大城!お前竹輪部署に異動な!

mokumoku

第1話

「はーあ…」

俺は2時間程の睡眠を経て目を覚ます。

パパパパパパパパパパパパパーンパパパパパパパパパパパパバパーンパパパパパパパパパパパパパーンパパパパ…

自分でかけたくせにイライラする音を出すぜアラームは…それノロノロと止める。


「…疲れた…」

朝のお決まりのルーティンだ。

まずは目覚めの「疲れた」


俺は冷蔵庫を開けて近所の24時間やっているドラッグストアで税込87円で購入した950ml入りのコーヒーをラッパ飲みする。

ゴクッゴクップハー!うすーい!

味なんてどうでもいいんだ…欲しいのは味ではなくカフェインなんだから…

あー体がダルい…

疲れが取れてない…


「はーあ…」

俺はゴミの散乱した床を踏みしめて風呂場に向かう。

床が見えてるからまだうちは上等だな。

足でなんとなくゴミを避け道を作る。


ペットボトルを小さーい台所と呼べるのか良くわからないコンロが一口と皿を一枚置くとほぼ底が見えなくなる狭ーいシンクにカランと放る。


…帰ってきたらやろう…

いや…やらないな…

俺は一人暮らしだから俺がやらなければ誰もやらない。

そうして床が見えなくなって行くんだな…


ああ…頭がいてぇ…

俺は足を引きずるようにして駅に向かう。

チチチ…と小鳥が鳴いている。

小鳥は歌が好きだからな…



今まで立ち寄っていたコンビニをちらりと横目で見る。



「あ…あの…」

「へ?」

俺がまだ毎朝毎晩このコンビニに通っていたころ、早番に若い女の子の店員がいた。

彼女は長い前髪を垂らした黒髪の女性で比較的ボソボソしゃべる…なんだか陰気な女の子だった。

「い…いつも何なんですか?あの…迷惑なのでやめてください…」

店員は勇気をかなり出しているのか手を握りそれは震えている。

通勤時間帯だったのでレジにはかなりの人が並んでいて、突如始まったイベントに皆注目しているのが背中に感じる…


「え…?あの…俺ですか?誰かと間違っていませんか?」俺は半笑いで無罪を主張する。


「お…大城さんですよね?いつも私の出勤に合わせて…わざと私のレジに並んで…やめてください…!!」女性はなぜか教えてもいない俺の名前を呼ぶ。

コンビニで荷物を受け取ったことがあったかも…俺はぼんやりとそんなことを思った。

店員はしきりに手首を気にしていてそこを掴みグルグルと捻っている。

…へんな癖だなぁ…


俺はなんだか面倒くさくなってしまいレジの上に買おうと思った商品を置いたまま、何も言わずにそこを去った。

あーあ…コーヒー飲みたかったのにな…

あのコンビニのコーヒーが一番美味いんだよ!

値段も自販機と変わらないのにコクがあって…

あれが一生懸命働く俺へのご褒美だったのに…

なんなんだよ…


コンビニを出てしばらく歩き自動販売機でコーヒーを買う。


…ガタン…


それを取り出し口から取ろうとしゃがみ込んだ時涙がボロボロと止まらなくなった。

「なんなんだよ…」

俺はこの理不尽な状況に涙した。

土曜も日曜も祝日もほぼなく働いて

データの不備を理由に呼び出され上司の説教を聞き、話し相手になるので仕事は遅々として進まない。

残業をすれば同期が永延と会社の愚痴を言うので集中できない…


「う…」

おまけにただ近くのコンビニに行っていただけなのに…

ストーカー扱いされてしまった…

なんだよ…あの女は!!

顔も見たことないよ…名前すら知らない…

前髪で顔が見えねえんだよ…


「うう…」


俺はノロノロと立ち上がりパキッとコーヒーの缶を開けた。

ああ…カフェインが俺に勇気と気力をくれる…


その後俺はやっとの思いで通勤するが、着いた会社でのいつも以上の居心地の悪さにソワソワすることになる。

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