第15話 ドリフト


#8

 大した戦闘もないままに、敗戦したこの国を某国が占領。占領軍による支配体制を敷いた。此れに異のある人々は抵抗運動を起こし。時に蜂起した。

 抵抗運動が激しさを増す中、UNのオファーでPOO(Peace Order Operation)が成立。この国は自国政府と占領軍、UNが三元統治する所となった。統治勢力の衰退の結果、治安は悪化。P2Oの指示で治安機構は再編された。  

 中央指揮所はそんな治安機構の包括的統括本部として首都に設置されていた。


中央指揮所。広報課の受付窓口。

刑事がデスクトップを捜査している。

「未だ、だな」

「失踪は先週からだそうです」

名前で調べてもらって出てこない。検索の条件を絞ればとも思ったのだが。

「無いよ。ファイルのプロフィールに基づけば」

「解りました」

データに無いものは無い。

「届が出てないと、こっちはな」

仕事だろ?と言われたようなものだった。

「進言してみますよ」

椅子から立ち上がる。

「有り難うございました」



#9

 午後九時前に中央指揮所を出て、環状線の乗換駅で降りた。一時頃から何も食べていなかったので、二十四時間営業の軽食店でバーガーを食べることにした。

 店は地下を含む三階の構成。居座る気もなかったので一階の席を取った。午後十時の店は比較的すいていて、談笑も特になく、静かな印象だった。

 客の中に私服の高校生らしき女子が数人いた。互いに知り合いと言うわけでもないのか、談笑もせず黙って座っていた。ヘッドホンで音楽を聴いていたら三曲目が終わる頃にマスクと帽子、中肉中背の男が女子高生一人の一つ前の席に座った。

男は軽食を食すと直ぐに立ち去って行った。

三分経つとその女子高生も食器を片付けて出て行った。



#10

軽食店の近くには半径2,30mの広場があり、街灯の下幾らかの人々がたむろしていた。

さっきの男と女子高生が口論している。

一つ手前の街灯の下から眺めていたのだが、多分アレだろう。交渉が決裂したのだろう。

 女子高生は広場の出口に向かって歩き出す。

 置き去りに去れた男は気を取り直したように女子高生を追い掛ける。右腕を後ろから掴まれた女子が触るな、と声を上げる。

 男の方も、何処の言葉かよくわからない訛った言葉を返して罵った。

 他に居合わせた人々は我関せずだった。

 近づこうかどうか迷った。通報で済ます手もある。

 

結局――

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