分厚い雲がどいてくれない

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 家の庭でぼうっと雲を眺めるのが好きだ。


 でも、雲の種類にはこだわりがあるから。


 分厚いのばかりだと、嫌になってしまう。





 憂鬱な日。


 真っ白な紙に罰点ばかり。


 数時間前の光景がフラッシュバック。


 テストの点が悪かった。


 忘れ物をして先生におこられた。


 そんな日の空が、分厚い雲の曇り空だとさらに憂鬱になる。


 空を見上げてみるけど、雲ばかりで太陽が見えない。


 それが余計に。


 風は吹いている。


 けれど、雲はとても重たそうで、簡単にはどいてくれなさそう。


 あの雲のかたまりに手をいれて、蹴散らせたらいいのに。


 もしくは薄くのばせたらいいのに。


 分厚い雲を見ると、そう思ってしまう。


 でも、ただの人間だから、できるわけがなくて。


 できるだけ早くどっかいってね、なんて願う事くらいしかできない。


「電話よ!」


 家の中からお母さんが呼ぶ声がした。


 私は歩き出す。


 雲は動かないのに。


 でも、私が歩いて雲のない場所までいけば。


 この曇り空を見ずに済むのだろう。






 雲は簡単には動かない。


 簡単に動けるのは人間の方。


「テストの採点間違いだって、先生が言ってたわ。良かったわね。この成績なら、○○県の学校にいけそうよ」


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