誰よりも嫌いな奴の話

34

終わり

とにかく自分で自分を傷つける人生だった。


きっかけは中学生の時だったと思う。


悪友に誘われ、万引きをした。


初めは無理やりだったはずなのに、いつしか自分1人でもするようになった。


盗るたびに罪悪感は増していく。それが分かっているのに、店に入るたび何かを盗んでいた。


運よく、一度たりとも見つかることはなかった。


ただそれが、なおさら自分で自分を嫌いになる要因になっていった。


”誰かに止めてさえもらえれば”


ずっとそう思いながら、誰に言うでもなく、見つかるようにするわけでもなく。


もうやめたほうがいいのに。そう思いながら何もできず、そんな自分も嫌いになっていた。



社会人となり、ようやくそんなことを考えずに済むほど忙しくなった。


毎日終電で帰るような生活だったが、それでも自分を嫌いになることが一つ減ったことが幸いして嫌にはならなかった。


そんな中、同期の女性に恋をした。


話をするたびに心が弾む。ただ、1人になると突然


”この程度で喜んで、なんだ”


”大した話も出来ないで何を喜んでるんだ”


そんな声が頭の中に聞こえてくる。


恋に落ち、また自分を嫌いになる生活が始まった。



恋心を持ったまま、何も進展はなく、数年が経つと、こんな自分にも後輩が出来た。


なぜかは分からないが上からの評価は明らかに自分の実力よりも高く、指導を一任された。


常に自分の実力以上のことを要求されているプレッシャー。


”お前みたいに何もできないやつが何を偉そうに教えてるんだ”



そんな自分の声でさらに自分を嫌いになる。



気づけば、恋心を抱いていた女性は結婚してしまった。


その相手の話を聞くたびに、自分なんかじゃ何も勝てないと思うような人だった。



自分で自分を嫌いになる。そのことすら嫌になった。


自殺を考えても、死の恐怖に勝てず、結局行動には移さなかった。



そんな時だった。病気が見つかったのは。


余命は半年と言われたが、あまり悲しさは湧いてこなかった。


むしろ、どこかすっきりしたような気持ちだった。



もうキーボードを打つのが精一杯になった。



最近、人生を振り返る。


そのたび鬱々とした思いが溢れてくる。


それをただ書き連ねてみたのがこれだ。



こんなことしか書けない人生だったのか。


最後にまた、自分を嫌いになる。

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