第72話

 アドリアネが見知らぬ女性たちを引き連れて村に戻ってきた。

 1人はげっそりしてるし、1人は俺の姿を見て驚いている、他の人たちも驚いているがそれは男がいる事に面食らっている風だ。


 驚いたのがめちゃくちゃファンタジーな格好してる点!えっ下手なコスプレみたいに綺麗じゃなくちゃんと使い込まれた装備に道具だ!

 げっそりしてる人は一目で魔法使いだと分かるほどコテコテの黒いローブを纏っている、またまだ暑い気候が続くらしいが大丈夫なのか?

 こっちの大柄な女性も見るからに剣士って見た目だ、おおっすごい筋肉してるぞ腕っ節が強そうだ、腰に履いた剣が思ったよりも大きくて意外だった、切れ味とかよりも叩き切るって感じなのかな。

 小柄な女性はいわゆる斥候役かな?身軽そうな装備で、いかにもナイフで戦いますって印象だ、元から小柄な種族なのかな。


 そして何よりも驚いたのが、エルフだ!うわ凄いわ、色白で耳が長い!イメージ通りだ。

 1人は僧侶風の見た目で獲物もメイスを持っている、先頭に立つタイプじゃないのだろうが結構ふくよかな見た目だ。

 もう1人は…、見た目だけでは何の役割か分からないな、ぱっと見は裕福そうに見えるが明らかにパーティーからは浮いている気がする、そしてさっきから1番俺のことをガン見してきている。

 なんだか眼鏡の奥の眼光が鋭いな、もしかして1番年上なのかな、エルフは長寿というが見た目では年齢が分からん。


 なんでも浜辺で体調を崩して足止めをくらっているのを、アドリアネが救ったのだと本人が言っている。

 珍しく人を救っているな、天使なのに珍しくな。

 けど先ほどから魔法使いの人がアドリアネの一挙手一投足にビクビクしてるんだが、本当に助けてきたのか?


「彼女の言う通り、今回は我々を助けるつもりで案内してくれたんだ。

 来た道を帰るにしても村が遠かったから助かったよ、こんな所に立派な村があるとは。」


 どうやら本当だったみたいだ、一瞬疑ってしまってアドリアネには悪いことをした、謝罪を込めて撫でて欲しそうに頭を差し出してきたのでわしゃわしゃとしておく。

 その様子にパーティーの面々は驚いている、なんでもここまで女と距離感の近い男は珍しいらしい、うちでは日常だからな他の男にも会ったことがないし比べようがない。


「せっかく来てもらったんだし、ご飯を用意しますんで待っていてください。」


 村の責任者であるツバキ後で顔を出すとの事で、入れ違いになってもいけないから待っていてもらおう。

 いつも多めに作っているから、多少消費が増えても大丈夫だろう。


「すげー、今回の依頼は報酬が良かったけど、こんなラッキーなこともあったら大儲けだな!」


 剣士のゴツいお姉さんが豪快に笑う、何かの依頼のついでに海に立ち寄ったのか。

 依頼主だったらしい、眼鏡のエルフが目を細める、あれ?もしかして秘密の依頼だったのか?

 ビショップのお姉さんが剣士の脇腹を肘で突いているのを見ると、どうやら本当に秘密だったっぽい、剣士もいけねって顔をしていた。

 言ってはなんだけども、こんな僻地に依頼の物があるとは思えないんだけど…、とにかく俺の料理を喜んでくれいるなら良かったよ。

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