第24話 sheep
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病院へ運び込まれた同僚は個室のベッドに横たわっていた。ブドウ糖と薬品の混合点滴が右腕に刺さっていて、一秒に一回雨だれのように血管に送り込まれていた。
同僚は睡眠中で意識は無く、話しかける事も出来なかった。瘦せこけた顔、老年を思わせる疲労の印象。彼女の過酷な状況がよく顕われていた。
彼女のベッド脇で丸椅子に座っていたが、長居をしても仕方がない状況だった。点滴もあと一時間は続く見込み。花は拙いと聞いていたが、食べ物も拙かった。失敗したな、と思ったがお裾分けでもすればよいだろうと思い、その旨を含め置手紙 を書いた。
退出する際に看護ステーションに寄った。看護師が、ご苦労と、労ってくれた。
外に出ると日曜日の街は好い天気で見上げた空が青空で何か勿体ない気がした。
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結局サナトリウムでも対象の女子は見つからなかった。隈なく見て回る事も出来なかったので廊下を一通り歩いて、部屋に顔を出し、其の後サナトリウムの庭で飲み物を飲みながら一時間以上待ってみた。
捜索は振出しに戻った。
気になることを言っていたのを思い出す。
「無事に帰れてよかったですね」
「無事?」
「踏み込んだら帰れない、って印象無いですか?」
「そうですねぇ」
罠でも張ってあったのだろうか。
例のファーストフードを出て環状線に乗る。失踪からの経過を考えると、張り込みもそろそろ期限切れ。捜査当局なら公開捜査に切り替えるタイミングだろうと思う。
失踪者のピースが埋まらない。何故だか合わないジグソーのピースを無理に合わせている気がする。
携帯で電話してみたが、女子の実家には繋がらなかった。両親の携帯番号は聞いていない。
電車の中は夜11時を過ぎの日曜日。休日で深夜だからか乗車率30%と言うところの電車。弱冷房も効いていない。見渡した車両の中。服装と年齢性別だけでは乗客の素性までは特定し難いが。
――気が抜けないほど危ないシュチュエ―ションではなさそうだった。狙われているのが自分だとしても。
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