第7話-B 白の本気!魔法少女大ピンチ!

「お前ら、さっさと変身しろよ」


「……言われなくてもわかってます」


 真城はそう答えてミラーブレスを装着する。柚来さんも同じタイミングでつけた。


「「地獄の名の下に!我が魂の真の姿を映せ!」」


機械Maschine』『奇術師Magician!』


 私達は光に包まれ、変身後の姿へと変わった。


「うし、じゃあ始めるか」


 白はそう言うと同時に姿を消した。


「え……」


 気付いた時には遅かった。どうやら、体勢を低くして視界から外れていたらしい。


 彼の拳は真っ直ぐ私の腹にめり込んでいった。


「ーーッ!」


機械Maschine!?」


 そのまま壁に打ち付けられ、動けなくなる。


(や、ばい……いし……き……が………)




機械Maschine……くっ!」


 機械Maschineがやられてしまった。開始数秒で。


(落ち着け……相手のパワーもスピードも凄い……けど、私には私の戦い方がある!)


「何もしてこねぇのか?なら行かせてもらうぜっ!」


 先程と同じ……いや、それ以上のスピードでに突っ込んでくる。


「地獄の鉄よ!吾を守りし盾となれ!」


熱鉄kochendes Eisen


「ハッ!俺は地獄生まれだぜ?こんな薄っぺらい板なんぞ障害物にもなんねぇよ!」


 言い終わると同時に鉄は空を舞う。どうやら熱さは白に効かないらしい。それなら……!


「地獄の冷気よ!かの者を凍てつくせ!」


氷結Frozen


 小鬼を苦しめたこの技なら!


「……残念だ」


 白の足を凍らせたはずだった。しっかりと凍ったのを見た。では何故白は動けているのか。答えは明白、ただ氷を割ってそのまま歩いたからだ。


「俺に火や熱が効かねぇわけじゃねぇ。そして冷気も効かないわけない。だがな……火力が足んねぇんだよ!」


「かはっ!」


 腹に一発回し蹴りを喰らった。魔法少女メートヒェンの姿でも普通に痛い。人間のままだったら簡単に死んでただろう。


「ま、だ……!」


 火力が足りない、白はそう言っていた。


(じゃあどうやったら火力が上がる?どうすればダメージを与えられる?)


 私は倒れたまま考えていた。


(白は速い……。そのスピードを利用してカウンターを……いや、生半可なカウンターだとさっきみたいになってしまう)


 私は考えることに夢中になっていた。しかし影がかかったので流石に気づく。白が目の前まで迫っていた。


「……所詮こんぐらいか。良いこと教えてやる。


 人間は現世で、鬼は地獄でそれぞれ本領を発揮できる。これは適した環境だからだ。逆に言うとそれ以外の場所だと弱くなる。


 俺はあの時現世で弱ってはいたが、あの状態の俺でもお前らぐらいは倒せそうだぞ」


「じゃあ、なんで……あの時……私にこの力を渡したのよ」


 私はふと思ったことを口にする。機械Maschineが起き上がるまでの時間稼ぎにもなるだろうし。


「あの鬼……炎禍だが、俺1人では到底倒せないと思った。もちろんそれはアイツ自身の力もだが、何よりも炎と死者の魂を使って雑魚を生み出すのも厄介だった。


 だから仕方なくお前に手助けして貰う必要があったんだよ」


 なるほど、弱くても少しは戦力の足しになるって思ってたわけね。


 口に出したつもりだったけど限界なのか声に出ない。


「もう終わりか。流石に呆気なさすぎ……」


「誰があっけないってぇぇぇ?」


「っ!」


 目が霞んでいるけど、今の声は確実に機械Maschineの声だった。時間稼ぎの役目は果たせたっぽい。


(あとはよ……ろし……く……)


 そのまま私は気を失った。




「あーあーあー。さっきはよくもやってくれたわね。痛い痛い痛い痛い痛い。男のくせに女子殴ってんじゃねーよ……あ、こういうの言ったら今の時代批判されるんだっけ。あーやだやだ。


 取り敢えず私のぶんと奇術師Magicianのぶんはやり返させてもらうから」


「あの反応速度でか?どうやっ」


 白は全てを言い切る前に機械Maschineの蹴りで吹き飛ばされる。夢々や嬉々にはその速度が先程の回し蹴りと同じ、あるいはそれ以上に見えた。


「来いよ。今のが私の腹のぶん。次は奇術師Magicianのぶん。まあ気絶してたから何されたか見てないんだけどね。うーん……白も気絶させたら同じぐらいのダメージってことになるか」


 機械Maschineには以前変身した時の様に言葉に棘は無かった。しかしその代わりにこの状況を楽しんでいるような発言をする。


(これはまずい……変身して時間が経ってるから好戦的な性格……いや、戦いというよりも相手を傷つけることを楽しむようになってる。このままだと……!)


「お姉ちゃん、機械Maschineを止めないとやばい。清華ちゃんが清華ちゃんじゃなくなる!」

 

 夢々はそれを聞くや否や立ち上がる。そして一言「わかった」とだけ言い、観客席からアリーナへと飛び降りた。


――――――――――――――――――――――

次回へ続く

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