転生先は悪役令嬢の上位職→継母王妃! 世間を舐めた子供世代に美魔女が愛の分からせお灸を叩き込みます

斗南

第1話 私の義理の娘、白雪姫じゃね?

わたくしはガルデニア王国の王妃です。

名君と名高い国王陛下が正妃を亡くされた後、二人目の王妃として嫁いでまいりました。


前の王妃様は雪のように白い肌と艶やかな黒髪、真っ赤な唇をしたそれは可愛らしい姫を残されました。

名前をユーフォルビア、皆にルビア様と呼ばれ愛されています。

無邪気で自分の心に正直な愛すべき姫ですが、唯一の直系の王位継承者となればそれだけではいけません。


ですがユーフォルビア姫は美容と恋愛にしか興味がなく、王女教育から逃げて遊び回ってばかり。

そんなとき前から体調を崩しがちだった陛下がとうとうお倒れになり、姫まで手が回らなくなってしまいました。


「お父様に悪いことなんて起こるわけないわ。いつも通りすぐ治るに決まってるもの」


さらに遊びに夢中になります。いつも優しく叱ってくださるのは陛下ですが、今はわたくしが言うしかありません。

反発されるのは覚悟でお茶の時間に切り出しました。


「ユーフォルビア、あなたももう14歳。子供のままではいられないのですよ。この夏は北の森の別邸でみっちりお勉強してもらいます」


「酷い! どうしていつもあたしのやりたいことを邪魔するの? あたしが本当の子供じゃないから楽しそうにしてるのが許せないんでしょ! ああーん、人生一度きりの14歳の夏は意地悪な継母に潰されて終わるんだわ」


「本当の娘でも、いいえ、本当の娘ならなおのことそうします。あなたは陛下の一人娘。いずれ女王となってこの国を治めて……」

「女王なんて嫌!」


姫は椅子を倒して立ち上がり、食べかけのスコーンを床に力一杯投げつけました。

本当はわたくしの顔に投げつけたかったのでしょうが、さすがにそこまでは実行できないようです。


「女王はいつだって悪役のおばさんじゃない。あたしは若いうちに素敵な王子様と結婚して彼の即位と同時に王妃様になりたいの。お義母様みたいに売れ残ってお腹の出てきたおじさんの後妻になるなんて絶対に嫌よ。早く子供産んでよ。どうしてでできないの? あたしが産まれたってことはお父様のせいじゃないわよね?」


ユーフォルビア姫に悪意はまったくありません。思ったことをそのまま口に出すだけなのです。

……おばさんだって傷つかないわけではないのです。

彼女のように酷いと叫んで涙をこぼしたいのを堪え、表面上は冷静で完璧な王妃の顔を保ちました。


「そんな品のない口の利き方をどこで覚えてくるの」

「上品な言葉で嘘つくより、汚い言葉で言う本当のことの方が価値があるわ」


……言葉の暴力による継母いじめに晒されているのはわたくしの方ではないかしら。

当然姫は嫌がりましたが、家庭教師を七人と護衛に凄腕の狩人を付けて森の奥の別邸へやりました。


各国の微妙な序列や公の場での振る舞いを知らないでは済まされませんし、彼女の夫となる人はガルデニアの多くを手に入れることになるのです。

ユーフォルビア姫が賢く立ち回らなければ、大陸の穀倉地帯を擁し豊かではあるけれども軍事力に乏しい我が国は大国に好き勝手にされてしまいます。



凄まじいド田舎にやられると聞き、ユーフォルビア姫はそれはもう悲し気に泣きながら馬車に揺られて行きました。

遊びたい盛りの女の子を山奥に閉じ込めるのは不憫ではありますが、あの子は普通の生まれではないのです。学ばなければならないことは市井の少女の比ではありません。それが王族というものなのです。



「王妃様が正しいし、姫様がこのままじゃ使えない王女まっしぐらなのは分かってるけどさあ」

「ああも哀れを誘う泣き方をされるとちょっと同情しちまうよなあ」

「感情的にはな……うん。姫様可愛いし」


事情を知っている兵士たちでさえこの調子なのです。


ユーフォルビア姫の遊び相手たちは、いつも通り意地悪な継母がルビア様に異常に厳しく接している、お姫様可哀想w と面白おかしく言いふらして回るでしょう。悪口が一番盛り上がる人間というのは身分の貴賎を問わずいます。


その時にふと、こんな言葉が私の脳裏に浮かび上がったのです。




……私の義理の娘、白雪姫じゃね?

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