第6話 初仕事
「おはようございます、今日からよろしくお願いします」
卒業後が終わったと同時に職場となったプロショップ各務原に出社した萌歌はバイク屋の夫婦に新人としての挨拶を簡単に済ませると早速仕事を任された。
「改めてよろしくな!そして卒業おめでとう、本当に今日から仕事でよかったのかい?1週間くらいゆっくりしてからでもいいんだよ?」
店長の幸助が気を使ってくれたが、萌歌は一刻も早く働きたかったので卒業式が終わったらすぐ出社するとお願いしたらしい。
「家にいてもやることないですし、早く仕事も覚えたいので…最初はしばらく雑用と仰ってましたけど私は何をすれば?」
萌歌が幸助に聞くと、店内の掃除を隅々までするようにと言われた。
萌歌は掃除道具を持ってくれると壁の掃除から始めた。
壁の掃除、床のモップ掛けなどをして2時間くらいかかったが店内はかなり綺麗になった。
「お疲れ様、萌歌ちゃん!休憩していいわよ」
幸助の妻の涼子はペッドボトルの静岡茶をくれたので萌歌か礼を言って休憩スペースの椅子に座って飲み始めた。
萌歌の隣に1台の小型バイクが停まっていて、それを見た萌歌は何かを思い出したような表情をしながらそのバイクに近づいた。
間違いない、このバイクは…と思っていると後ろから幸助に話しかけられた。
「それはエイプってバイクだよ、確か2008年くらいに受注生産で販売された限定のエイプスペシャルってやつだ!そのバイクがどうかしたか?」
パールコーラルリーフブルーのエイプ100スペシャルを見ていた萌歌は、幸助の方を振り返りこう言った。
「数年前に原付バイクに乗った2人の女子高生の人達の1人がこのバイクに乗って川根本町にツーリングに来てたときにこのバイクを見たんです!なんか2人共すごい楽しそうでお店に停めてあったそのお姉さんのエイプってバイクを眺めてたら話しかけられて…そこからちょっとこのバイクに興味が少し湧いて」
萌歌の話を聞いた幸助は、腕を組んで「うーん」と少し考えた後に萌歌に言った。
「萌歌ちゃんよぉ?ちょっとそれ跨ってみなよ」
幸助にそう言われて、「いいんですか!?」と意外な言葉が飛んできたことに少し戸惑ったが萌歌はエイプに跨ってみた。
エイプなら身長145cmの萌歌でも十分足がつく。
「…おぉ…」
萌歌は何とも言えない気持ちになった。
まだエンジンすらかけていないのに、なんだか自転車よりもっと遠くに行けそうな気分になった。
「実はな?バイクに乗る乗らない以前に萌歌ちゃんには16歳になったら中免…いや、今だと普通二輪免許って言うやつか…それを取ってきてもらおうと思ってたんだ」
幸助がそう言うと萌歌は「免許ですか?…」と言うとエイプのメーターに視線を落とした。
バイク屋で働くのに原付バイクすら運転できないと言うのはおかしな話だし、今後は修理したバイクを近所の家まで自走で持っていく仕事も幸助は萌歌にやってもらおうと考えているようだ。
「教習費用はもちろん俺が負担するよ、どう?免許取ってみないか?」
幸助がそう言うと萌歌は顔をあげて言った。
「免許取ります!」
こうして萌歌の普通二輪免許の取得の道が始まる。
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