ターニングポイント
ゼラがこちらに来ることが決まって2日が経った。
僕は彼女を迎えに行くために空港までやってきた。
どうやら、ゼラは日本ではなく海外育ちだったようだ。
長く遊んでいたが彼女がどのあたりに住んでいるのかとかそういう話をしたことがなかった。
「もし?」
「え? 僕ですか?」
後ろから不意に声を掛けられ、振り向くとそこには物凄い美人の鬼人さんが立っていた。
こ、これはまさか噂に聞く。
逆ナン!?!?
僕にもついにエロ漫画的展開が来てしまったのか!? まずいぞ、このままじゃ作品のレーティングがR18になってしまう。
だって、僕誘われたら断れないもん。ついて行っちゃうよ? しかも相手めちゃめちゃ美人だし、スタイルいいし、色っぽいし。男子高校生があらがえるわけがない。
そこで読んでいる君たちもそう思うだろう? 実際、同じ流れになったらついていくだろう?
てなわけで、残念だが、誠に本当に遺憾ではあるのですが、マジで残念ですが、ここから先は18禁エロ路線にルートが分岐します。
よっしゃ! 僕の勝ち組! ひゃっはー!
それではここから先は『自己肯定感の低い僕はお姉さまに逆ナンされる』をお楽しみください。
「君がレン君、でいいのかな?」
「はい、レンです!」
「そっか、よかった~」
ん? あれ? なんでこの人僕の名前知ってるの? どこかであったっけ? もしかして、ストーカーしてたとか? ヤンデレ系ヒロインですか? こ、殺されたりとかしないよね?
「どうしたの? 大丈夫?」
美人の鬼人さんは僕を心配して肩を抱いてくれた惚れた好き僕の子供産んで。
「ちょっと、レン! なにうちのママにデレデレしてるの!」
むむ、何か聞き覚えのある声が……いやいや、気のせい気のせい。だって、僕はこれからこのお姉さまとデートに……。
「なんで無視するの!」
「痛い、イタイイタイ」
なんか急に出てきた知らない女の子に頬を引っ張られたんだけど? 誰この子?
僕より頭一つ分背の低い女の子。無造作に伸ばされた黒い髪、左目は蒼く、右目には眼帯。
尻尾と角が生えているところを見るに魔族みたいだけど。
にしても、格好のアンバランス感がすごいな。服はジャージなのに、眼帯だけはなんか装飾凝ってるし、中二感ある。
「って言うか、いつまで頬引っ張るの? 痛いんだけど。離して」
「レンがごめんなさいするなら離してあげてもいいよ」
「なんで僕が謝るのさ。後、なんで僕の名前知ってるの?」
「なんでって、もしかして、まだ気づいてないの?」
「気づいてないって何が?」
「本気で言ってる?」
「いや、なんか聞き覚えのある声だなとは思ったけど、どっかで会ったことあったっけ?」
魔族の知り合いとかいた記憶がないんだけどなぁ。
「あんたねぇ……」
少女は呆れたと言った感じでため息をつく。
「ここに何しに来たのよ」
「…………あ。え? じゃあ……」
「そうよ」
え~~~~~~、この子がゼラ? うっそ! 魔族だったの?
「じゃあ、改めて聞くけど、なんでうちのママにデレデレしてたの?」
「は? ママ?」
僕はゆっくりと鬼人のお姉さまに視線を向ける。
「ママでーす」
目が合うとお姉さまは笑顔で手を振ってくれた。可愛い……じゃなくて!
「お母様!? 姉ではなく?」
「さっきからそう言ってるじゃない」
わっか! 母親、わっか! うちにいる三十路より若々しいぞ。
「そうか、人妻か……人妻……いや、でも……」
「何を葛藤してるの」
「分からない。分からないが、言葉に出来ない何かがこう、胸の奥でつっかえててな」
「深刻な悩みみたいに言ってるけど、どうせ大したことないんでしょ」
「そうだな、人の悩みなんて自分にとっては大したことではないよな」
「ねぇ、その僕は大人だから君とは違うんだ感出すのやめて」
「あ、そうだ。さっき空港来る前にようつべ見てたんだけど、面白い動画見つけた」
「おう、急に子供っぽくなった。対応しづらいからやめて。あと、動画は気になるから教えて」
「ああ、これ。100点取り飽きたってやつなんだけど……」
僕はスマホを横にして、ゼラが見えるように隣に立つ。
「ふふふ」
そんな僕たちの様子を見て、ゼラの母親は笑っていた。
「あ、すみませんでした。まだ、ご挨拶してませんでしたよね」
「別に気にしなくていいよ。こっちは君のことある程度は知っているから。今笑ったのは、久しぶりにゼラの楽しそうな姿を見れたから」
「え? 何? 楽しかったの?」
「べ、別に楽しくなんかないんだからね!」
「なにそのベタベタなツンデレ。キャラじゃないでしょ」
「そうだね。試しに言ってみたけど、敗北感がすごかった」
「うん、あなたに任せるのは正解かもね。レン君。うちの子をよろしくね」
「任されました、お母様」
「私の名前はアヤメ。アヤメでいいよ」
「はい、アヤメさん」
「じゃ、後はよろしく。私は次の便で帰らないとだから」
「え? もう帰るんですか?」
「家に一番下の娘を留守番させてるからね。早く帰ってあげないと。あっと、そうだ。これ、お土産ね」
ポンっとアヤメさんからキャリーケースを貰った。
「なんですか、これ?」
「ワートリ全巻」
「いや、もう持ってるんですけど」
「こんなんなんぼあってもいいですからね」
「た、確かにっ!」
そうだよね。ワートリなんて何冊持っててもいいもんね。誰かにあげる用でもらっておこう。まぁ、送る相手いないんだけどね。あー、いや、委員長とかに送るか。住所聞いて、勝手に送っておこう。
その後、アヤメさんはあっけなく飛行機に乗って帰ってしまった。
「じゃ、僕たちも行こうか……えっと、そう言えば、まだ本名聞いてなかった」
「ゼラニウム・グリーヴニル。いつも通り、ゼラでいいよ」
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