自宅の車庫がダンジョンになったので、そのまま軽トラで攻略します。
桐嶋紀
第1話 ダンジョン現る
「なんじゃ……こりゃ……」
仕事に出勤しようと車庫のシャッターを開けたその時、目の前の車庫の床には大穴が開いていた。
「オレの軽トラは?」
穴が開いていただけではない。オレの愛車の軽トラの姿も見当たらない。
「あー、これは……そういうことか……。発生に巻き込まれちゃったのか……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さかのぼること数年前、世界の各国では異常事態が頻発していた。それは、『突然のダンジョン発生』である。
何の変哲もない野山、あるいは世界的な遺産のあるところ、はたまた官公庁の地下室、軍事基地の滑走路上など、まさにところ選ばずそれは発生していた。
ある日突然、地下に伸びる洞窟が現れるのだ。
その洞窟は、浅ければ数メートル、深いものでは広さ数㎞四方もの広大な空間が地下何層にもわたって形成される。
超音波エコーや地下ボーリング等の調査の結果、その地下空洞は実際にその空間に存在するものではなく、どこか他の土地に通じているとの結論が出されたが、その繋がった先がはたしてこの地球上なのか、宇宙の何処かなのか、はたまた異なる位相の世界にあるのかなどの詳細はいまだ謎のままだ。
当然のように、その地下空間の調査が各国で進められた。その結果、その中にはこれまで地球上で存在が確認されていない生物の存在が確認された。
その生物は、地球上の生物に酷似していたり、はたまた生物の進化からかけ離れた容姿をしていたりと多様な外見をしており、その能力はその体格からは物理的に計算不可能な膂力をもっていたり、重力を無視する動きを見せたりと不可思議なものであった。
それらの不可思議の最大のものは、地球上の生物とは全く異なるものでありながらも、その姿や能力が既知のもの―――つまり、地球上の神話や伝承、あるいは近代ファンタジーの小説やゲーム等の創作物に出てくるものと同一、または酷似していた点であった。
そのため、各個体には驚くほどの速さで個体名が定められたというエピソードも存在するが、それは話の本質とは脇に置いておかれる件である。
そしてなにより重要視するべき事柄、それは―――――それらは人間に対して攻撃的であった点に尽きる。
人類は、それらの存在を『魔物』と呼称する。
魔物は、幸いなことに地下空洞から出てくることは殆どなかったが、皆無ではなく、地表や民間人への被害はいまだほとんど出てはいない。
しかし、それら魔物が人類を脅かす存在であると定義した各国は、地下洞窟に捜索隊の性質を併せ持った『討伐隊』を組織して送り込んだのだった。
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