最強の魔女

「あら、意外と察しがいいじゃありませんの」

「でも、なんで? プリムラは優秀だと思ってたんですけど。それはスペードのJ、オッドゲイルさんも認めてましたよ」

「もちろん、お姉さまは超優秀ですわ! 一般的に【黒薔薇の園】を卒業するためには16年かかります。ですが、お姉さまはたった2年で卒業に必要な単位を全て取り終え、しかも成績は学園トップ。【黒薔薇の園】史上最高傑作の魔女。それがお姉さまです」

「なら、なおさら卒業させたくない理由が分からないんですけど?」

「優秀であれば、実績があれば、認められる世界ではありませんのよ。魔女は血統主義。誰の子であるかが重要視されるのですわ。例え、実力があったとしても家柄によって正当な評価は貰えず、逆に位の高い家系に排斥される運命なのですわ」

「それってプリムラの家が貧しいとかそういう感じの?」

「あなた、お姉さまの名前を知っていて?」

「いまさら? プリムラですよね? ……って、あれ?」

 そう言えば、プリムラからはその名前しか聞いてない。学校に転校して来たときも名前だけで家名は言ってない。

 言いたくなかったから? それとも……。

「言いたくなかったのではないですわ。お姉さまには家名がありませんの」

「家名がないって、それが与えられないほどプリムラの家の地位が低いってことですか?」

「いいえ、そうではありませんわ。



お姉さまは捨て子なのですわ。



そして、【黒薔薇の園】に拾われたお姉さまに与えられた名はプリムラだけ」



「そう……なんですか……。それじゃあ、僕に言いたくないのも分かります」

「いいえ? お姉さまは別に親に捨てられたことに関しては気にしていませんわよ?」

「え、そうなんですか?」

「ですが、これを知ったらあなたが気にするでしょう? それを危惧して黙っていただけだと思いますわ」

「た、確かに……。でも、じゃあ、なんでメイさんは僕に教えてくれたんですか?」

「お姉さまの過去を知って、申し訳なくなったあなたがお姉さまを教育係から外すことを望んでいたからですわ」

「打算的だった!」

「それで、お姉さまを解放してくれる気になりまして?」

「僕が拘束してるみたいな言い方止めてもらえません? 僕はどちらかと言うとプリムラには家を出ていってほしい派なんですが」

「人間の分際でお姉さまが教育係なのが不服なのですか!?」

「どうしろってんだよ!??!?!?」

「お姉さまを返してほしいですけど、お姉さまが不要だと言われるのも嫌なのですわ」

「面倒くさいこと言いますね!」

「何かおかしなこと言いました?」



「ああ、言った。相変わらずのシスコンぶり、キモいな」



「へぇ~、急に調子に乗ってどうされましたの? 喧嘩を売っているのかしら?」

「いや、あの、僕何も言ってないんですけど……?」

「こっちだ」

 不意に呼ばれ僕たちは後ろを振り返る。

「よう、久しぶりだな、メイ。あんたを連れ戻しに来た」

「正直、わたくしは帰ってこなくていいと思っていますけれど」

「お前ら、キャラが被ってるもんな」

 そこには黒いローブを羽織った3人組の女性が立っていた。

全員女性、メイさんのこと知っている、連れ戻す、そこから考えられるのは彼女たちが魔女であるということ。

「メイさんの知り合いですか?」

「いや、知らないですわ。モブキャラじゃないかしら」

「ふざっけんな! 誰がモブキャラだ! れっきとしたネームドキャラだっての!」

「と、言ってますが」

憐太郎れんたろうさん、よく考えてください。この作品には多くのキャラが登場しているんですのよ? ですのに、こんな使い捨て丸出しの人たちに名前が付くわけありませんわ。読者がついてこれませんもの」

「メタ発言でキャラ潰すのやめてあげて!」

「そうだぞ! オレには――「魔女A」――って名前がある!」

「わたくしは――「魔女B」――ですわ」

「アタシは――「魔女C」――」

「「「って人の自己紹介に被せて名前潰すな!!!!!」」」

 メイさんはちょうど名前を言うというタイミングで言葉を重ねて、意地でも彼女たちの名前を晒さない気だ。

 まぁ、僕も3人はちょっと多いかなって思うし、正直、今全員の名前言われたところで覚えられる自信ない。

「どうせ今回限りのゲストキャラですわ。そんな人たちのために文字数も行数も使っていられませんわ」

「出るわ! 今後もバリバリ出演予定だっての! オレらはハートのリザーバーだぞ!」

「リザーバー?」

「魔王幹部の補欠みたいなものですわ」

「え? じゃあ、この人たちめちゃめちゃ強いんじゃないんですか?」

「ですが、所詮補欠ですわ。大したことありませんわ」

「言ってくれるじゃねぇか! よ!」

「ぐっ……」

「メイさん!」

 一瞬何が起きたか分からなかった。けど、気が付いたら、メイさんが殴り飛ばされていた。



「おっと、わりぃ。加減を間違えた。そうだ、そうだったよな。



あんたは魔法を使えないんだったよな」

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