀悪いからやめなさい。
「わっかるなー、毎日こんな美形のお兄さんの手料理が出てくるなら。
私もこの村に越して来たいぐらいだぜ。」
食べる手を止めないで剣士も援護する。
美形ともてはやされるが単純に男が少ないから煽てているだけだろう。
「いや、アタシたちの住んでいる街には少ないが男がはいるぞ。
それでもお兄さんくらいの顔の良さは見たことがない。」
この見た目はアドリアネによって高校生当時ぐらいの顔に戻っているから、生前はもっと歳をとっていたので参考にはならないか。
「へー他の男の人か、ちょっと会ってみたい気もするな。」
そう口にすると、
「そうですか?なら是非お越しください、私の知り合いとして入国すれば審査なんかも容易になりますので。」
やけに乗り気のエルフ2人が口を揃えて勧誘してきた、やっぱり入国なんかには審査がいるのか。
その声に竜たちは立ち上がってコチラへと顔を向ける、どうしたお前たち目がなんか据わっているぞ?
その様子にを見て少し調子の戻りつつあっな魔法使いが、再び顔を青くして椅子をひく。
「どこの差金か知らないのじゃが、アタシたちの目の前で勧誘なんていい度胸してるのう。」
ツバキは年上であろうエルフの肩を手で掴む、口調からして怒っている風だ。
「やめなさい貴方たち、私が事情を聞くまでは。」
そこにアドリアネの鶴の一声がはいり、竜たちは一瞬固まってすぐに元の席へ座り出す。
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